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尚六SS「永遠の行方」

191永遠の行方「呪(102)」:2009/07/04(土) 14:06:29
「ですが」
「それより俺は、晏暁紅が市井の飛仙だというのが気になる。宮城や州城、仙
洞で暮らしていると、周囲は不老不死の人間ばかりだから人の生き死にや老い
にも鈍感になるが、市井に紛れた飛仙はそうはいかない。多くの知り合いを死
出の旅に送りだす彼らはやがて、暁紅のように行方をくらますか仙籍を返上す
るのが常だ。地にあって只人と交わる飛仙は生に倦み、人生を諦観しやすい。
そんな彼らと、謀反のよくある動機である権力欲は結びつかない」
「なるほど」朱衡は相槌を打ちながら、単純に相手の言葉を否定しないよう気
を配って答えた。「しかしそれはあくまで一般論ではないでしょうか。お話は
理解できますが、飛仙にもいろいろな者がいるわけですし……」
 とはいえ彼は、六太が自分の考えを正直に語ってくれることにある意味では
安堵していた。今はとにかく心中をすべて吐きだしてもらったほうが良い。
「そうだな。だが俺は、帷湍が言ってきた、尚隆との話も気になるんだ」
「帷湍の話――とおっしゃいますと」
「最初、呪者が気の触れた女に伝言を託したと聞かされた帷湍は、呪者が随分
投げやりだと感じたという。伝言が伝わらずとも別に構わないように思えたか
らな。それに対し尚隆も、考えようによっては光州の地に描かれた環も同じだ
と答えたって話。何か不可解な事件が起きているとわざわざ知らしめる意図が
あるように見えながら、一方では事が露見してもしなくてもかまわないという
投げやりな感じを受けると言ったと」
 朱衡は記憶を探り、光州からの詳細な報告の中に確かにそんな内容があった
ことを思いだした。彼自身はさほど重要な情報とも思わなかったが。
「呪者が伝言を託したと思われていた女こそ、実は当の呪者だったわけです。
したがってそのことから受けた帷湍の印象がどうであれ、あれはあくまで演出
だったことになりますが」
「うん。確かに尚隆に呪をかけたのはその女だけど、光州で病を発生させた呪
とは別物だろう。だから女のことはそれとして、光州の地に描かれた環につい
てはどうだろうな。おまけにこっちは尚隆が受けた印象だ。あいつはあれでか
なり鋭いから、根拠のない『印象』とはいえ莫迦にできない」
 それはそうなので考えこんだ朱衡が黙っていると、六太は続けた。




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