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第一外典:魔法少女管理都市『瀬平戸』

156名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:51:26 ID:9DnBN41U00

――――突如として、静まり返るフードコート。
先程まで、平日とは言えそれなりの人数が居たそこが静まり返っている。客どころか、店員の姿すらも見えない――――大凡ショッピングモールに有り得ない、異様な沈黙だ。
すぐさま変身できる準備をしながら、周囲を見渡すが、そこに人の気配はない……だというのに。かつ、かつ、と。甲高い足音が、静まり返ったショッピングモールに響いている。

意識を張り巡らせていたというのに、まるでそこに現れたことに気付かなかった。気が付いたら居た、とすら言いようがないほどに。

傍らのフードコートの椅子に腰を掛けていた。


「これにて、瀬平戸の物語は一度の終りを迎え、魔法少女達の物語にはピリオドが打たれる……おめでとうございます」


……"魔法少女ではない"。スーツ姿の男だった。黒い髪に青い瞳の男は、一冊の本へと目を通しているようであった。
彼女達には、全く未知の存在であった。超常の存在と言えば、魔法少女以外にほかならない……そういう世界に居た以上、"成人男性"が超常的であるように振る舞うというのは。
それだけでイレギュラー中のイレギュラーであった。


「な、な、なんやあんたは……いったいなにもんや……!?」


警戒しながらも、ヨツバが男へと声をかける。ページを開いたまま、その視線がヨツバへと投げかけられると、微笑みをその顔に湛えて立ち上がる。


「申し遅れました、私の名はリチャード・ロウ……ヘレネ・ザルヴァートル・ノイスシュタイン卿に代わって、と言えば伝わるでしょうか?」

「……ヘレネって、あの」


ヘレネ・ザルヴァートル・ノイスシュタイン。黒百合学院生徒会に所属していた魔法少女の一人……その戦いの過程を覚えては居なかったが、最後は覚えている。
光りに包まれて、消えた……それからどうなったのか分からなかった。生徒会の中にも何処にもその姿がなかった以上、それで消滅したのだと思っていたが。

157名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:51:53 ID:9DnBN41U00

「ええ、"あの"です。少しばかり、彼女は他の方とは様子が違ったでしょう」

「……確かに、そうでしたけど。あなたは……一体?」

名を問うのとは違う。本質的な、その詳細に迫る。
必要であれば、オーネストハートとして質問の魔法を振るうことも辞さない――――だが、その前に、リチャード・ロウはその問いかけに対して口を開く。


「宜しい。折角達成したのです、その戦いに免じてお答えしましょう。

 我々は、この世界を編纂し、再生する――――"再生者"、と括られるものです」


何一つとして理解は及ばなかった。だが、一つ察することが出来るものが在る。
世界の編纂。そんなものが可能であるとしたのならば――――瀬平戸、天海、かごめ、ゆりかご、記憶にある五つの都市の名前。それらが全て、他の世界の存在だと考えると。
魔法少女達が――――パラレルワールドに偏在する魔法少女達を、彼らの思うがままに"一つの世界にまとめ上げたのだとしたら"。

「り、りぇね……」

「……なら、"この世界"は、あなた達が……」

「察しが早くて助かります。そういうことになりますね。最もこの世界は私の担当ではありませんが、まあ、兎も角……」

それは、凄まじい規模の存在だということになる。
魔法少女という枠にも収まらない、新たな超常の存在。それ自体にまだ、理解が及んでいないが、彼らという存在が何かを起こそうとしていることは分かる。


「おめでとう。貴女達には、束の間の平穏を味わう権利が与えられた」


――――新たな敵なのか、どうかすらも分からない。


ただ、脅威的な力を持っていることは分かる。そうでなければ、世界の編纂などという大言壮語も、事実として世界を融合することも出来はしないだろう。
束の間の平穏。では、その先に何があるのか。新たな戦いなのか、それとも……

158名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:52:04 ID:9DnBN41U00

「それでは、皆々様方。やがて来る滅びの時まで――――幾久しくお健やかに」


パタン、と片手に開いていた本が閉じられる。天王寺ヨツバは、思わず……そこに刻まれた、本のタイトルを読み上げた、



「外典、英雄異端録」



本が閉じるとともに、その男はいつの間にか姿を消していた。フードコートは人で賑わっていて、不気味な静寂など嘘のように消えている。
雛菊ひよりは、天王寺ヨツバと顔を見合わせた。何が出来るのかは分からない。分からないが――――――――"きっとここから先には、新たな戦いが控えている"。
向こうから、車椅子を押してやってくる二人の少女の姿があった。この事は、先ず真っ先に二人へと話さなければならないだろう。



――――――――戦いは、まだ終わらない。

159名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:54:30 ID:9DnBN41U00



第一外典 魔法少女管理都市『瀬平戸』 終幕



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160名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:55:50 ID:9DnBN41U00











for the next Apocrypha――――――――











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