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尚六SS「永遠の行方」

179永遠の行方「呪(90)」:2009/06/13(土) 20:00:00

 とはいえ皮肉なことに光州側の発憤は、関弓における帷湍の評判をさらに落
とす結果となった。
 王を関弓に運ぶ際に託した種々の書類により、王を罠にかけた女が最初から
謀反人の一味だったこと。そして二百年前の謀反の際、冬官助手が書きつけを
遺していたことを知った諸臣は、里に紛れこんでいた敵方の女を見逃していた
ことに唖然としたのはもちろん、書きつけに関しても「どうして主上がお倒れ
になった今になって」という思いを強くした。特に後者は、要するに二百年も
の間、危険な呪に言及した書類が放置されていたことになるからだ。本来なら
ばとっくに回収され、今回の件とはまったく関係なく、とうの昔に調べがつい
ているべき事柄ではないのか、と。
 それから三日を経ずして、解読され丁寧に注釈がつけられた書きつけの詳細
が届けられ、さらにその翌日、幇周の里から呪具である文珠が発見されたとい
う急報を受けるに至っては、王の還御から間もないうちの出来事だっただけに、
多くの重臣が「今になって」「遅すぎる」という印象を憤慨とともにいだいた。
「確かに行幸の触れは大々的に回していたろうが、王たる者が御自ら辺境の小
さな里に赴くなど、そうそう予想できるものではない。これはやはり、どう考
えても州侯を狙った企みだったと見るのが自然だ」
「たまたま主上が幇周に出向かれ、ご身分を明かされたことで急遽狙いを変え
たのだろう。最初から光侯がきちんと処置をしていれば防げたはずだ」
「こうなるとやはり光州側に何らかの意図があるのでは」
 諸臣は憤慨とともにそんな言葉を口にした。
 もっとも声高々に帷湍を糾弾したわけではない。六太の使令は一部がまだ光
州城に残って監視役として働いているから心配はないし、何よりも今は誰に責
任があるかを問うのではなく、王を目覚めさせることが最優先かつ最大の課題
だったからだ。こんな状態のときに光州侯叩きに精を出すようでは、いくら思
いを同じくしていたと言っても、他の臣は咎めただろう。
 それでも臣下の間に、光州侯やその麾下に対する不審不満がたまっていくの
は避けられなかった。




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