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第一外典:魔法少女管理都市『瀬平戸』

1名無しさん:2018/04/25(水) 15:48:01
                                    魔法少女で在り過ぎる      ラッキークローバー         
          ルシフェル               ゲームマスター                   
                       少女境界   
                  剣鬼                          永劫回帰
               骸姫

                              魔法少女管理都市『瀬平戸』

                                                   正直な心
             大いなる終幕
                          斬殺少女
                                  輝ける黒百合

137名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/16(金) 02:35:37 ID:KBQq0rw.00






















































――――――――ええ、それは、とてもとても、眩しくって。

138名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 01:33:30 ID:9DnBN41U00
第八話 MAGICAL GIRL ROYAL 第四節 終

146名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:19:05 ID:9DnBN41U00


――――――――魔法少女達の魂が解放されていく。

堕ち星は歴史の奔流とともに解放され、新たな旅路へと向かっていく。この魔法少女管理都市の檻足る女王の力が失われて、それを留める物はもはや何もない。
極彩色の魔法少女はそれを咎めること無く空を見上げ、昇っていく色とりどりの魂を見送っていく。藤宮明花が女王であり、管理者であるのならば、彼女は送り手であった。
その野望は最早瓦解し尽くした。内側から破壊された藤宮は、最早女王ではなく、ただ一人の魔法少女へと代わっていた。
身体は朽ち果てている。人の身に於いて骸姫と共にあり、本来少女のために設定されていない力を存分に振るったことによる当然の崩壊であった。

「……っ、とと」

「うわっ、もう終わりか!」

崩壊していく結界は、破片すら一つ残らず消え失せて残滓すらも残さなかった。まるで魔法少女という事実すら夢であるかのように。
極彩色の魔法少女もまた、光に包まれた後、それぞれの色に解きほぐされていく……オーネストハート、レギナ・ルシフェル、コノハナ少佐、ラッキークローバー。
その何れもが変身を解除されて、そこに立たされることになる。奇跡によって成立した極彩色の魔法少女は、同様の奇跡が起こるその時まで、訪れることはないだろう。
そして、奇跡は二度は続かない。何のリスクを負わない膨大な力もなく、寧ろ、変身を解除される程度で済んだことが奇跡であると、皆、思わずとも認識はしていただろう。
故に、誰一人不思議に思うことはなかった。一人を除いて、戦いが終わったとも、思っていた。



「……まだ立ち上がりますか」



雛菊ひよりは、尚、立ち上がる藤宮明花に最初に気付いていた。分かっていた、というべきだったかもしれない。
……止めを刺すべきか。あくまでも、生身の人間の姿をしている少女に。それぞれの脳裏にそれが過ぎった時、最初に動き出したのは、此花立夏でもなければ、来栖宮紗夜子でもなかった。
雛菊ひよりが片手を上げて、皆を制した。

「ひ、ひよりちゃん……ひよりちゃんがそこまで背負う必要は……」

「……いいえ。これは、そういうものじゃない。後は……」



――――これより先、行われるのは凄惨な殺し合いなどではない。

147名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:19:40 ID:9DnBN41U00

「意地の張り合いでしょう。私には、分かります」



……超常の力も、余計な祈りも介在しない。そこに残っているのは、少女の"意地"……ただ一つだけ。
後は消えていくばかりであるとか、全身を貫く痛みだとか、そういうものは、藤宮明花にとってどうでも良い要素だった、ただ、ただ、最後の最後まで、立ち塞がる。
結果が決まっていたとしても。敗北で終わったのだとしても。最後の最後まで、ただただ、綺麗に終わることは許せない――――――――その意地、それだけが。
藤宮を、立ち上がらせた。


「……雛菊、ひより」


拳を握り固める。それに応じるように、ひよりもまた同様に拳を握り締めた。
普段の藤宮が有していた、銃弾のような鋭さも、頂点に立つカリスマも最早削ぎ落とされている。此処に居るのは、ただの、裸の一人の少女であった。

「あなたは私の鏡です。いつかどこかの世界では、私だったのかもしれません」

――――それと共に、藤宮は駆け出し、その拳が振るわれた。
冷静さも無ければ、鋭さもない、ただ本能のままに振るわれる一撃だった――――瞬間。ひよりは、オーネストハートへと変じて、その拳を左手が受け止めた。
一瞬の硬直。その至近距離で、二人の視線が交錯した。全てを剥奪された女王は、闘志とは最早程遠いそれを宿しながら、その瞳を大きく見開いた。

「貴女に何が分かるというのですか。貴女のような……ただの、一人の魔法少女に、一体何が!!」

誰に理解されることもなく。誰に理解されることも拒んだ。
それが今、誰かに理解されることなど有り得ない。許さない。そんなことが有り得てほしくなかった。そんな可能性は、一つだってこの世界にあって欲しくなかった。
それは、藤宮にとって切り捨てたものだった。心に壁を作り、誰にも理解されないと決めて、だからこそ此処まで進むことが出来た。それを今更、引っ繰り返されたくなどなかった。
次に、右膝をひよりの腹へと思い切り叩きつけようと右足を振るった。それもまた左手によって抑えられ、封じられる形となる。

148名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:20:23 ID:9DnBN41U00

「いいえ、分かります。あなたは――――」

そしてそのままオーネストハートは両手に力を加えれば、押し退けられる形で藤宮の身体が後方へとよろめいた。


「――――あなたは大きな力を持ち過ぎた。才能を持ち過ぎた。全てを実行できるだけの力がありながら、あなたは何よりも、少女だった」


「何を――――――――!!!」


体勢を立て直した藤宮が、より洗練された右の拳を振り抜いた。それがオーネストハートの頬を殴打したと同時、藤宮の頬を同様にオーネストハートの拳が打ち抜いた。
お互いに身体がフラフラと揺らめいた。揺れる視界を、敵を視界に収めることで無理矢理定めさせようとしていた。
再度、藤宮から振るわれる拳を、オーネストハートが受け止めた。オーネストハートから振るわれる拳を、藤宮が受け止めて、睨み合いの形になる。

「あなたは魔法少女が怖かった。だけど人を殺すことだって出来なかった。だからあなたは心を閉ざした、だからあなたは血も涙もない女王になった!
 機械は痛みを感じない、感じられない。裏切られたって、見限られたって、なんとも思わないようになる……そうでしょう」

「分かったような口を……聞くな!!!」

その状態から、放った頭突き。お互いの額が叩きつけられて、皮膚が裂けて血が流れる。
藤宮明花の瞳には、確かな激情を。オーネストハートの瞳には、確かな既視感を映し出しながら……お互いの意思は、これを以て、漸く交錯したと言えるのだろう。
お互いに、反転した自らを見ているようであった。僅かでも違えていたのならば、行く末を同じくしていただろう。そういう自覚を、藤宮は抱えてしまったのだ。
そして目前の彼女が理解者足りうるのであれば――――


「分かるんですよ。私だって、同じだから」

「……やめろ」


――――――――それは、押し潰した後悔が。


「私は魔法少女になりたかった。私は魔法少女である以外の全てを棄ててここまでやってきた。それ以外に価値がないと思ってた」

「……やめろ」


――――――――濁流のように押し寄せることに他ならない。

149名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:20:54 ID:9DnBN41U00

それでも、目前に映る鏡は紡ぐのを止めなかった。
どうしても叫んで、留めることが出来たなかったのは。きっと何処かで求めていたからなのだろう。藤宮明花という少女自身を、断罪してくれる何者かを求めていたのだろう。
だから止めることが出来なかった。壊れかけている身体以上に、その心が。その腕が、彼女の胸倉を掴んで、額を離して、俯いて。ただそれだけだった


「違うものがあった。魔法少女ではなくて、私を信じてくれる人達が居た。居たんです。それは死ぬまで……いいえ、たった今、気付いたこと。
 私が見返した、魔法少女達の歴史と、願いと、この街での戦いの中で。何人も……何人も」


――――――――オーネストハート、雛菊ひよりの一生は、きっと悲惨なものだっただろう。
魔法少女であることを望んで、それに自分の魂をすら捧げた。その最果てに、魔法少女でありたかったと望んで、死んでいった。
……きっとそれは、魔法少女という存在を間違えていたのだろう。死ぬまで気付くことが出来なかったけれど、そう、プリズムハートだってそうだった。
隣に、誰かが居た。支えてくれる誰かが居て、それに応えようとする。魔法少女は、決して――――"独り"では成立しない。自分と、誰かが居て、成立するものだったのだと。

最後まで、気付くことが出来なかった。

「今更気付いたって遅いと思います。取り返しなんてつかない。終わったことは、もう戻らない。けれど……気付くことが出来て、良かった」

自嘲気味に、少女は笑う。
あれだけ魔法少女というものに固執して、結局それ以外の何もかもが見えていなかったのは自分だ。こんなのは、何も分かっていない面倒な視聴者と何が違うというのか。
だからせめて、其処に居る鏡写しの彼女には、それを知っていてもらうべきだった。伝えるべきだったと思った。だからこそ、この役目を買って出た。
魔法少女とは、最後の最後まで……希望を与えて、去っていくものだろう。


「……藤宮明花さん。あなたは、どうでしたか。あなたの今までには……何が、ありましたか」

150名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:21:16 ID:9DnBN41U00

――――藤宮明花は、顔を上げた。
記憶を遡ることはしなかった。そうすればきっと、後悔してしまう。そうすればきっと、ああすればよかった、こうすればよかった、と……届かない想いが溢れてしまう。
そんな後悔は自分には許されない。最善だと信じていた。そうして執行していた。だからそれを、今更後悔するなど、許されるはずがない。

「……分かっています、そんなことは。言われなくたって、反芻しなくたって」

小さく微笑んで、その手を離した。一歩、二歩、と。崩れ落ちそうな足取りで、その身体が後退っていく。
身体からは光が浮かんでいた。白い光、純粋な魔力だ。最早何になることもないだろう――――空気中に消えて、無へと還っていくばかりの、ただの光たちになって、終わっていく。


「魔法少女という脅威に怯えて、私は全ての魔法少女を管理する道を走った。裏切りに怯えて、全ての魔法少女を殺戮する道を選んだ。
 それでいいと思った。正しいと思った。ええ、きっと違うのでしょう。これは私の弱さが選んだ選択肢で、何処かに……誰かを信じることさえ出来たのなら。

 私は、きっと……いいえ。そんな理想を語ることも、私には赦されないでしょう。許しては、くれない」


藤宮明花は、恵まれ過ぎていたのかもしれない。
財力も、権力も、自身の才能も、そのどれもが誰とは一線を画するものであった。だからこそ、一人で全てを背負う覚悟を決めた。
その覚悟は暴走し、最後には自分以外の誰をも信じることのない機械になった。きっとそれは――――後悔することすらも、許されない罪なのだろう。だからせめて。


「だからせめて、私は……惨めに、独りで」


その身体が崩れ落ちた――――その身体を、抱き止める白い影があった。

151名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:21:30 ID:9DnBN41U00

「ゲームマスター……!!」


その場に居た全員が驚いて、けれども動き出すことはなかった。その場にいる、魔法少女ロワイヤルの参加者達が知らない、別のロワイヤルの"ゲームマスター"。
藤宮明花の傍に仕えて、正しく藤宮に撃ち抜かれた彼女は、その腸からしとどに生血を吐き出しながら、無色透明を血の色に染め上げながらも、崩れ落ちる少女の身体を抱きとめて。
その場に座り込む。膝の上に彼女の頭を乗せて、相変わらず表情変化の少ないその顔で、藤宮のことを見下ろしていた。


「……死にたかったのに、貴女は……また、余計なことをして……」


明花の顔は、慈しむような微笑みとともに彼女を見上げていた。伸ばされた右手が、透明な髪を掻き分けて、そっとその頬に触れた。
その言葉に、ゲームマスターの少女は……その顔を綻ばせた。何処か儚げな色を持ちながらも、きっと純粋な、嬉しいという感情の表現であったのだろう。


「……明花は、ワタシの友達。最初に言ったのは、明花だから……ワタシは最後まで、明花の友達」


藤宮明花は、呆れすらもそこに抱いた。同時にそこに、愛おしさを覚えた。
彼女を助けた時、藤宮明花は洗脳するようにそういった。「貴女は私の友達だ」と。それは全て、彼女を利用するためだった……自らの目的のために、そのパーツにするために。
それを律儀に、最後まで彼女が守り通したのは、何も知らない愚かさからか……自分だから、なんて都合のいい現実を、抱えて死んでしまいたくはなかった。

152名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:21:58 ID:9DnBN41U00



「上手く、笑えたかな」



ただ、それにはきっと、答えなければならないと思った。
女王としてでも。ノブレス・オブリージュでもない。自分のことを最後まで友達だと言い切ってくれた……彼女へと。ただ、一言だけでも。



「ええ、とっても……素敵な笑顔ですね、■■■」



誰も知らない、彼女の名を告げて。貴女の笑顔は、誰よりも素敵だと頷いて。
二人の魂が消えていく。身体はゆっくりと崩壊して、光は空へと昇っていく。本当に微かで些細な魔力の光、片方は無色透明、片方は黒い百合のように輝いていた。
何度も何度も交差して、何度も何度も離れては消えていく。

153名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:22:20 ID:9DnBN41U00


















――――――――無色透明の空。悪い夢だって、薄らいでいくように。














                                   .

154名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 02:22:40 ID:9DnBN41U00
第八話 MAGICAL GIRL ROYAL 第五節 終

155名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:51:05 ID:9DnBN41U00

「……親玉を倒したら、全部解決やと、勝手に思っとったけども……別にそんなことなかったわ」

瀬平戸ショッピングモール。その中のフードコートで、雛菊ひよりと天王寺ヨツバの二人は気を抜いていた。
藤宮明花との最終決戦を終えてから三日――――魔法少女としての脅威を排除した今、目下の目的は元の世界……ゆりかご市の在る世界への帰還こそが最重要となってくる。
正確には、来栖宮紗夜子一人を送り返せばそれでいい……というのは暗黙の了解であるが。ともあれ、その手掛かりは、これっぽっちも掴めていないという有様であった。

「それはそうでしょう。……あの人は、寧ろ対応する側でしたから」

藤宮明花は、魔法少女達の鏖殺を目的としていたが、魔法少女を呼び寄せたわけではない。
寧ろ、呼び寄せられた魔法少女達への対応に追われていた側と言った方が正しいだろう。彼女の目的も併せて考えると、その気苦労自体は途方も無いものだろうとは思える。
ともあれ戦い自体が終わっている以上、多少気を抜いているというのが現状であった。

「そういえば、あの二人は何時くらいに来るん?」

「遅いと思いますよ。なにせ二人で生徒会の仕事してますし」

瀬平戸での住居は来栖宮紗夜子が有するホテルを使用するということで現状は賄っている。仕方ないこととは言えお小遣いまで貰っている。
本来であれば学生である二人、学校に通えるのが一番なのだが、立夏と紗夜子が滞りなく黒百合学院に通えたのは最大の権力者である藤宮が居たからこその話。
現在、生徒会長代行として紗夜子が仕事を請け負っている状態だが、その量は脅威的……というか、生徒会長の仕事だけでも何故一人でやれていたのか分からないレベルだとか。

「さて、今日もゲームセンター行きましょう! プリズムハートのプラチナレジェンドレアを出すまで引き続けるんです!」

「ま、またぁ!? 前出したのとは違うん?」

「違うんですよ、プラチナレジェンドレアはワンカートンに一枚しか入ってない特別仕様で……あれ」

156名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:51:26 ID:9DnBN41U00

――――突如として、静まり返るフードコート。
先程まで、平日とは言えそれなりの人数が居たそこが静まり返っている。客どころか、店員の姿すらも見えない――――大凡ショッピングモールに有り得ない、異様な沈黙だ。
すぐさま変身できる準備をしながら、周囲を見渡すが、そこに人の気配はない……だというのに。かつ、かつ、と。甲高い足音が、静まり返ったショッピングモールに響いている。

意識を張り巡らせていたというのに、まるでそこに現れたことに気付かなかった。気が付いたら居た、とすら言いようがないほどに。

傍らのフードコートの椅子に腰を掛けていた。


「これにて、瀬平戸の物語は一度の終りを迎え、魔法少女達の物語にはピリオドが打たれる……おめでとうございます」


……"魔法少女ではない"。スーツ姿の男だった。黒い髪に青い瞳の男は、一冊の本へと目を通しているようであった。
彼女達には、全く未知の存在であった。超常の存在と言えば、魔法少女以外にほかならない……そういう世界に居た以上、"成人男性"が超常的であるように振る舞うというのは。
それだけでイレギュラー中のイレギュラーであった。


「な、な、なんやあんたは……いったいなにもんや……!?」


警戒しながらも、ヨツバが男へと声をかける。ページを開いたまま、その視線がヨツバへと投げかけられると、微笑みをその顔に湛えて立ち上がる。


「申し遅れました、私の名はリチャード・ロウ……ヘレネ・ザルヴァートル・ノイスシュタイン卿に代わって、と言えば伝わるでしょうか?」

「……ヘレネって、あの」


ヘレネ・ザルヴァートル・ノイスシュタイン。黒百合学院生徒会に所属していた魔法少女の一人……その戦いの過程を覚えては居なかったが、最後は覚えている。
光りに包まれて、消えた……それからどうなったのか分からなかった。生徒会の中にも何処にもその姿がなかった以上、それで消滅したのだと思っていたが。

157名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:51:53 ID:9DnBN41U00

「ええ、"あの"です。少しばかり、彼女は他の方とは様子が違ったでしょう」

「……確かに、そうでしたけど。あなたは……一体?」

名を問うのとは違う。本質的な、その詳細に迫る。
必要であれば、オーネストハートとして質問の魔法を振るうことも辞さない――――だが、その前に、リチャード・ロウはその問いかけに対して口を開く。


「宜しい。折角達成したのです、その戦いに免じてお答えしましょう。

 我々は、この世界を編纂し、再生する――――"再生者"、と括られるものです」


何一つとして理解は及ばなかった。だが、一つ察することが出来るものが在る。
世界の編纂。そんなものが可能であるとしたのならば――――瀬平戸、天海、かごめ、ゆりかご、記憶にある五つの都市の名前。それらが全て、他の世界の存在だと考えると。
魔法少女達が――――パラレルワールドに偏在する魔法少女達を、彼らの思うがままに"一つの世界にまとめ上げたのだとしたら"。

「り、りぇね……」

「……なら、"この世界"は、あなた達が……」

「察しが早くて助かります。そういうことになりますね。最もこの世界は私の担当ではありませんが、まあ、兎も角……」

それは、凄まじい規模の存在だということになる。
魔法少女という枠にも収まらない、新たな超常の存在。それ自体にまだ、理解が及んでいないが、彼らという存在が何かを起こそうとしていることは分かる。


「おめでとう。貴女達には、束の間の平穏を味わう権利が与えられた」


――――新たな敵なのか、どうかすらも分からない。


ただ、脅威的な力を持っていることは分かる。そうでなければ、世界の編纂などという大言壮語も、事実として世界を融合することも出来はしないだろう。
束の間の平穏。では、その先に何があるのか。新たな戦いなのか、それとも……

158名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:52:04 ID:9DnBN41U00

「それでは、皆々様方。やがて来る滅びの時まで――――幾久しくお健やかに」


パタン、と片手に開いていた本が閉じられる。天王寺ヨツバは、思わず……そこに刻まれた、本のタイトルを読み上げた、



「外典、英雄異端録」



本が閉じるとともに、その男はいつの間にか姿を消していた。フードコートは人で賑わっていて、不気味な静寂など嘘のように消えている。
雛菊ひよりは、天王寺ヨツバと顔を見合わせた。何が出来るのかは分からない。分からないが――――――――"きっとここから先には、新たな戦いが控えている"。
向こうから、車椅子を押してやってくる二人の少女の姿があった。この事は、先ず真っ先に二人へと話さなければならないだろう。



――――――――戦いは、まだ終わらない。

159名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:54:30 ID:9DnBN41U00



第一外典 魔法少女管理都市『瀬平戸』 終幕



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160名無しさん (ワッチョイ 1698-bc14):2019/08/19(月) 03:55:50 ID:9DnBN41U00











for the next Apocrypha――――――――











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