したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

十二国記SS「† 夜に別れを †」

48名無しさん:2004/08/26(木) 03:26
扉が閉まった。いったいなんのために峯麒をここへ呼んだのだ、と月渓は自嘲
した。峯麒はいつもの月渓の妄想の中の彼より痩せていた。妄想の中では峯麒は
健康に輝いており、上等の衣をまとい、月渓に笑顔を見せるのだった。それと
同じ笑顔を現実に見せられて月渓は心をかき乱されたのだった。
 しかし月渓の妄想はそれだけではなかった。空想の中で峯麒は飛来したその日
から受け入れられており、月渓の愛情を充分すぎるほど受け、月渓を意のままに
するほど我がままでもあった。二人は王と台輔として幸せに暮らしていた。
「ねえ主上、騎獣を買って」と甘えてねだる姿。
月渓の寝床に無造作に横になりあくびをして「今日は疲れているんだ」と
生意気に言う姿。
そしてもちろん、自分と睦み合うときの姿。整い過ぎた顔に様々な表情が浮か
び…。
自分は何を考えているのだ、と月渓は己を叱りつけた。今日、自分はあの子供を
呼びつけ、寝床を共にするため押し倒そうと考えていたのだ。峯麒に初めて会った
あの日を境に自分はおかしくなってしまった。以前の自分はこんなことは考えも
しなかったのに。そもそも月渓はこどもに手を出すような人間を軽蔑していた。
同性同士の恋慕など気味が悪いと思っていた。しかし今、そういった人間の気持ち
が理解できるようになっている。

 しかもたちが悪いことに王宮中の人間が実は月渓と峰麒に仲良く暮らしてほしい
と願っているのだ。罪を犯してしまいそうだ、と月渓は思った。月渓が他の人間
とそのようになれば人々は軽蔑するだろうに、峯麒との場合だけ、むしろ歓迎
するのだ。月渓はこの皮肉さにため息をついた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板