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十二国記SS「† 夜に別れを †」

35名無しさん:2004/08/25(水) 00:51
そのとき賓客たちは月渓の背後に小さな麒麟の姿を確かに見た。
麒麟を従えているということは月渓は仮王ではなく、王なのか?
それにしては新王が登極したという知らせは無かったし、もちろん白雉も鳴いて
いない。昼食のときといい、この麒麟はなんなのだ、と客たちは思った。
 月渓は昼食時に引き続き峯麒を見られてしまい、まずいと思ったが、客の前
で峯麒を叱りつけるわけにもいかず、背後にしがみついている峯麒にはかまわず
むりやり、腰を折り膝を床についた。峯麒はその隣で軽く会釈だけすると、叩頭礼をする月渓を痛ましげに見た。
 峯麒は自らの人生を切り開くために、賓客たちの前に月渓と共に出て挨拶する
という方略に出たのだった。大切な客に月渓が王であると分らせることで、
なしくずし的に月渓が王座につくようになるかもしれない、という考えだった。
見かけによろず、幼くして蓬山をとびだすほどの大胆さを持っている峯麒らしい
行動であった。
 峯麒の急な登場に慌てた月渓は、なるべく早くこの麒麟をつれて場を離れねば
まずいと思った。叩頭礼のまま短く挨拶と詫びを入れると、今は賓客の食事前で
あるので明日、正式な礼をとらせていただきたいと述べた。そして峯麒の背を押し
その小さい姿を隠すようにしながら二人でその場を辞した。峯麒は今なにかお客
たちに言わなければと、とっさに必死で考えたが言葉が出ず、名残惜しげに客
たちのほうに目だけむけながら、去っていかざるを得なかった。
 部屋を出たとたん、月渓は峯麒の首根っこを掴むと峯麒をひきずりながら急ぎ
足で部屋から離れた。そのあと峯麒が思いきり殴られたのは言うまでもない。


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