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【伝奇】東京ブリーチャーズ・玖【TRPG】
381
:
多甫 祈
◆MJjxToab/g
:2021/04/11(日) 22:45:53
>「な……、何故だ……?
>この……神が……。神の僕たる、鼎の三神獣が……。
>何故、下らぬ妖怪ども風情に後れを取る……?こんなことは……計算外だ……」
神鳥ジズは氷の彫像となり砕けた。
神竜レビヤタンはただの水になり、ベヘモットは瓦礫の山と成り果てた。
アンテクリストは、心底理解できないという表情でそれらを見つめていた。
>「確かに、あなたは強大ですわ……アンテクリスト、いいえ……赤マント」
敗北を受け入れられないアンテクリストに声をかけたのは、レディベアだった。
両ひざに手を乗せて、荒い呼吸を整える祈。
その傍らに並び、アンテクリストに、理解できないものの答えを示していく。
>「あなたの力に単独で比肩する者など、この世界には存在しないのでしょう。
>まさしく唯一神、絶対神と言うに相応しい力ですわ。――でも、それはあくまであなたひとりの力。
>どれだけ優れていたとしても、ひとりの力は大勢の束ねられた力には絶対に敵わないのです」
アンテクリストは、神に生み出された最初の天使。
神にすら恐れられ、力を?奪されるほどに優れた者。
そして力を奪われてもなお、この執念。
力を取り戻した彼と単独で能力を比較したなら、敵うものなど世界中を探してもそういまい。
>「戯れ言を……!
>有象無象の力をかき集めたところで、ゴミは所詮ゴミでしかないのだ!
>究極の力は、ただひとりだけが持っていればいい!頂点に立つのはただひとりで……!」
そんな優れ過ぎたアンテクリストだからこそ、自身に対する絶対のプライドが、傲慢さがあるのだろう。
他者は自分ほど優れていない、協力などできようもない。利用する程度の価値しかない。
そんな思いがあったのかもしれなかった。
彼がルシファーを扇動して行わせたクーデターが最終的に失敗してしまったことも、
そんな思いを強くした理由の一つだろうか。
>「わたくしも、最初はそう思っていました。
>赤マント、他ならぬあなたにそう教えられてきました。
>君臨者たるお父様の下、万民たちは支配されて然るべきと……でも、そうではありませんでした」
だが現実として、アンテクリストは究極の力を手に入れて尚、
彼の言う有象無象の力をかき集めたゴミに敗れた。その矛盾の答えこそ――。
レディベアが、祈と目線を合わせて微笑む。
レディベアも祈と同じく、血や埃やらに塗れてズタボロだったが、
その笑みは春の陽気のように晴れやかだった。
>「妖怪も、人間も、すべての生物は単独では存在できません。
>手を取り合い、助け合い、想いを繋げ合い……。
>そうやって大きな輪を描いて生きてゆくのです。
>あなたは今まで他者を操り利用することばかりを考え、分かり合い力を合わせるということをしてこなかった。
>協調を蔑み、友愛から目を背けてきた。きっと差し伸べられていたであろう手を、跳ね除け続けてきた――」
妖怪は、人の想いから生まれた。
強靭な肉体を持つものが多いが、人間の想いがなければ存在し続けられない。
忘れられた時、覚えている者が一人もいなくなった時、きっと妖怪は滅ぶ。
人間は脆く、助け合わなければ生きていけない。
他の生物も、他の誰かを助けたり、他の何かを食べたりして、支え合いながら生きている。
誰もかれもが、その輪の中にいる。
>「……誰かとつなぐ手は、こんなにも温かいというのに」
祈は差し出されたレディベアの右手を取った。
お互い傷だらけの手。そこには確かなぬくもりがある。
アンテクリストが抱く矛盾の答え。それがこれだ。
協力、協調、支え合い。友愛や絆という輪。他者との想いを繋ぐことでしか得られない力。
それにアンテクリストは敗北したのだと。
大きな力は一人が100持っていれば100でしかない。
だが100人が1を持ち寄れば、掛け合わせで120や200を超える力を時として生み出す。
その奇跡にアンテクリストは負けたのだ。
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