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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

582帰山その後話(1/5):2017/09/23(土) 21:30:13
結局ラブい延主従の話。だと思います。。

 利広と離れて宣言どおり尚隆は柳から雁へと向かう。
 騎獣の調子はよく、主の様子から帰還とわかったのだろう。
 待ち望んでいた家へようやく帰れるのだと、たまはグルグルと嬉しそうに喉を鳴らしながら街よりはるか上空を颯爽と駆けていく。
(あやつも中々鋭い推察をする。流石は六百年を治める大国の太子は違う)
 先ほどの宿屋で交わした会談を思い出して尚隆は自然と口と手が締まった。
(だが、推察と想像を繰り返すだけでは憂いは晴れはしない。まだまだ利広も餓鬼だということだ)
 大国を長く治めると誰もが罹る病に利広は憂いていたと思う。
 いつか必ずくる国の終焉に怯えることは、神でない人の子なら当然の帰結だ。
(この俺だって二百年ほど前はそれなりに悩んだのだ。…それを早々と抜け出せると、抜け出そうと思うなど青臭く足掻く内は病など完治はすまい)
 まるで自分はそこを抜け出たとばかり尚隆は思考するが、そうではないことは本人がよく知っている。
(大事なのはそのことを忘れぬこと。恐れること。何の為に国が、王があるかと考えること。それらを原点に戻ってじっと見つめていれば、自然とその恐怖や憂いは薄れていくものだ)
「それを、宋王は太子にはあえて教えず自分で見つけだせと放蕩を許すのか…」
(実の家族なのに、案外酷な対応をする)
 ぽつりとたまの上で尚隆は独り呟く。
 すると、斜め上より見慣れた金の鬣が見えた。
 珍しく悧角に乗ったそれはグングンと勢いに任せこちらに向かってくる。
 そしてそれは見えたと自覚するより早く獣からさっと身を投げ出すと、躊躇なくこちらに向けて飛び落ちてきた。
「しょお、りゅう!この、莫迦ー!」
「ち、たま。すまんがこらえよ」
 くおんと主の意向を酌むと可愛らしくたまが鳴く。
 と同時にドサッと米俵並みの思い何かが、尚隆の胸の中に飛び込んできた。
「こら、餓鬼。なんと危ないことをする。落ちていたら厄介なのだぞ」
 言いながら尚隆はささっと落ちてきた六太の体勢を前に抱えなおす。
「へーんだっ。お前が長らく王宮を留守にしていたのが悪いんだ。なー、たま?お家に帰れなくて寂しかったよなー」
 王の小言には返事せず六太はたまの首を優しく撫でる。
「…まあいい。お前が迎えにきたという事は朱衡らはカンカンなのだろう。まったく、たまの遠出くらい伸び伸びと行かせてむらえぬとは…」
 尚隆はたまらず溜息をつく。
「遠出じゃねえだろ。申請してない『お遊び』じゃん。…で、柳はどうだった?」
「あれはもう駄目だな。戻る頃合いは過ぎた」
「っ!…そっかあ。けっこう、もったのになあ…」
 六太は利広と同様、尚隆から告げられた事実に表情を曇らせる。
 その落胆と比例するように腕の中の緊張が溶け、脱力したように尚隆の腹に六太の重みが加わった。


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