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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

261終宴5:2006/08/19(土) 03:29:26
六太は蒼ざめ、尚隆の、唯一の光の元に帰って来た。生気を失い、地に付かぬ
感覚の脚を必死に動かして。
正寝の牀榻で横になっていた尚隆は明らかに常とは違う六太の様子に驚いた。
身体を起こし牀の上で腕を広げれば、六太はその胸元に縋り付き、泣き出した。
事情を話すように促せば、六太は嗚咽交じりに見て来た蓬莱の姿を語り出す。
「…それはあくまで蓬莱での事だ。こちらでは、雁ではそんな事は起きぬ、…
俺が決してそんな事は起こさせぬ。大丈夫だ。安心しろ」
縋り付いてくる恋人を、尚隆は優しく、だが強く抱き締めた。それでも震えが
止まらず「怖い怖い」と蓬莱での光景に怯え泣く六太を「大丈夫だ」と宥める
事に努めた。そして、安堵を与え、気を紛わすために六太を抱いた。

その夜の事は混乱の内に過ぎ去ったが、その後も暫く体調が優れぬ六太に尚隆は
優しく接したのだ。どんな風に優しかったか、もう記憶は切れ切れで具体的には
思い出せぬが、恋人として優しかった印象は残っている。

それから後、身体を繋ぐようになってから尚隆は己が欲望を全て六太にぶつける
が如く愛してきたし、六太もそれを受け入れていた。
だが、数十年前を機に、そういった事は無くなった。
彼の心は己から離れた。飽きられたのだ。己では彼の心、身体を満たす存在では
なくなったのだ。所詮、麒麟と違い王は麒麟に縛られる事など無いのだ。

今、尚隆は昼には城にその姿を見せるが、夜まで留まる事は無い。

独り寝には慣れた。六太は己の中の主に対する特別な感情――恋慕も風化を認めた。
傷付き心乱される事なく愛人であった昔を懐かしく思い出す事も出来た。


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