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仮投下スレ

3超常なるモノ共:2020/05/14(木) 20:05:49 ID:WyEfe38s
「滅却師の皇帝よ、己の未来を『視』誤ったか」

全知全能のユーハバッハが敗北して間もなく、彼が座していた王座の前に絶望を形容する黒い人型が佇んでいた。
いつの間に、全く気配もなく、ソレは死闘を終えた空間に出現していた。
当然、皇帝と対峙していた全員が不意を突かれた。即座に違和感と、底知れぬ不気味さを抱き、誰もが身構えただろう。
そしてその内の何名かは、その正体を理解していた―――その名は、アンチスパイラル。

「反螺旋族の集合意識体、何をしに来た」

「特異点を集めしタイタン星人よ、ここは我々の領域、我々が創造せし宇宙だ」
「ゆえに、我々の知覚はこの宙域を捉えている」
「さすがに、蟻のように細かき人間共を全て識別することはないが」
「我らが同盟、ユーハバッハの死とあらば話は別だ。かの超越者を倒した、それがどのような者達なのか見に来たに過ぎん」

そう言って、アンチスパイラルはその場にいる全員を一瞥するような仕草をする。
弱肉強食の理から外れた反逆者達、全てを無に還さんとする愚考者達、無限の可能性を求めし異端者達。
その面々を、ただ一つの情を表さずに見ていた。

「おい、そんなこと言って、俺たちを潰しに来たんじゃないのか」

「否。終末を望む天司よ、我々は戦いに来たのではない」
「ここに居る我らはただの影法師、我らの中核は螺旋に目覚めし者共を注視している」

突如、アンチスパイラルのそばに映像が映し出された。
画面は星々の海に満たされ、その中にはアンバース頂点の城塞や元資源衛星の機神も映し出されていた。
そしてそれらと比較できる程に異常に巨大な機械人形が2体、モニターに映し出せない程に逸脱した攻防を演じていた。
その光景はまさに巨大な絶望と希望の激突。
その規格外、次元の違いを見せつけられれば、広間にいた面々から一時的に言葉を失わせるには充分だった。

「スケールが違い過ぎる…論外同士のバトルとしか言いようがないわ」

「そういうことだ、幻想郷の巫女。ゆえに、我々にお前達を相手する暇はない」
「だがそうだな、これだけは言っておこう」
「よくぞ、ユーハバッハを倒してくれた」

「!? それは一体、どういうつもりで言っているんだ!」

「かの皇帝は強力な同盟者であり、同時に我々の足枷でもあった」
「参加者の大半が反乱して攻め入る事態になっても、お前達と戯れる事を選ぶ程にユーハバッハは盲目であった」
「だが、皇帝が消えたことで、奴に与えられた拒否権もなくなり」

「ようやく、原初返還による幕引きを始められるようになった」

「!? なん……だと……!」

「さぁ、原初神カオスよ、目覚めの時だ」
「我々が時空断層の狭間を創ろう、その瞼を開かせよう」
「そして、盟友ユーハバッハを倒した者共に、祝福を与える時だ」
「奴らの増長、スパイラルの増加を阻むために、地表全てを資源に還るがよい」

 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 

空間が割れる。
ソラが割れる。
そして、あり得ざる光景が顕われる。
歪み、撓み、ねじ曲げられながら引き裂かれた―――
間隙の向こうに何かが在る。
あれは。
何だ。
歪みの宙の間隙からこちらを覗く、あれは―――

――――――あれは、瞳だ。
ソラの瞳が、地球を覗き込んでいる。



虚空の瞳が顕われた瞬間、世界は、時は、止まってしまった。
なぜなら、誰しもがその瞳に心を奪われたからだ。
見られている、偉容な存在に。
そこから放たれる熱量は、どれだけ離れていても肌身に感じる。



『―――原初たるカオスの再起動を確認。』
『―――あらゆる要素は、不要物として判断されます。』
『―――緊急警告。緊急警告。』
『―――カオス神、顕現。』
『―――資源の強制回収が開始されます。』
『―――惑星表層資源の、原初返還が実行されます。』



どこからか機械的で無責任なアナウンスが流れる。
カオス神。原初返還。その言葉の意味を、誰しもが知っている。
儀式の前に始まった光景を思い出すだけでよい。
惑星を抉り取る所業が、頭上にて待ち構えている。
ゆえに、誰しもがこの結論に思い至る。
―――ついに、超常の神による審判の時がきてしまった、と。

地上も、宇宙も、各種拠点も、それぞれの戦の勢いは止まらない。
ゆえに、誰しもが虚空の瞳に対応するには手遅れだった。
そして誰もが、絶望を抱いていただろう。





その巨大な瞳に向かって、地上から光の筋が突き進むまでは。


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