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【伝奇】東京ブリーチャーズ・壱【TRPG】

144那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/13(金) 13:11:24
稲城市、某所。
普段は大勢の人々が行き交っているであろう商店街が、KEEP OUTと書かれた黄色のバリケードテープで封鎖されている。
その近くにはたくさんの警察車両、救急車、消防車が集まっており、今まさに懸命の救命活動が行なわれていた。
……が、今さらの救命活動などにいったい何の意味があるだろう?
救急車に担ぎ込まれ、AEDによって――あるいは人力によって心肺蘇生を施されている女性たちは、とっくに絶息している。
野次馬たちが群れを成し、その光景を写メで撮影したりしている。
目の前で死が猛威を振るっているというのに、なんという楽観ぶりだろう。群衆を前に橘音はそう思う。
が、そんな人々を《妖壊》から守るのが自分たちの仕事だ。

「ハイハイ、お邪魔しますよ。毎度おなじみ狐面探偵、那須野橘音ですよぉ〜」

救急車や消防車の回転灯が眩しく輝く中、人混みを縫って前へ進んでゆく。
人々を押しとどめている警官のひとりが橘音たちブリーチャーズの面々を見咎め、制止を促す。
が、橘音は歩みを止めない。警官の目を見つめ、仮面の奥の双眸をギラリと輝かせる。
橘音の目を見た警官はたちまちボンヤリと棒立ちになり、ブリーチャーズをバリケードテープの内側へ通した。
妖狐の持つ妖術のひとつ、幻惑視。肥溜めを風呂と偽るような、妖狐お得意のたぶらかしである。

「お疲れさまです。ここはこのボクがいつも通り!バシッと解決してきますから、皆さんは誰も中へ通さないように」

そんなことを言う。事件にすぐ首を突っ込む厄介者として、警察関係者の間では有名な橘音だ。
廃墟のような無人の商店街を、橘音は普段通りの軽やかな足取りで歩いてゆく。
しかし、その後に続くブリーチャーズの面々にはもう感じられることだろう。
ピリピリと肌を刺すような、妖気の残滓。
それはつい最近までこの界隈に目標とするモノが――コトリバコがいた、ということの証左に他ならない。

「この『残り香』から察するに……コトリバコはまずこの近辺に現れ、あちらへ向かったようですね」

右手を前方へ伸ばして告げる。よく見れば、商店街のあちこちに血だまりができている。呪詛の犠牲になった女性たちのものだろう。

「この商店街を訪れていた女性の悉くを殺して。……いやはや、食い散らかしてくれたものです」

口調は軽いが、別におどけているわけでも、危機感を覚えていないわけでもない。
憤っている。ただ、それを人に悟られたくないだけなのだ。素直でない性格である。
そして――そのまま五分ほども歩いた後だろうか。
『それ』との遭遇は、突然に訪れた。

「た……、た、助けて……。助けて……ください……」

開けっ放しの薬局の店舗の中から、よたよたと三十代くらいの女性が出てくる。服装からして薬剤師の女性だろうか。
下腹部が真っ赤に染まっている。呪詛を浴びた証拠だが、生きているということは影響が弱かったのだろう。
距離にして50メートルほど。女性はブリーチャーズを認めると、涙を流しながらふらふらと助けを求めてきた。
祈などはすぐに女性を助けようとするかもしれない。――が。

「……この妖気!皆さん、来ますよ!」

鋭い声で注意を促す。と同時、女性が何の前触れもなくごぷり、と大量の血を吐き出した。

「あ……あ……、ああああああああ……!ひっ、ひぎっ……あぁ、ぎ……ぎゃあああああああああ―――ッ!!!」

女性が自らの顔に爪を立て、苦悶の声をあげながら掻きむしる。下腹部の真紅が一層広がってゆく。
自ら顔の皮膚を抉り、髪をむしり、女性は断末魔の悲鳴をあげてのたうち回った。
妖怪である橘音をして、目をそむけたくなるほどに凄惨な有様である。――これが、コトリバコの呪詛。
女性の下腹部があたかも別の生き物のように激しく蠢き、その後破裂する。
ゴボゴボとくぐもった声を血と共に漏らし、目や耳、鼻からも大量の血を流すと、女性は前のめりに倒れて絶命した。
間近で見る呪詛の凄まじさたるや絶句する他ないが、ボンヤリしている暇はない。
なぜなら、敵はもう出現しているのだから。

そう――想像を絶する苦痛のうちに死亡したであろう、女性の亡骸のすぐ傍に。
寄木細工の小箱が落ちているのを、ブリーチャーズの面々は見た。


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