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【伝奇】東京ブリーチャーズ・玖【TRPG】

203尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE:2020/10/04(日) 16:18:01
ベリアルは――――アンテクリストは、強すぎる。
強大な魔物なら戦えよう。超常の神獣ならば抗えよう。
しかし、唯一神……世界に等しき存在と戦いが成立する筈がない。
震える那須野橘音に対し、尾弐は――――尾弐黒雄は、拳を握り静かに目を瞑った。
一度息を吐いてからそして言葉を掛けようとし、その直後。

>「あれ悪魔か!? 数え切れねー数だぞ!?」
>「祈ちゃんナイス! エターナルフォースブリザード!」
>「でかい……ムカデ?」

上空に現れた巨大な魔法陣から湧き出す無数の悪魔達。
そして、アンテクリスト配下の天魔七十二将が一柱、フォルネウス。

祈や陰陽師達の抵抗は一時悪魔を押しとどめた。
ノエルの広範囲妖術は、多くの悪魔を殲滅せしめた。
尾弐もまた、手近な岩等を掴み投げ、質量弾として悪魔達を圧殺した。

けれど、それは大波に水滴を垂らす様な抵抗に過ぎない。
悪魔の圧倒的な物量は津波の様に抵抗という名の水滴を飲み込み、
天魔フォルネウスの一撃がとうとう結界をすら破壊してしまった。

悪魔がラッパを吹き鳴らし、天より災禍が巻き散らされたのだ。
尾弐にはその光景を眺め見る事しかできない。
四方に散る悪魔達を漂白するには、尾弐の腕はあまりに短すぎる。

――――逃げちまおうか。

絶望の最中、そんな言葉が尾弐の脳裏に浮かんだ。
確かにアンテクリストがこのまま世界を統べれば、世界は変わってしまうだろう。
悪が跋扈し正義が虐げられる地獄の如き世界に生まれ変わるのかもしれない。
だが、それがどうした。
そもそも尾弐は邪悪な存在で、尾弐が愛する那須野橘音もまた天魔と呼ばれる悪魔だ。
善悪が反転したところでその存在になんら影響はなく……悪魔が天使となる様な世界では、寧ろ生き易くなるかもしれない。
勿論、アンテクリストからは逃げる日々にはなるのだろうが、日陰を生きるのは今も一緒だ。
死ぬのは怖い。橘音が死ぬのはもっと怖い。
それなら、正義も仲間も全てを捨てて愛する女と逃げ続ける日々も悪くはないのではないか。
悪魔の囁きの如き思い付きが尾弐の思考を染めはじめ

>「しっかりしろ橘音! それでも帝都一の名探偵かよ!!」
>「尾弐のおっさんと幸せになるんだろ!? いいのか!? 
>尾弐のおっさんが殺されて、尾弐のおっさんを見るのが最後になっても! みんな死んじまっても!」

そして、多甫祈の言葉がそんな尾弐の甘えた思考を叩き潰した。
銃でも日本刀でも傷つかない悪鬼は、一人の少女の言葉に横面を殴られたような衝撃を受けた。
ああ、そうだ。もしも逃げ出したとして

(ここで逃げ出した先の未来で――――隣にいる橘音は、笑っているか?)

想像する。今、この場で震える女が……悪戯好きで、責任感が強くて、さびしがり屋で、努力家で、仲間想いな
そんな彼女が、全てを失った後の世界でこれまでの様に楽しげに笑う事が出来るだろうか。


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