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十二国記SS「† 夜に別れを †」

10名無しさん:2004/08/18(水) 01:41
3.
「蓬山公、今、湯浴みとお食事、それにお召し物の用意をさせているところですから。
長旅、たいへんでございましたでしょう」
 切るものが無いので獣形をとけずにいる峯麒だったが、ひとまず泣き止んで別室に
移されていた。未来の台輔となる人物なので、着るものもそれにふさわしいもの、
しかも体に合ったものをということになると、なかなか適当なものが見つからず、
それでも女官たちは自分に与えられた仕事に幸せを感じていた。
「公、湯の準備が整うまで、軽くお体をおふきいたしましょう」
「ううん、ぼく、いい。ねえ、あの方をここへ連れてきてよ。そうじゃないと、
食事だってしないもん! あの方が王になるまで、ぼく、他のことなんかする気に
なれないんだもん。だって王気をこんなに近くに感じてるんだよ? 王気って、
とっても気持ちがいいから、もうずっとあの方のおそばにいたいんだ」
「仮王の月渓様ですよ。ほんとにすばらしい方です」
そこまで言ったとき急に扉が開き、小庸が姿を現した。
「こちらに」
入るなり小庸は女官長を手招きした。女官たちは小庸のいつにない表情になにか
不安をかきたてられ、二人を見つめやる。
 小庸は苦しい顔でなにやら女官長に説明している。女官長の顔色が変わった。

「そんな! 公に他で王を探せと? 王には月渓様しか考えられません!」
「仮王の命なのだぞ。破ればどうなるか。謹んで従うのだ」
 小庸は厳しく言うと反論は受け付けないというように、すぐに背を向け部屋を
辞した。

女官長はしばらく拳を握り締めて俯いていたが、やがて意を決したようにきびすを返し、
峯麒や女官たちのそばそばにやってきた。
「あの・・公・・・。こんなことを申し上げるのは本当に心苦しいのですが・・・」


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