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【お気軽】書き逃げスレ【SS】
529
:
戴の話3/10(ぐらい)
:2013/09/09(月) 22:15:25
かまくらの中、紅い目の主は英章に向けたものとは打って変わって、優しい瞳を泰麒に向けた
「久しいな、蒿里。なるほど、時というのは儚い。私が無為に過ごすうちに、こんなにも大きくなったのだな」
かまくらの中、円座に座っていた人々は、座ったままずるずると移動して英章と泰麒のために驍宗の両側を開けた
「さあ、台輔。早く入り口を閉めなければいけません」
英章はもう一度泰麒の背を押した
それで泰麒は、力なくかまくらに入って、驍宗の前に立つ
「主上…」
絞り出すように、やっとそれだけ言った
どこか疑問符が付くような言い方だった
だが、それにこだわる人はどこにもいない
7年ぶりの主従の再会
それは戴国民の悲願であり、希望である
ただでさえ感動的なこの瞬間を、泰麒は布の外の告白で彩ってくれた
麒麟の主を思う心とは、かくも切なく美しい
この場に居合わせたことを、かまくらの中の人々は幸せに思っていた
「長くおそばを離れましたこと、誠に申し訳ありません」
泰麒は膝を付き、頭を下げる
「主上には長くのご辛抱、私が至らない麒麟であったために、まことにーー」
「そんなことはない。私が至らない王だったのだ。蒿里には並々ならぬ苦労を掛けた。申し訳ない」
「いえ!」
泰麒が慌てて顔を上げると、驍宗は立ち上がっていた
顔を上げた泰麒を見て、両腕を広げる
「きなさい」
泰麒は一瞬目を見開くと、よろよろと立ち上がり、そのまま驍宗の胸に頭を預けた
驍宗は左手でしっかりと泰麒を抱きしめると、右手で頭をぽんぽんと優しく叩く
「辛い思いをさせたな。私もお前に会いたいと思っていた。会えて嬉しい」
普段の驍宗は、こんなことを言う人物ではない
ましてや自分から麒麟を抱きしめるような人物でもない
これは全て、泰麒の気持ちを思ってだろう
かまくらの中の人々は、その場面を感動を持って見守っていた
無慈悲で有名なあの英章さえ、涙を浮かべて見つめている!
「二度と側から離すようなことはすまい。この戦いが終わったら、玉座を取り戻したら、どこに行くにもお前を離さなくていいように、国のどこにも一滴の血も流れぬような、そんな国にしてみせよう」
「ーーはい、主上…」
ずっと黙って気をつけの姿勢をしていた泰麒が、やっとそれに応えた
驍宗の背に手を回し、ぎゅっと抱きしめる
かまくらの中は感動に包まれた
始め、泰麒は戸惑っていたのだろう、と人々は思う
ずっと会いたかった主人が急に目の前に現れて
英章だけに聞かせるはずだった秘密の告白を、驍宗や、自分たちに聞かせてしまって
それが恥ずかしく、狼狽えてしまったのだろうと
明日、李斎たちが来るまではここで密やかに過ごさなくてはいけない
またまだ緊張を解くことはできない
しかし、今夜は今まで幾度となく越えてきた寒い夜とは違う
今夜は良い睡眠が取れそうだ、と人々は暖かい気持ちで周りの者たちと視線を交わした
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