ある日、パパとふたりで - 1440758019

1： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:33:39 ID:0zXuMqek0: ┌───────────────────────────────────────┐
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原作　：　http://blog.livedoor.jp/douteiyarou/archives/6132227.html
2： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:33:54 ID:0zXuMqek0: 井上やる夫が玄関を開けた瞬間、不意に奇妙な違和感襲われたのは、妻
の靴が無かった事による。
　時刻は午後十時を少し回り、いつもの帰宅時間である。

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3： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:34:07 ID:0zXuMqek0: 　やる夫はその違和感を黙殺し靴を脱ぐと几帳面に靴を揃えてからスリッパ
に履き替えた。

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.　　　　　　　　 | |　　　　　 .′　　　　　　 .ｉ　　　 |　　　　　　　ﾊ　　,} ´　　　＞三三三｀二ニ,,　､
　　　...　...　　　　 | |　　　　　　　′　　　　　　　ｉ　　　　|　　　　　　　,　', ／　　　　　　　＞三三三三三＼＼
.　　　　　　　　ノノ　　　　　 /　　　　　　 {　　　　|　　　　　　　{ ／　　　　　　　　　　＞．_三三三三＼＼
　　　　　...... 　 .Ｙ{　　　　　　　 {　　　　　　　 Ⅵ!|!|!l|!ｉ　　　　　　／　／　／　　　___/__.　　　二三三三三　/
　　　''"""'''"^ . } }　　　　　　　ヽ　　　 .´.^''^"...＼|!､|!||li|!|／ｌ!|／　　.,_ｰ=彡'´￣￣.'''^"'.￣　ｰ‐--三.＿_/ /."^"'^'^'"^"'""'"^'''^^''''''^
　　　.─=≡.　厶__　　　　　　　　}　　　...─=≡.　 . .ﾞ~ゝ_／＿ｰ'彡=‐''´　　　　　　　　　　　　　　　　￣
　　　　　　 /三三＞．_　　　　/
　　　　　 ∠三三三三ニﾆーｖ′
.　　　 ∠ニニ三三三三三三}
　.．＜三三三三三三三三三ｉ|
./三三三三三三三三才三三ﾘ
L三三三三三三彡''´
.｀¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨´
4： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:34:19 ID:0zXuMqek0: 　いつもであればすぐに妻のハルヒの声が飛んできて、それに「あぁ」だの
「いや」だの、短い言葉で対応するのだが、やはり今日はその言葉は無
い。
　ハルヒは専業主婦であるから、この時間に居ないのは珍しい事である。

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:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　　ゝ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ノ　　ｲ:!:.:.:.:.:.:.:. 从.:.:.:.:.:
5： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:34:30 ID:0zXuMqek0: 　やる夫は短い廊下を歩き、居間に通じる扉を開けるまでの間に思考を整理
していた。
　この時間に妻の出かける用事と言えば、町内会の用事かＰＴＡ程度で
ある。
　ごく稀に買い物に出かける事も有るが、それも本当に稀な事だ。

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　　　.　　＼.　　　　　　　 {　　　　　　八　　　　} /
　　　　　　　＼　　　　　　｀───´::::::｀──'／
　　　　　　　／ヽ　　　　　　　　　　　　　　　イ＼
　　　　　／　　　　　　　　　　｀`ｰ- -‐'"´　　　　＼
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6： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:34:41 ID:0zXuMqek0: 　やる夫は思い当たる節も無いが、さしてそれに動揺する事も無く、居間の扉
を開けると、それなりに綺麗に整理されたいつもと変わる事の無い居間の
ソファで息子のやる太が何かしらのゲームに熱中していた。

　　　　　　　　　　ｶﾀ
　　　　　　　　　　　　ｶﾀ
　　　　　　　< ｀ヽ､　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　／｀ヽ､　｀ヽ､　　　..／―　　―＼
　　　　　／　　　　｀ヽ､／ i　 .／ ●　　　● 　＼
　　　　　｀ヽ､　　　／　i　 i､...|⊃　(_,､_,)　⊂⊃　|
　　　　　ヽ　｀ヽ／　　　i　 i ..＞　　　　　　　　ィ’
　　　　　.l　｀ヽ､ i　　　 i　 i#｀ヽ<⌒ヽ､／　.ノ.|
　　　　　..l　　 .｀i　　　 i　 i####>｀ゞ_､_,,／　.|
　　　　　　｀ヽ､　 i 　　　 i／ヽ／／:::::::::｀ヽ､　 |
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　　　　　　　　　　　　　　 '，
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,′　　　　　　　　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　　　　　　 /
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ≧=-　　　　＿＿　　イ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＿＿＿＿＿　ﾉ'，
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 '，
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　}　　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　,　　　　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　　　　/ 　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　/　　　　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　/ 　　　　　　　　 }
7： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:34:52 ID:0zXuMqek0: 　やる夫は名前だけで息子を呼ぶと、しばしの間が有り、携帯ゲームから聞こ
える音が停止してから振り返った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _..．-――― - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ─‐　　 ── 　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　（● ）　　（● ）　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　やる太　　　　　 /　　（　　人　　　）　　　　　ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　Т´＿｀Т´　　　　　　　　　’
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　　 ` ⌒ "´　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　￣ ´　　　　　　　 , ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　 - 一…　 ¨￣＼

　　　　　＿＿＿_
　　　／ ─ 　 ─＼　　 .＿＿＿＿＿＿＿＿＿__
　　／　 ●　　 ● ＼　...| |　　　　　　　　　　　　　|
　　|　⊂⊃　(_,､_,)　⊂|　...| |　　　　　　　　　　　　　|　　　あ、お父さん、おかえりなさい
　　ヽ　　　　（_ﾉ　　ィ’　...| |　　　　　　　　　　　　　|
　　Y　　 v､　　　、ヽ　　.| |　　　　　　　　　　　　　|
　　乂＿　）　　,-､　　　 .|_|_＿＿＿＿_＿＿＿＿_|
　　　　　　 γ⌒ヽ)ニニニニ　　＿|_|＿_|＿
8： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:35:02 ID:0zXuMqek0: 　やる夫は息子のその言葉に反応するでも無く、即座に自分の用件を息子に
切り出した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　_.. -''''ﾞﾞﾞ´　　　ﾞﾞﾞﾞ'''ｰ,,、
　　　　　　　　　　　　　　_..-'″　　　　　　　　　　　　｀ﾞ'-､、
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀''-、
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　 !　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ　　　　母さんはどうした
　　　　　.!　　　　　`'ｰ ,,_　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,＿__　　　　　　 !
　　　　　|　　　　　-.、　　｀''ｰ ..,、　　　　　　 ....ｰｰ''"´　　 ._,-　　　　　　 !
　　　　　l 　　　　广''┬--v-‐．　　　　　　 .'i-----r‐''ﾞ］　　　　　　　　 i!
　　 ,..-'".ｌ　　　　　　ヽ,、.ゝ-'ﾞ _./ 　　　　　　　　ヽ_.ﾞｰ'" .／　　　　　　　　 ,l～　..,,,
　 ´　　　ヽ　　　　　　 .｀ﾞﾞﾞﾞﾞ./ 　　　　　　　　　　ヾﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ　　　　　　　　　 /　　　　ﾞﾞ'-､、
　　　　　　 .＼　　　　　　　│　　　　　　　　　　 l　　　　　　　／
　　　　　　　　.｀'-､,　　　　　ゝ..＿__＿,..-ｰ .＿＿___ノ　　　　　　　 ,..-'´
　　　　　　　　　　　｀''- ..,_ .、,__,＿＿_＿_＿_＿_＿_..,_ .、,__, -'''"

　心配している、と、普通の人でなら思うかも知れない。
　しかし、やる夫にとってこれは心配と言うよりもむしろ起きてしまった不測の
事態を早急に処理したいと思う気持ちが強い。
9： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:35:14 ID:0zXuMqek0: 　息子のやる太はその言葉にやる夫の目を見るでも無くソファからするりと下り
て一目散に居間の奥の戸棚から一通の封筒を取り出して、やる夫の前に差
し出した。

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　　　　　／　―　 ‐＼
　　　　／　　● 　 ●＼
　　　　|　　 ⊂⊃　(_,､_,)　|　　　これ、お父さんにってお母さんが
　　　　ヽ　　　＿＿＿__ィ’
　　　　　r'　　＿＿＿＿つ￣）
　　　　 ./　　　　　　ハ　｀￣
　　　　/ 　　　　 tｉ￣ﾒ
　　　　|　　| ー＜/´｀ヽ
　／＾┤　 |　　 /　　/
　 {　、＿ノ　　ゝ＿）
　　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,．: ''''""~""'''‐．.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　─‐　　　──　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　( ● )　　　(●) 　　　　｀､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　／　　　＼　　　　　　　　　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　（　　人　　　）　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　　｀ﾞ'´　｀ﾞ'''''´　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　 ,.'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　-----‐‐‐'''"~　　＼
10： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:35:26 ID:0zXuMqek0: それは茶封筒に丸い癖の強い文字で『井上やる夫様へ』と書かれていた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/ 　　　　　}
　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　/
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　/
　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　/
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　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/,イ￣ミ､　/
　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |l「 ,ｨ＝ヽ|/
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弋ゝ＿_ノﾘ
　　　　　　　　ー―――――――――――――――――――――――ヾ＝一"

しばし、やる夫はその封筒を睨んだ後に中から一枚の紙切れを取りだした。
11： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:35:37 ID:0zXuMqek0: 　要約すれば、妻のハルヒはやる夫とやる太を置いて家から飛び出したと言う事
であった。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´. : : :: :: ::: :: :: :: :: :｀
　　　　　　　　　　　／. : : :./. :: :: : : :i::__::__::__:__: ＼
　　　　　　　　　　 / .:: :: ィ/ .:: :: : :: :::|　　　　　　｀＼
　　　　　　　　　　　　／´..:::／ j1. :: :: :: ::.::.::|‐┬─r --＜　ヽ
　　　　　　　　　　 '. :: :: :〈　./ .!. ::/: :: : :: : !::/:.: ,:.:.:./ !:.:.:.:.:;:.:.::ﾊ
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　　　　　　　　　　　 |: : : :i: :く　　j.:!: :: :: :: : : i:.:.:ムイ＼|:.:.:.:.:ｊ:.:.:.:.:.}
　　　　　　　　　　　 |: :: : |:: ::/Y´|:l!: :: :: : : : Ⅳ:汽≧ｭ､ !:.::.,ｲ:.:.:.:.:,'
　　　　　　　　　　　 |: :: : l.::/|:ｌ{　| !: :: :: : : :::|　匁ツ　㍉／　! : :八
　　　　　　　　　 /!. ::.:::|/ .|:!乂!:ﾄ、. :: :: ::.:|　　｀`　　　ｒ豺ﾘｲ
　　　　　　　　　 l:l:: ::.:::|＼|:! く|::|∧. :: :: :::|　　　　　　乂':.:.:|
　　　　　　　　　 |:!: :: : |:: ::!l:: ::|::| ∧. :: ::.::|　　　　　　　/:...: |
　　　　　　　　　〈ハ .:: l::/ ::ﾊﾉ从/ ∧. ::.::|　　　こ> ,ｲ.:...: :.|
　　　　　　　　 }八 :ﾙ' ::/ :}ｲ.:.:.∨ﾆ}:: Xｌ　　　／|.: :. :. .:.|
　　　　　　　　　 ',:.:.::/!イﾘ⌒´ ㍉|:/:ﾘ　ー‐彳 . !:.:.:.:.:.:八
　　　　　　　　　　　　 Ⅳ:.:.:.:.八_＿　　l:{::´ ￣￣ヽ　 }:.::.:.:ｲ
　　　　　　　　　　　 ' 7ニニニﾆ〕iトﾚ'≧==ｚ＿_㍉!イ´
　　　　　　　　　　 / / 三三二二=､: : : : ＼.　＼i∧: :ﾊ
　　　　　　　　　　　　 / / 　　 `⌒ヽ三二ニ=､: ＼　｀ﾐﾊ: :ﾊ
.　　　　　　　　　　　 , /　　　　　　＼三二ニ=､: :＼　＼} ＼
.　　　　　　　　　　　レ　-‐==‐-　､　　　｀⌒ヽ三二=､　!　ﾊ
　　　　　　　　　 /　　　　　　　＼　　　　　　＼: : ::Ⅳ}　　‘，
　　　　　　　　　　｛　　　　　　　　　 ‘ ，　　　　　≫:.ｲ⌒ヽ　}

　要約しなければ、それはそれは長い長い愚痴に似た言葉を重ねて如何
に自分がやる夫の気持ちが分からずに苦悩し、そしてその中で息子のやる太の
世話に疲れたのか。
12： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:35:48 ID:0zXuMqek0: 　長々と書かれていたがやる夫はある程度の概要を読み終えるとさっさとその
手紙を再び折りたたんで封筒の中にしまい込んだ。

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　　　　　　　　　　　　／／￣￣＼　　　　　　／￣￣＼＼
　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
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　　　　　／　　　　　＼＼＿／／　::::::::::::::::::　＼＼＿／／　　　　　＼
　　　／　　　　　..／￣￣＼　／　　　::｜::　　　＼　／￣￣＼..　　　　　＼
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　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　エエエエエ　　　　　　　　　　　　　 |
　　|　　　　　　　　　　　／￣￣￣￣￣＼　　　　　　　　　　　　 |
　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣　　　　　　　　　　　　　／

　　　　　＿＿＿_
　　　／―　　―＼
　　／　 ●　　　● ＼
　　|　⊂⊃　(_,､_,)　⊂|　　　ねぇ
　　ヽ　　　　　　　i⌒ヽ
　　/　　　　　　　λ　）
13： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:35:59 ID:0zXuMqek0: やる夫の顔色を窺う様に下から覗き込んでいたやる太が小さな声を上げた。

　　　　　＿＿＿_
　　　　／―　　―＼
　　　／　●　　　● ＼　　　　　　お母さん、出て行っちゃったの？
　 /⌒ヽ⊂⊃　(_,､_,)　⊂|/⌒i
　ヽ　　ヽ　　　__　　　ィ’　 /
　　　ヽ　　　　　　　　　　／
　　　　 }　　　　　　　　 /

　　　　　　 ,, -‐‐‐‐‐‐‐-- ､
　　　　／　　　　　　　　　　＼
　　　／　　　　──　　　─‐　＼
　　/ 　　　　( ● )　　　(●)　　';　　　あぁ
　/'　　　　　　　　／　　　＼　　　';
/ 　　　　　　（　　　人　　）　　i
| 　　　　　　　　｀'''''ﾞ´ 　｀'ﾞ´　　　!
'、　　　　　　　　　　　　　　　／
　＼　　　　　　　　　　　　　　　<
　／￣ﾞﾞ'''‐‐‐-----　　　　　　　　＼
14： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:36:11 ID:0zXuMqek0: 　相手は子供である、もう少し物の言い様が有る筈だ。
　にも関わらず、やる夫はやる太に素っ気ない上に断言する言葉を突き放す様に
言い放った。

　　　　　　＿＿
　　　　　／　　　　＼
　　　／　ノ　　ヽ_ 　＼
　　　| /⌒l　　l⌒ヽ　 |
　　　 / 　/ (_,､_)ヽ　ヽ
￣￣（_ ,ノ￣￣￣ヽ_ノ￣￣

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,..イ　　　　 ',
　　　　　　　l　　　　　　　　　　_,,,...イ´ 　 |　　　　 .',
　　　　　　　ヽ、ヽ＿_,,..-t''"´:::::::::::|　　 l　　　　　 .',
　　　　　　　　　　　　|　　ヽ:::::::::::::ノ　　 /　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　ヽ、　　￣　　　／　　　　　　 .',
　　　　　　　　　　　　　｀　　　　　　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　 l
.人　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　 l

　やる太は俯いたまま何も喋らない、やる夫は封筒を持って少しの間考えた後に
息子の横を通り抜けて再び戸棚の中に封印した。
　二度と読み返す事は無いだろうと思いつつも、それを捨てる気にもなれ
ずに、結局見えない場所に封印したのだ。
15： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:36:25 ID:0zXuMqek0: まだ戸惑い、悩み、所在なげにたたずむ息子にやる夫は問うた。

　　　　　　　　　／￣￣￣￣￣￣￣＼
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　/　　　　　　　　_ __ __ノ ,l　:l ヽ、ヽ
　　　　　　/　　　　　　　 fr‐t―‐ｧ　j 　{ｒｧ-ｧ＼
　　　　　/　. 　　　　　　　｀≧--┴'´　　'┴≦´　i
　　　　　|　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　ヽ　l　　　ご飯は食べたか
　　　　 ..|.　　　　　　　　 {　　　　　　ム　　　　}　|
　　　　　|.　　　　　　　　　｀=====＝'⌒＝===ｸ　l
　　　.　　＼.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　／ヽ　　　　　　　　　　　　　　　イ＼
　　　　　／　　　　　　　　　　｀`ｰ- -‐'"´　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼

　　　　　＿＿＿_
　　　　／―　　―＼
　　　／.　・　　　・　 .＼
　　　|⊃　(_,､_,)　⊂⊃　|　　　　　　えっ？
　　　＞　　　　　　　　ィ’
16： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:36:38 ID:0zXuMqek0: とやる太は顔を上げ、少し目が泳いだ後に、

　　　　　　＿＿＿_
　　　　／ノ　　ヽ_＼
　　　／　 ●　　　● ＼
　　　|　⊂⊃　(_,､_,)　⊂|　　　うん、ご飯置いてあったから……
　　　ヽ　　　　　Lﾉ　　ィ’
　ｃ～､ﾉ　　　　　　　 γｰっ
　　乂　　ﾉ　　　　　 i､_ノ’

　　　　／.:￣￣￣￣￣＼
　　／: : :　　　　　　　＼
　／: : : :　　　　　　　　　　＼
／: : : : : :　　　　　　　　　　＼
: : : : : : : :.._　　　　　　　　_　　　　　＼
: : : : : : : ´⌒＼,, ;、､､／⌒｀　　　　 l　　　　　結構だ
: : : : ::;;（　● ）::::ﾉヽ::::::（ ●　）;;:::　　　|
: : : : : : ´"''",　　　　　"''"´　　　　　l
: : : : : : . . （　　　 j　　　）　　　　　／
＼: : : : : : :.｀ｰ-‐'´｀ｰ-‐'′　　　／
／ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : イ＼
: : : : : : : : : :.｀`ｰ- -‐'"´　　　　　＼
: : : : . : : . : : .　　　　　　　　　　＼
17： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:36:50 ID:0zXuMqek0: やる夫は腕時計に目を落とすと、丁度午後十時半である。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　_.. -''''ﾞﾞﾞ´　　　ﾞﾞﾞﾞ'''ｰ,,、
　　　　　　　　　　　　　　_..-'″　　　　　　　　　　　　｀ﾞ'-､、
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀''-、
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　 !　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ
　　　　　.!　　　　　`'ｰ ,,_　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,＿__　　　　　　 !　　　　　もう遅い
　　　　　|　　　　　-.、　　｀''ｰ ..,、　　　　　　 ....ｰｰ''"´　　 ._,-　　　　　　 !
　　　　　l 　　　　广''┬--v-‐．　　　　　　 .'i-----r‐''ﾞ］　　　　　　　　 i!
　　 ,..-'".ｌ　　　　　　ヽ,、.ゝ-'ﾞ _./ 　　　　　　　　ヽ_.ﾞｰ'" .／　　　　　　　　 ,l～　..,,,
　 ´　　　ヽ　　　　　　 .｀ﾞﾞﾞﾞﾞ./ 　　　　　　　　　　ヾﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ　　　　　　　　　 /　　　　ﾞﾞ'-､、
　　　　　　 .＼　　　　　　　│　　　　　　　　　　 l　　　　　　　／
　　　　　　　　.｀'-､,　　　　　ゝ..＿__＿,..-ｰ .＿＿___ノ　　　　　　　 ,..-'´
　　　　　　　　　　　｀''- ..,_ .、,__,＿＿_＿_＿_＿_＿_..,_ .、,__, -'''"

つまり、寝ろと言う事だ。

【つづく】
18： ◆bjgUlPMJcc：2015/08/28(金) 19:37:06 ID:0zXuMqek0: 続けば続きます。
19：名無しのやる夫：2015/08/28(金) 20:29:51 ID:1DvfLAwA0: 乙