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【伝奇】東京ブリーチャーズ・壱【TRPG】

202品岡ムジナ ◇VO3bAk5naQ:2018/04/13(金) 13:36:19
刹那、品岡の姿がロッポウの視界から消えた。
十歩ほど離れたアスファルトが擦れる音、一瞬だけ現れた品岡が更にブレて消える。
品岡の姿を捉えたロッポウが粘液を吐く頃には最早的はそこにない。
形状変化で足の骨を強力なバネに変え、鞠のように跳ね回っているのだ。

「っつおらぁ!」

バネの加速そのままに、横合いからハンマーがロッポウの顔面を捉えた。
氷の棘が赤子の表皮を一瞬で凍結させ、次いで打撃がそれを砕く。
そうして二度、三度と少しづつではあるが、確実にコトリバコの体積を削いでいく。

「修復する隙なんぞやるかいな」

祈ほどの強烈な速力はないが、ロッポウの反応速度を超えられればそれで十分。
復元弾頭のように一撃では仕留められなくとも、このまま一方的な攻勢に持ち込み続ければ、いずれはケ枯れさせられる!

ロッポウが息を吸い込んだ。粘液を吐く予備動作だ。
しかしその射出口たる巨大なあぎとは明後日の方を向いている。
コトリバコの恐るべき学習能力が、品岡の機動力をバネによる直線的なものと見抜いた。
彼の一瞬後の位置を予測してそこ目掛けて粘液を吐きかける。
果たして、放物線を描く粘液の先に品岡が現れた。

「浅いわ」

地面のアスファルトがめくれあがり、粘液に対する壁となった。
溶けゆく壁の向こうからハンマーが飛び、コトリバコの下顎を砕いた。
痛みに悲鳴じみた叫びを上げながらもロッポウの両眼は品岡を睨めつける。
ボコンボコンと身体を蠕動させながら赤子の唇が蕾のようにすぼまった。

(何するつもりや……距離開けたほうがええな)

ただならぬ動きに警戒する品岡は二歩、三歩とバネ足でバックステップ。
踏んだ地面が隆起し、都合三枚の壁が品岡とロッポウの間に形成された。
ロッポウの身体がかつてないほどに、体積にして倍ほども膨れ上がる。
キィ……と甲高い音で鳴いて唇から粘液が噴き出した。

「それしかできんのかい、芸が無いのぉ――」

鼻で笑った品岡の右腕に激痛が奔った。
さながら水鉄砲の要領で射出口を狭め速度と圧力を増した粘液が三枚の壁を一瞬で貫通し、その先の品岡を撃ち抜いていた。

「あ……?ああああああああっ!?」

圧縮粘液に穿たれた右腕が毒々しく変色し、煙を立てながら腐食の範囲を広げていく。
品岡はたまらず情けない悲鳴を上げながら左手で右の腕を掴み、形状変化で引き千切って捨てた。
握ったスレッジハンマーごと地面に放られた右腕が、溶解してアスファルトの染みと化した。

「前言撤回や。頭使っとるやないか……」

自切した右腕が戻らない。コトリバコの呪いの一部が残っているのだ。
形状変化で強引に腕を作ることも考えたが、残り少ない妖力を無駄には出来なかった。
品岡は潔く腕を諦めて再び走る。彼のいた場所にロッポウが轟音を立てて着地した。

「おのれが……!」

残った左腕で拳銃を撃つ。利き腕を失い回避しながらの射撃では当然当たらない。
ロッポウが距離を詰める。牽制に鉛玉をばら撒きながら少しでも距離を取る。
趨勢は完全に逆転し、品岡は防戦一方だった。
片腕でできる攻撃などたかが知れているし、何よりノエルの妖術のかかったハンマーを落としたのが痛い。
現状コトリバコに対して有効な打撃の放てる唯一の武器だった。


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