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第三外典:無限聖杯戦争『冬木』

1名無しさん:2018/11/14(水) 22:54:34

                          人斬り              真柄無双           偽なる聖剣     
                              大逆の魔槍

                        聖槍                 
                                           輝ける/狂えるガラティーン


                                    無限聖杯戦争『冬木』


                      鋼鉄の航海者                    オルタナティブ・フィクション
                                          無名
                    序列五十九番

                                アーサー・オリジン

93名無しさん (ワッチョイ 3fd5-f3da):2020/04/01(水) 02:28:25 ID:N1M.zHcY00



「でも、貴方には受け取る権利がある」



「……!?」

94名無しさん (ワッチョイ 3fd5-f3da):2020/04/01(水) 02:28:51 ID:N1M.zHcY00

これは火々里が凱音に対してかけた情けでもなんでもない。
ただ彼女達の思いをこうして差し出しているだけだ。それを隠してまで、勝ち残りたいとは思わない。

――――――――本当は、恐ろしい。出来ることならば、これを抱えておきたい。

だが、それをしたら勝つよりも大切なものが失われてしまう気がする。だからこれは、彼へと向けて差し出さなければならない。


「……それじゃあ」


これ以上ごちゃごちゃと拒否されても困る。それにこれからもう一つ、キーを探さなければならない。
図書館での情報収集もやってみたいところだが、そちらを優先しなければならないこの状況では好都合だったかもしれない。
それを置いて、背を向けて立ち去ろうとする。これで受け取らざるを得ないはずだ。

「――――ま、待てよ!!」

背中から、凱音の声が掛けられて、火々里は振り向いた。

「……何? 返却は拒否するけど」

「そうじゃない。……いいよ、このキーはもらうよ。ムカつくけどさ。
 だから一回、こっち来い。……ああもう、いいよ、俺が行くよ!!」

テーブルの上に置かれたキーをポケットの中に乱暴に突っ込んで、凱音が立ち上がる。
そして苛立ったのを隠さないまま、速歩きで火々里の前へとやってきて、別のポケットから一枚、キーを取り出した。
そして火々里へと向けて、乱暴に放り投げた。

95名無しさん (ワッチョイ 3fd5-f3da):2020/04/01(水) 02:29:04 ID:N1M.zHcY00

「……え?」

「借りを作りたくないんだよね。しかも、お前みたいな弱小魔術師なんかにさ。
 だからそれやるよ。貰いっぱなしとかムカつくし、三枚も持ってても、どうせ次は集め直しだから意味ないし」

たしかにそれはキーだ。少なくとも素人目から見れば、何か細工されているようには見えない。
それを見下ろして、それから凱音の方を見た。バツの悪そうな顔をした凱音は、その爪先で火々里の脚を蹴った。

「あ、痛っ! ちょっと……!!」

「分かったらさっさと消えろよ! 俺はお前と仲良しこよしするつもりなんて無いからな!!」

「何すんのよ!!!」

「いっっっっ……たぁ!!!!」

蹴られたままでは癪に障る。思い切り彼の脚へとローキックを叩き込むと、彼はもんどり打ってそこに倒れ込んだ。
そして図書室の扉へと向かう。これで火々里が持つキーは二枚になったとは言え、やるべきことはまだ山ほどある。
特に……火々里は、彼の言うように、弱小魔術師なのだから。

「……でもありがとう、凱音。それじゃ、また」

最後に、お礼だけを言って、図書室の扉を締める。
彼は嫌味な男だけれど、少なくとも、これで助かったことには間違いない。
……いや、もしかしたら嫌味ということですら無いのかもしれない。ただ単に、彼は――――

「図書室では静かに!!!」

後ろで、怒号が聞こえているのを背にして。

96名無しさん (ワッチョイ 3fd5-f3da):2020/04/01(水) 02:29:17 ID:N1M.zHcY00




「いってえ……あのゴリラ女……!!」

図書室のテーブルに戻る。蹴られた部分が未だにジンジンと痛んでいた。
こんな痛みを負うのは久し振りだ。屈辱的だ。あんな、魔術師として比べ物にもならないような相手に、こんな風にされるなんて。
何か、妙なことを言っていたが、それでも間桐凱音という人間がやることに変わらない。全ては、ただ一人のために。

「……本当、本当に……馬鹿みたいだ……」

英国史の資料を捲りながら、独り言を呟く。
霊体化したバーサーカーに向けるでもない。ただただ、それは自分の口から漏れ出るものであった。
そもそも、あの少女は馴れ馴れしいのだ。確かに、自分たちは予選の間――――友達同士という、設定ではあったけれども。

「……ありがとう……なんだってんだよ。どいつもこいつも」

そんな一言、気休めにしかならないくせに。皆、立派な意味があるとでも主張するみたいに押し付けてくる。
何の意味も無いのに。そんな言葉を一言付け加えれば、それで全部許された気になってる。


「――――――――ああ、でも」


ページを捲る手が止まった。
もしも、もしも……ありえない話だけれども。自分にとって友達っていうのが出来たとしたらもしかしたら。
こういうことなのかな、なんて。無意識に思っていた。自分の思考を、否定する気力すら湧かなかった。


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