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ここだけ能力者達の物語投下所part1
12
:
名無しさん
:2017/10/26(木) 00:10:11
◆
「……あ。翼…」
「終わったぜ。……立てるな?また、直ぐに発たねばならん。
さっさと準備を整えておけ。一ヶ月ぶりの長旅だ」
村外れの廃品置場。不法投棄された大型バンのドアを開けて、中に隠れていた人物、少女を引っ張り出す。
何の手違いかこの世界に召喚され、自分と寄り添う事となった憐れな淫魔の少女。これが友を殺し、血の混じった戦場の泥を啜ってでも生き延びようとする理由だ。
彼女は自分を慕っている。それ故に、あの瓦解していく学園に置いて行く事も出来なかった。平和な所まで辿り着き、彼女が幸福な生活を得るまで護り、そして去る。それが今の彼を突き動かす決意だ。
彼女が幸福になるのなら修羅にでも、鬼にでも成る。何処までも堕ちてみせる。それが自分の責任だ。生きる目的だと。意固地になっていた。
「…なに、考えてたの?」
「そう見えたか?大した事じゃない。本当、そんな言う程の事ではないさ。マジで。
強いて言うなら、持ち主の死んだ物品を掻っ払うのは気分が良いって事ぐらいさね。早く乗れ」
「……一つだけ、やくそく、してほしい」
「一つしかない缶詰肉を寄越せって事以外なら。何だ?」
「あまり抱えこまないでほしい。それだけ」
「善処するさ。…ありがとな」
乾いた自嘲の笑い溢れる古ぼけた軽トラ。灰となった村の中で見つけた、唯一動く車両。
秋晴れの青空の下、二人の流民を乗せたトラックは宛てもなく道を走る。逃げて、逃げて、逃げ延びるために。
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