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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

589蘭雪堂の夜(尚六)1/5:2017/09/25(月) 20:20:03
>>577です。前作萌えたと言ってもらえて嬉しいです。そしてまた尚六書いてしまいました。最近滾り過ぎてやばい。
最初はシリアス、最後はラブラブです。
泰麒捜索中、廉麟が「王のものなんだもの…」という名言を残して蓬莱へ渡った後。

ーー
廉麟は呉剛環蛇を使って蓬莱へ渡った。
蘭雪堂にひとり残った尚隆は、椅子に座り、卓上に置かれた地図を眺めていた。

地図上の塗り潰された部分は麒麟たちが捜索し、泰麒はいないと判断した場所だ。しらみ潰しに探す作戦は体力が必要だったし、傲濫の気配を捉えてからは、強大な妖魔を怖れる獣の本能に抵抗しながらの捜索となり、更なる精神的な苦痛が麒麟たちを苦しめていた。

尚隆は額を押さえて溜息をついた。
氾王に言われなくとも、麒麟たちに負担がかかっているのは重々承知している。ただ見ているだけで何も出来ないのが歯痒かった。
六太もかなり疲れているのは明らかだ。今日も夕餉の後、臥室の榻で倒れるようにして眠ってしまった。尚隆は六太を牀榻に運び、そのままひとりでここへ来たのだった。

扉の開く音がしてそちらを見ると、六太が入ってきた。相変わらず疲れたような表情だったが、先刻臥室で眠る前よりは、ましな顔色をしていた。
「大丈夫か、六太。疲れているんだろう、寝ていた方がいいぞ」
「うん……。なんか目が覚めて、眠れなくなった。……尚隆は戻って来ないし」
あまり力のない声で言いながら、六太は卓へ歩み寄って来る。
「なんだ、独り寝が寂しかったか?」
敢えてからかうように言ってみると、六太は微かに笑った。
「ばーか」

六太は卓上の地図を見て、首を傾げる。
「まだ誰か渡ってるのか?」
「ああ、廉麟がひとりでな」
「……ひとりで?」
六太は奥の戸口へ顔を向ける。その先にある孤琴斎という建物から、廉麟は蓬莱へと渡っていった。
「……廉麟、大丈夫かな。ひとりだけ全然休めないのに……」
そう言って戸口の方へ向いたまま、六太は卓上に座る。
「廉麟は、泰麒のことを考えると眠ることが出来ないそうだ。だから休む前にもう一度だけ、と言って渡った」
「そうか……」
六太は表情を曇らせて、戸口の先を見やる。その横顔を尚隆は見つめた。

六太もあまり眠ることが出来ていないのを、尚隆は知っている。疲労で毎晩気を失うように寝入るのに、必ず夜中に目を覚ますのだ。そしてそっと牀榻から抜け出して、窓から外を眺めていたりする。
最初は「どうした」と声をかけていたが、「別になんでもないから、お前は寝てろよ」と返されるだけなので、今は気付かぬふりをしている。

「廉麟は、泰麒のことを心底案じてる。……それに、あいつは臥室に戻ってもひとりだしな」
呟くように、六太が言った。
「廉麟も独り寝は寂しいだろう、ということか」
軽く言ってみたものの、六太は笑わなかった。ごく小さな溜息をこぼす。
「独り寝っていうか……。廉麟だって、廉王のそばにいたいだろ。でもここではひとりだ。心身ともに疲れて辛い時なのに、王がいないんだ。……でも、泰麒のそばには、六年も泰王がいない。……それを考えたら––––」
六太はそこで言葉を途切らせ、少し俯いた。これは廉麟のことを言いながら、六太自身のことを言っているのだろう。


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