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仮投下スレ

1名無しさん:2015/07/15(水) 00:22:03 ID:YFA/rTa20
作品の仮投下はこのスレでお願いします

168正義の在処 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/10(月) 07:02:20 ID:joh5PNzo0
【G-6/映画館内/深夜】
 【衛宮切嗣@Fate/Zero】
 [状態]:健康、僅かな焦り
 [服装]:いつもの黒いスーツ
 [装備]:エルドラのデッキ@selector infected WIXOSS
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0〜2 (確認済み、銃やナイフは無い)
     噛み煙草(現地調達品)
     
 [思考・行動]
基本方針: 手段を問わず繭を追い詰め、願いを叶えさせるか力を奪う
   1: 情報、アイテム収集を優先
   2: 有益な情報や技術を持つ者は確保したい
   3: セイバー、ランサー、言峰とは直接関わりたくない
 [備考]
  ※参戦時期はケイネスを倒し、ランサーと対峙した時です。


支給品説明
【エルドラのデッキ@selector infected WIXOSS】
ちより(ロワ未参戦の)のルリグ エルドラが収納されたカードゲーム『ウィクロス』のカードデッキ。
エルドラ以外のカードは通常はただの紙切れ。エルドラ自身、自由意志を持ち会話が可能。
カードからの脱出や風起こしも可能。セレクターバトルが出来るかどうかは不明。
切嗣から見てそこそこの魔力のようなものは感知できているが、当ロワにおいてどう影響するかは不明。
繭からロワについての説明は殆どされていない模様。黒カードに収納されている間は外の事は解らない。
参戦時期は不明。

169 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/10(月) 07:03:38 ID:joh5PNzo0
投下終了です
物議を醸しだしそうなので一先ずここに投下させていただきました。

170名無しさん:2015/08/10(月) 11:50:04 ID:ZSWBxH/w0
投下乙です
ルリグカードの支給は問題ないと思います
ただ、エルドラの口調ってもっと慇懃というか、中学生のるう子たちにも敬語で話してませんでしたっけ?

171 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/10(月) 13:53:39 ID:jzgIhPI.O
>>170
ご指摘ありがとうございます
修正スレに修正文を投下した後、今深夜に本投下させていただきます

172名無しさん:2015/08/10(月) 17:06:13 ID:1Az6wwSQ0
投下乙です
感想については本投下の際に述べさせていただくとして
支給品説明について、よく分からない部分がありましたので確認させていただいてよろしいでしょうか

>カードからの脱出や風起こしも可能
これはエルドラが自由にカードから出入りして(その際は人型になる?、カードから出た時に攻撃を受ければ死亡する?)
ウィクロスのカードゲームで使えるような能力(カードゲームのようにシグニやアーツを使える?)を行使し、
無条件、ノーリスクで戦闘に参加することができる、ということでしょうか
仮にそれが可能な支給品だとすれば「何かの役に立つかもしれない」どころではないと思いますが
(ちなみに、原作だとエルドラがカードの外に出ることができたのは持ち主の元から去らなければならない時だけだったと思います)

それとも、現段階ではそこまではっきりしておらず
『今後、エルドラの能力をロワ内で使うことが可能になる可能性がありますよ』
(その手段やどれほど制限されるかは、後続の書き手に任される)、ということなのでしょうか

修正中のところすみませんが、氏の支給品説明だけではそのあたり(エルドラをどのように扱えばよいのか)
が分かりにくいように感じましたので、ご意見をお聞かせいただけたらと思います

173 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/10(月) 19:06:03 ID:jzgIhPI.O
>>172
ご意見ありがとうございます
基本的に後続の書き手さん次第のつもりで書きました
戦闘ができるかどうかは不明のままです
描写がまずかったのでその辺訂正します

174 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/10(月) 23:36:41 ID:joh5PNzo0
修正SS投下スレに訂正版を投下しました

175 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:13:45 ID:VTq8bey60
予約分が完成しましたが
SSの内容に ◆WqZH3L6gH6の投下された『正義の在処』と同じく

ロワ内におけるルリグの扱い、ルリグの能力に言及している箇所が存在するため
(また、それらについてより踏み込んだ描写をした箇所があるため)
まずは、こちらに仮投下させていただきます

176シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:14:39 ID:VTq8bey60


簡単には教えない、こんなに好きなことは。
――ないしょなの。

ふわふわドキドキないしょですよ
はじめがかんじん、つんだ、つんだ


◆   ◇   ◆    ◇


――それが悪い事だとは、分かっていた。


桐間紗路(シャロ)は、どこにでもいる庶民の少女だった。
否。
どこにでもいる、貧民の少女だった。

両親を出稼ぎに出して一人暮らしをして、それでもシャロ自身だっていくつものアルバイトを掛け持ちしなければ家計は回らなかったし、
住んでいる家は良く言えば『レトロ』、悪く言えば『ボロ小屋』と形容していい有り様だ。
そんな身の上だけれど、ご町内でも有名な私立のお嬢様学校に通えるようになった。
一生懸命に勉強したら成績トップの特待生として入試に合格して、学費の免除を受けることができたからだ。
がんばったおかげで進学ができた。シャロにはそれが嬉しかった。
新しい学校では、あこがれの先輩もできた。
天々座理世という一学年上の先輩で、大人びてしっかりしていて、しかしたまにお嬢様らしく世間知らずで可愛いところもある、本物の才媛と言っていい人だ。
そして、リゼがアルバイトをしている『ラビットハウス』という喫茶店にちょくちょく顔を出すようになるのも、
そこで暮らしているココアとチノとも仲良くなり、幼なじみの千夜を含めた五人で遊んだり勉強をしたりするようになるのも、そう時間はかからなかった。

しかし、高校に入ってからできた友達は、シャロの家のことを知らなかった。
どころか、お嬢様学校に通っていることだとか、シャロという漫画のお嬢様っぽい名前だとか、シャロの髪の毛に光沢があって縦にカールしていること(べつにただの地毛である)だとか、いわく仕草に気品がある(普通にそれなりに礼儀ただしく振る舞っているだけなのに)とかいったこと見て、
シャロのことを『よほどのお嬢様なのだろう』と思い込んでしまった。

悪いことだとは、分かっていた。
でも、訂正することができなかった。
いつしかシャロは、昔馴染みの千夜をのぞく三人の間で、すっかり『お嬢様のシャロちゃん』になっていた。

――美人で頭も良いなんて!まぶしい!

その褒め言葉には『しかもお嬢様だなんて!』という誤解まで含まれているようで、褒められるたびにドキドキした。

――きっとシャロちゃんは、家ではキャビアとか食べてるんだろうなぁ〜。

そう言われて、心苦しくないと言えばもちろん嘘だった。

でも、今さら貧しい家の子だとは言えなかった。
必死に、自宅の場所を突き止められないように、自宅への帰途を遠回りしたりして隠してきた。
『お嬢さまのシャロちゃん』が、ご町内でもトップクラスに小さくてボロボロの家に暮らしているところなんて、見られたくなかった。
知られたら、幻滅されてしまう。

今になって思えば、いつまでも隠せるはずがなかった。
なんせ、シャロの家の隣には、ココアたちも出入りする千夜の家があるのだから。
ちょうどそのボロ小屋から出てきたところだった。
千夜の家の前にいたリゼとココアとチノに、ばったり。

貧しいことが、ばれた。
それも、ボロボロの実家をばっちりと見られた。

177シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:15:53 ID:VTq8bey60
終わった、と思った。

頭が真っ白になった。
時間が止まった。

いつまでも、止まっていたような気がした。
それはもう、永遠のように。

ずっとずっと、頭が真っ白で。
そして、気が遠くなった。

そして。



『これからあなたたちには、この部屋の外にある世界で殺し合いをしてもらうの。』



次に目が覚めたのは、本当に悪夢のような場所だった。


◆   ◇   ◆    ◇


「フルール・ド・ラパンかぁ。
おしゃれそうな名前だね。なんて意味なの?」
「うさぎの花……ハーブティーを扱ってる、癒しのお店なの。
お茶のことも勉強できるし、クッキーも焼けるし、ティーカップも可愛いし……おすすめのお店かしら」
「すっごい! あたしは甘いモノが好きだけど、ハーブティーとかあんまり飲んだことなかったよ。どんな味がするの?」
「そ、そんなのモノによって種類とか効能とか全然違うわよ。
そうね、甘いお茶だったら、カモミールとかどうかしら。
ジャーマンカモミールだと、リンゴの香りがして、子どもにも飲みやすいわよ」
「あっ。子どもって言ったなぁ〜。シャロさんの方があたしよりも背が低いのに!」
「ちょ、ちょっとそういう意味じゃ……後ろから頭ぺしぺしするのはやめてぇ!」

後ろから軽く頭を叩かれる刺激にびっくりして、両手がつかんでいた白い毛並みをぎゅっと握りしめてしまう。
すると目の前にある『頭』から不機嫌そうな「ぐるる…」という唸り声が聞こえたので、シャロは慌てて手を離した。

「ご、ごめんなさいっ、定春」

唸り声は止んだので、ひとまず安心。
シャロは、紅林遊月と名乗った少女と一緒に、森の中のケモノ道を進んでいた。
より正確に言えば、二人でシャロの『支給品』に乗って移動していた。

178シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:17:05 ID:VTq8bey60
とても軽快に、ケモノ道をかき分けて駆け抜け、四つ足で疾走するのは、熊のように大きな体格をした犬だった。

「ごめんごめん……それにしても定春速いっすねぇ。力持ちだし」
「慣れるのには時間かかったけどね。…………お互いに」

遊月と知り合ったのは、定春とお互いに警戒して冷戦状態になっていた時だった。
どうにかこうして順調に移動するに至ったけど、森の中を抜け出して東の町へと進路を取るまで、実に二時間以上も費やしたのは、
グルグルと機嫌悪そうに唸り声をあげる巨大犬をどうにかなだめて落ち着かせて(二人で食べ物のカードを二回ずつも使って、ドッグフードまでも取り出して)、
それなりの友好関係を築くまでに時間を要したからである。
カードの中に戻しておくことも真剣に考えたけれど、遊月と話してそれは可哀想だということになった。
威嚇してくる巨大な犬は怖かったけれど、それはそれとしてシャロも遊月も、犬を小さなカードの中に押しこめっぱなしにしておくには性格が優しすぎた。
(もしもその生き物が巨大なウサギだったならば、絶対に断固として閉じ込めておくところだったけれど)
さらに言えば、こんな巨大な犬と一緒にいれば、殺し合いに乗った人も襲いかかるのには躊躇するんじゃないかという打算も正直なところあった。

「その……ありがと、ね。遊月ちゃんがいなかったら私、たぶん定春もカードの中に戻すとこ――」
「あっ!」

小さな声でお礼を言いかけた時、後ろに乗っていた遊月が驚いたような声を出した。
振り向くと、遊月も後方の景色を見ている。
後ろにあるのは、地図で言うと緑色をしたF-5の森だ。
これからやっと、緑色から黄緑色で塗られた草原へと突入するあたりのはず。

「どうしたのよ?」

遊月は、引きつった笑顔で言った。

「その……さっき、赤いカードを面白いなーと思って見てたら……落としちゃったみたいで……ちょっと拾ってきていい?」
「ええっ!? 大変じゃないの! すぐに定春を戻して――」

シャロもつられて焦ったけれど、遊月はひらりと定春から飛び降りていた。

「いいよ。落としたところは分かってるから待ってて。定春に先に見つけられたら、カード食べられちゃうからさ」

早口で急ぐようにそう言って、止める間もなくぱたぱたと駆け戻っていく。
その背中は、こんな状況でも飾り気が無く普段のままという感じがして、シャロには羨ましく見えた。

「はぁ……なんだか、あの子を見てると、ココアを思い出すわ。
声も違うように聞こえるのに、何だか声聴くとドキっとするし」

179シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:17:54 ID:VTq8bey60

ココア、と名前を声に出して言ってことで、どんよりと気持ちが曇ってきた。
また、思い出した。
五人ともが、こんなおっかない場所に来てしまったこと。
そして、この場所に連れて来られる直前に、起こってしまったこと。

「ただで『どんなお願いでも叶えてくれる』なら……願ってたのになぁ」

四人が無事なのかはとても心配だし、シャロの独りよがりでなければ、四人もおそらく(特に千夜は)シャロを気にしてくれてはいると思う。
みんな優しい人達だから、殺し合いをするようなことは絶対に無い。

でも、お金持ちだと嘘をついて皆を騙していたシャロのことだ。
リゼたちは、『嘘つき』なシャロのことを信用してくれるだろうか。
みんなとまた会えたら、これまで通りの関係で喜び合えるだろうか。

「ぜんぶ夢なら良かったのに……悪夢から醒めたと思ったら、もっと悪夢だったわよ……」

みんなで殺し合いに呼ばれただけでもぞっとするのに、皆に会いたいのに余計な罪悪感も抱えて行くことになるなんて。
あの時、あんな嘘をつかなければ。隠し通そうとしなければ。
ままらならい自虐に浸りながら、頭をごちんと定春の後ろ頭にくっつけて悶々とする。
……額に犬の白い毛がついてしまったのでやめた。


◆   ◇   ◆   ◇


「あ、遊月ちゃん! 見つかった?」

顔を上げると、まっすぐな黒髪の少女が戻ってくるところだった。
問いかけたシャロは、遊月の右手にすべてのカードが掴まれているのを見つけてほっとする。
しかし、



「うん……それはいいんだけど、あのさ。桐間紗路さん」



すぐに、違和感が襲った。
遊月は、ひどく思いつめたような、怒っているような顔をしていた。
別れた時と、なんだかずいぶん違う表情だ。

180シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:18:43 ID:VTq8bey60

「改めて、聞きたいことができたんだけど」

怒っている――そして、これはシャロの穿ち過ぎかもしれないけれど。
この顔は、なんだかシャロのことを責めるような眼に見える。

「シャロさんにはさ、繭に言われたような、叶えたい願いが、あるの?」

なんで、いきなりそんなことを聞くの。
そう疑問を抱いたのに、その鋭い眼に気圧されたことで、聞き返せなくなった。
さっきまで他愛無い雑談をしていた相手の豹変に、シャロは焦る。言葉が迷子になる。

「べ、べつに私はそんな願いなんて……」

さっき考えたことは、あくまで『ただで願いが叶うなら』の話だった。
そう自分に言い訳して『無いよ』と答えようとしたけれど。
遊月のまっすぐすぎるほどまっすぐな眼光に、虚偽を言ってはならないと問い詰められている気がして、

「しいて言えば、お金持ちになれたらな……なんて。それぐらい、だけど」

まさか『お金持ちだと嘘をついていたのがばれたので、その嘘を無かったことにできれば』なんて言えない。
結果的に、ふんわりした表現で、嘘では無い答え方をした。
すぐに答え方が不味かったらしいと分かった。
それを聞いて、遊月の眉が吊り上がったからだ。

「そんな願いなら、止めた方がいいと思う」
「えっ……?」

震えながら押し出すように、遊月は言った。

「お金持ちになって、どうすんの?
それで人の気を引いたり、自慢したりできるの?
それって、人の命と釣り合うような願いなの?」
「そんな……!」

ほとんど決めつけているような調子の、冷たい断言だった。
悪意あるような言いぐさへの戸惑いと、反射的な怒りが去来する。

181シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:19:39 ID:VTq8bey60
「私は別に自慢したいなんて……貧乏じゃなかったら、もう少し自由だったのかなって思っただけよ!」
「そんなことを、こんな時に考えてたの!?」
「こんな時に考えるわけないでしょ! ここに来る前に思ったことよ!!」
「そんなのっ……!」

売られた喧嘩を、というわけではないが。
謂れのない中傷に対して、分からないままに言い返していた。
それは、そのまま遊月の口撃をヒートアップさせる。

「貧乏でもお金持ちでも、関係ないよ!
貧乏だからって終わるなら、その程度の人間関係ってことじゃん」

投げつけられたトゲが、ぐさりと刺さり、
刺さった力はそのまま、巨大な反発になった。
貧乏だけど、もっと堂々としていたい。
それは紗路のコンプレックスであり、リゼ先輩にあこがれているところだから。

「なんでよっ!! なんで遊月ちゃんに、そんなこと言われなきゃいけないの!?」

そう叫んでしまった時だった。
定春が動いた。
元より、人に懐きにくい感じのする犬ではあった。
それが、シャロと遊月が口論するのを見て『決裂したようなら捨てて行ってもいいか』と判断したのか。
あるいは、『早く出発したい』と考える理由が彼自身にはあったのか。

「ひゃっ!!」

四つ足を力強くのばし、走り始めた。
森を出て、進路は北へ。
つまり、遊月をその場に置き去りにする形で。


◆  ◇   ◆   ◇

182シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:20:16 ID:VTq8bey60

悪いことをした、とシャロは後悔した。

そりゃあ、言われたくないことを言われたのはシャロの方だけれど。
でも、あんな言い方では、『こんな命懸けの場所にいるのに、あの繭という怖いヒトにお金持ちにしてほしいなぁとか夢見てました』と誤解されたかもしれないし。
だから遊月ちゃんも、あんなに怒った顔をしたのかもしれないし。
何より、喧嘩したからと言って、置きざりにするような形で定春を走らせてしまった。それはシャロが悪い。

「大丈夫よね……すぐ近くには、ラビットハウスがあったし。
ラビットハウスなら……先輩たちなら、こんな喧嘩になったりしないし」

今からでも定春をなだめるなり、ドッグフードをあげるなりして、遊月の向かいそうな方角――南東の市街地へと向かってもらうべきだろうか。
そう思いなおそうとしたけれど、それは『ラビットハウスに近づく』ということも意味していた
もしあの子の口から『シャロと喧嘩になってしまった』とかリゼたちに伝わってたら嫌だな、と。
ただでさえ重たく感じていた再会が、よりいっそう重みを増す。
もし、うそつきの悪い子だと思われたら、どうしよう。



「…………そうだ。千夜を、探さなきゃ」



気が付けば、そんなことを呟いていた。

そう、思いついてしまえば、それが一番いい。
千夜を先に探そう。
シャロの幼なじみで、あまりに天然すぎるところがあるから、元から一番心配だったヤツだし。
それに、元から実家の貧乏ぶりを知っていて、シャロが隠していることを気にかけてくれていた。
千夜がそばにいてくれたら、リゼ先輩たちともしっかり向き合える。
千夜を探して守らなきゃいけないし、千夜に相談に乗って欲しい。
『千夜もラビットハウスにいるかもしれない』という可能性からは目を逸らし、シャロは定春が颯爽と走るに任せることにした。

こうして桐間紗路は、ラビットハウスに向かわなかった。

【E-4/F-5との境界付近の道路上/黎明】

【桐間紗路@ご注文はうさぎですか?】
 [状態]:健康、後悔
 [服装]:普段着
 [装備]:定春(乗用中)@銀魂
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0〜2 (確認済み)
 [思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。みんなと合流して、謝る
   1:千夜を探す。
   2:1の後、ラビットハウスに向かいリゼたちと合流して謝る。
   3:遊月ちゃんには悪いことをした…。
 [備考]
  ※参戦時期は7話、リゼたちに自宅から出てくるところを見られた時点です。


◆   ◇   ◆    ◇

183シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:20:56 ID:VTq8bey60

それが悪いことだとは、分かっていた。


痛いほど、分かっていた。


悪いことをした、と遊月は後悔した。
とても、ひどく、罪悪感をもって後悔した。

桐間紗路の『願い』をのぞき見するという低劣な真似をして、
しかもその『願い』を責めたててしまった。

紅林遊月にもまた、どうしても叶えたい願いごとがある。
彼女はこの殺し合いに呼ばれるまでの間、その願いごとを叶えるために『危険な遊戯(セレクターバトル)』というものをしていた。

バトルのルールは単純明快だ。
ウィクロスというカードゲームを手に入れ、『ルリグ』という特殊な『願いを叶える少女のカード』を相方として勝ち抜けばいい。
戦って勝ち抜いて、いつしかルリグに『願いを叶えるだけの資格を持った』と判断されれば、『夢限少女』という存在になれる。
『夢限少女になる』とは、『願いを叶えられる自分になれる』ということ。
ただし、三回負けてしまえばその時点で失格となる。夢限少女にはなれなくなる。

遊月は相方のルリグ――花代(ハナヨ)からそう説明を受けたし、
そんな奇跡があるのなら飛びつくしかないと、セレクターバトルへ参加した。

しかし、戦いを続けていくにつれて、知ることとなってしまった。
花代も黙っていたが、代償の伴わない奇跡なんて有り得ないことを。

もし三回負けてしまえば、願いは叶わなくなる――絶対に、叶わなくなる。
失格となったら、願いは反転する。
『友達がほしい』という願いを持った少女は、一生友達ができない身体になる。
『お金持ちになりたい』という願いを持った少女は、一生お金とは縁のない極貧生活という巡りあわせが返ってくる。
『好きな人と結ばれて幸せに暮らしたい』と願ったとしたら、好きな人に嫌われるか、あるいは好きな人を永遠に……。

それを知って、遊月は嘆いた。騙されたと思ったし、花代を責めた。
しかし、それでも止まれなかった。
友達だった小湊るう子は、願いが反転することを知ったら戦うことを辞めた。
遊月にも、辞めるように説得をされた。
でも遊月は、辞退することをしなかった。
他の願いを持った少女たちを、『三回目の敗北』という処刑台に送ることになったとしても、勝ち続けることを選んだ。

184シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:21:43 ID:VTq8bey60
そうまでしなければ、叶わない願いだったからだ。
『友達がほしい』とか『お金持ちになりたい』とか『普通に恋をして好きな人と結ばれたい』なんて願いだったら、本人のがんばりしだいで叶えることもできただろう。
仮に叶わなかったとしても、もしかしたら努力しだいで実現していた可能性はゼロじゃなかった。
けれど、遊月の願いは、普通にかんばっても叶わない。
違う。
最初から遊月には、一生懸命にがんばることさえも許されない。
もし遊月が『私の願いはこういうことです』と口に出したら、社会の全てからお前は悪い女の子だと糾弾され、弾かれる。
そんな願いだった。
奇跡があるとしたら、それにすがりつかなければ耐えられなかった。

だから、初対面の繭という怪しげな少女から『どんな願いでも叶う』と言われた時はドキリとした。
まるで、セレクターバトルのことだとか、遊月に願いがあることを、見抜かれたようで。
まるで、『この戦いは、セレクターバトルの代わりとなる、最後のチャンスなんだぞ』と言われたみたいで。

けれど、願いを叶えるために人を殺せるかと言われたら話は別だ。

遊月はたしかにちょっと人道に外れた願いを抱えているけれど、それでも、人を傷つけることにも本当なら罪悪感を覚えるような、中学二年生の女の子に過ぎない。
ましてこの場には――道をたがえたとはいえ、大切な友人だった小湊るう子もいるし、
セレクターバトルに参加した少女たちだって、願いは異なれど切実な望みを抱いて集まった子ばかりだった。
殺し合いに呼ばれた人たちだって、ここで死ぬわけにはいかないとか、そんな事情があるはずだ。
カードバトルで勝ち抜くことはできても、この手を汚して命を奪い取るようなことはできない。
何より、人を殺した手で『あの人』に触れて、何食わぬ顔で『あの人』に抱きしめられるのは、怖かった。

けれど、『この戦いに勝ち残らなければ、願いは叶わないんじゃないか』という嫌な予感は消えなかった。
人を殺すことで叶えたくはない願いだったけれど、
同時に、あっさりと諦めていい願いでも、なかった。
それは、とてもささやかで小さな願いだけれど、
紅林遊月という少女の、人生に関わることだったのだから。

諦めるしかなかった。
でも、諦めていいのかと、『願い』は絶えず遊月の胸を圧迫する。
このままじゃ叶わない、そうなったらお前は幸せになれないと。
頭では分かっているのに、感情がジクジクと胸を刺す。
一度にひとつ以上のことを背負えるほど、遊月は器用には動けなかった。
シャロと他愛ない談笑をしていても、その会話を楽しめているのかが分からないぐらいだった。
このままでは、この恐ろしい場所で生きていけるのか、ひどく心もとなかった。

だから、どうしても諦められない願いを、この場では封印するために、
遊月は、とても不本意かつシャロに対してひどく身勝手なことに。
その支給品を使うことにした。
カードを落とした振りをして少し遠くまで離れ、そこで私服のポケットに入れていた『それ』を取り出す。

185シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:22:35 ID:VTq8bey60



「ピルルク……あんたの『ピーピング・アナライズ』。使わせてもらう」



黒いカードから出てきたのは、青い少女の絵が描かれたカードと、一束のカードデッキだった。
『ルリグ』というカードの一人である少女、青い髪に青い瞳。そして青い服。
名前は、ピルルク。遊月も大嫌いな卑劣プレイヤー、蒼井晶が使っていた、本当なら絶対に頼りたくなかった大嫌いなカードだ。
その少女、ピルルクは感情をみせない声で問いかける。

「いいの? あんなにこのアーツを毛嫌いしていたクセに」
「きらいだよ!! やっちゃいけないことだよ!」

このカードのアーツ『ピーピング・アナライズ』は、人間の心を読む。
相手が、どんな願いを以って戦いに臨んでいるかを曝け出してしまう。
本当なら、それはセレクターバトルの対戦中に、カードの持つ技として発動する能力だ。
一般人相手には使えない、ウィクロスのバトルフィールドでしか使えない力だ。
でも、シャロと出会う前に、ピルルクから嫌々ながら聞き出した限りだと、『使える』。
カードバトルで、アーツを使うために何ターンかエナチャージしなければならないように、
『何時間か力をためなければいけない』という制限はついているけれど、使える。

「でも、このままじゃ、いつかもっとひどいことを考えそうで……シャロさんをそれに巻き込みそうで、怖いんだよ!」

人を殺すなんて考えたくはないけれど、
もし遊月がこんな風にガタガタになって、それでシャロの足を引っ張り、悪いこと、致命的なことが起こったとすれば。
そんなのは絶対にいけない。
かといって、『願い』のことをルリグの花代と友達のるう子を除いて、誰にも打ち明けてこなかった遊月に、『こんな願いのことで困ってるんです』と相談できるわけもない。

最終的に遊月が出した結論は、『桐間紗路の心を読むことで紗路が抱いている『願い』を知り、『だから、そんな願いを踏みにじるのは止めよう』と自分自身に釘を刺す』というものだった。
ひどく勝手だ。心を読まれるシャロからすれば、たまったものじゃない。
一度、同じように心を読まれて傷だらけにされたことがあるから、その重さは嫌というほど知っていた。
でも、逆に、自分勝手だとしても、それだけ酷いことをすれば。
それ以上の酷いこと――『死なせる』とかに至る前に、絶対にブレーキがかかる。
罪の重さをしれば、それ以上に酷いことをしようなんて思えなくなるはず。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいと。
彼女には聞こえないのだから、言っても意味の無い謝罪を言いかけて、止めて。
ピルルクから、彼女の願いを聞き出した。
それが、どんな結果を生むかなんて予想もせずに。

ピルルクにこっそりと見させた『シャロ』を、言ってもらった。

186シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:23:55 ID:VTq8bey60
『家がお金持ちだと嘘をついた。貧乏だとばれたら、がっかりされると思ったから』

たぶん死にたくない、とか大切な人を死なせたくない、みたいな願いだろうなと思っていた。
それ以外の、どんな願いであれ、尊重するべきだと思っていた。
自分の願いだって、人から見たらとても不健全なことなのだから。
しかし、その願いは。

『そしたら、そのウソが友達と好きな先輩にばれた。みんなにボロ小屋みたいな家を見られた』

それが『恋愛』に関する願いであることも、予想していなかったわけではなかった。
たとえば好きな人もここにいて、その人を喪いたくないとか。
だけど、その願いは。

『好きな人に、嫌われた』



その願いは、『嫌われるかもしれない』というものだった。



――「紅林遊月は、双子の弟である紅林香月に恋をしている。

――それは許されないことで、隠しているから、香月は遊月のことを訝しんでいる。

――このままだと、香月に嫌われる。他の女に、香月を取られるかもしれない。

――紅林遊月の願いは、紅林香月の恋人になること。

『恥ずかしい。絶対に幻滅された』

恥ずかしい?

幻滅される?

嫌われる?

自分のついた嘘がもとで、そうなったのに?

相手も笑って許してくれるかもしれない嘘ひとつが、そんなに恥ずかしい?
実の弟を好きになることよりも?
実の弟に、下心をもって接するよりも?

187シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:24:38 ID:VTq8bey60

『あこがれの先輩に嫌われた。……なかったことにしたい』

あこがれの先輩。
それは、何の負い目もなく好きになれる人なのだろう。
自力で、ちょっと勇気を出して向かい合えば、嫌われずに済むことで。
それでも嫌われてしまうようなら、それまでの関係だったというだけだろう。

遊月の願いはどんなにがんばっても叶わない。
違う。遊月には最初から、がんばることさえも許されない。
遊月の顔が、かっと熱くなった。
平静な顔をして、シャロと話をするために、何度も深呼吸をしてから彼女の元に戻った。

だけど。
その時点では、『そんな願いのためにあんな誘惑に惑わされるなら、止めよう』というおせっかいの方が大きかった。
少なくとも、勝手にのぞき見した『願い』に勝手にキレて、くだらないと断じるような下劣で悪趣味な人間にはなりたくなかった。
桐間紗路にとっては切実なことなんだ。己にそう言い聞かせながら、戻った。

だけれど。

「お金持ちになれたらな……なんて」

お金さえあれば、好きな人に嫌われずに済んで、
お金さえあれば、好きな人といっしょにいられる。
シャロがそこまで意図しての発言では無かったとしても、
遊月の耳には、そう聞こえた。

陳腐な例えだけれど、
頭で『プツン』という音がした。

そこから先は、感情の赴くままに言葉を発していた。

◆   ◇   ◆    ◇


「謝らなきゃ……私、すっごい理不尽なヤツじゃん……」

セレクターでもない、普通の女の子を傷つけてしまった。
その罪を後悔しながら、遊月は歩く。
シャロが当初の目的地には向かわなかったことを知らず、市街地の建物が見える方へと。

「大丈夫だよね……定春もいるから、何かあっても逃げられるはずだし……。
私なんかと一緒にいるより、安全だよね……?」

188シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:25:12 ID:VTq8bey60
遊月は、まだ気づいていない。

シャロから、この場所にいると説明されていた四人。
保登心愛と、香風智乃と、宇治松千夜と、天々座理世。
シャロにとっての『好きな先輩』とは、その中の天々座理世であること。
紅林遊月と道をたがえた結果として、シャロは彼女たちに会えそうな『ラビットハウス』に向かわなくなったということを。

まだ気付かずに、市街地を目指す。

【G-6/F-5との境界付近、市街地の近く/黎明】

【紅林遊月@selector infected WIXOSS】
 [状態]:健康、後悔
 [服装]:普段着
 [装備]:ブルーアプリ(ピルルクのカードデッキ)@selector infected WIXOSS
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0〜2 (確認済み)
 [思考・行動]
基本方針:叶えたい願いはあるけれど、殺し合いはしたくない
   1:シャロを探し、謝る。
   2:るう子には会いたいけど、友達をやめたこともあるので分からない…。
 [備考]
  ※ピルルクの「ピーピング・アナライズ」は(何らかの魔力供給を受けない限り)チャ  ージするのに3時間かかります


【定春@銀魂】
桐間紗路に支給。
万屋で飼われている身長170cmの超大型の犬。
正体は天人襲来後「たーみなる」建造のために取り壊された神社にあった「龍穴」と呼ばれる場所を守護する狛神で、神社の巫女の阿音・百音の経済的理由により捨てられたところを神楽に拾われた。
当初は神楽にしか懐いていない(神楽以外の人物には牙をむいて襲いかかるほどの)猛犬ぶりだったが、「定春編(原作71〜73訓、アニメ45話)」で狛神に変身して暴走したところを止めてもらった際に銀時達への恩義を感じたのか、賢くなり懐いてきた。
「金魂編(アニメ253話〜256話)」では、銀時をはじめとした神楽以外のメンバーにも懐いていることがはっきりと明らかになり、
人に襲いかかるシーンも戦闘だったり神楽の命令だったりスキンシップだったりをのぞけば減少しつつある。
ただ、それでも人見知りが激しいところ自体は治っていないようで、神楽いわく知らない人が家にくるとやたらと吠えるらしい。
殺し合いの状況はよく分かっていないが、所有者から離れてはいけないという制限はぼんやりと理解しているらしく(それが無ければ勝手に神楽たちを探しに走り出していると思われる)、会場のどこかにいる万屋メンバーの元に帰ることを希望している。

189シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:25:47 ID:VTq8bey60

【ブルーアプリ(ピルルクのカードデッキ)@selector infected WIXOSS】
紅林遊月に支給。
蒼井晶のアニメ一期でのルリグ ピルルクが収納されたカードゲーム『ウィクロス』のカードデッキ。
エルドラと同じくロワに関する説明はあまり受けていないようだが、人間に作用するアーツ『ピーピング・アナライズ(後述)』を使用できることは理解している模様。

※ピーピング・アナライズ
ピルルク固有のアーツにして、蒼井晶の十八番である戦法。
またルリグが使える能力の中では、アニメで唯一確認されている、『(ゲーム中での効果だけでなく)現実のプレイヤーへも攻撃(精神攻撃だが)をすることができるアーツ』でもある。
それは、ピーピング・アナライズを受けた人物(対象1人)は、その心に持っている『願い』をつまびらかに覗き見られてしまうというもの。
ただし、彼女と対戦した時の小湊るう子のように、相手が「何の願いも無く、ただ戦うためだけに戦っている」ような時は心が読めなくなる。
本ロワではカードゲームでエナコストを溜めるのに必要な1ターンを現実の時間として見なし、1時間で1コストが溜まるものとし、3コストを消費することで(つまり3時間に一度だけ使用できるという条件で)『ピーピング・アナライズ』を発動できるようになっている。
また、ルリグカード自体も魔力を持っているために、参加者や支給品による魔力(もしくはそれに類するエネルギーの)供給を受けることができれば、エナを溜める手段もこの限りではないかもしれない。
他のルリグカードもコストや魔力しだいではこの会場で持ち技を使えるのかどうか。
それともピルルクのピーピング・アナライズだけが(先述のとおり、カードバトルだけでなく現実の人間にも効果を及ぼせるからこそ)限定的に使えるものなのかは現時点では不明。

190シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:30:51 ID:VTq8bey60
投下終了です

エルドラがロワ内で能力が使えるかどうか分からないと書かれた直後ですのに、
ピルルクに(アニメでも対人用の能力だったとはいえ)能力を使わせる描写をしてしまいました

いちおう「ピーピング・アナライズは原作でも、人間相手に作用するアーツだったからこそ使えただけであり
他のアーツは使えないかもしれない」と理由づけはしましたが
問題がありそうでしたらご意見ご指摘をお願いします

(バンバン心を読めるよなら強すぎるかなぁと考えたこともあり、
三時間に一度(チャージする必要がある)という制限もつけてしまいました)

問題が無いようでしたら、明日か明後日に本投下したいと思っています

191シャロと殺意なき悪意 ◆7fqukHNUPM:2015/08/11(火) 16:33:26 ID:VTq8bey60
すみません、遊月の状態表に書き忘れがありました

※参戦時期は「selector infected WIXOSS」の8話、夢幻少女になる以前です

ということでひとつ…

192 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 04:55:59 ID:Nc7Ok3P60
内容は変更してしまいましたが、完成したので仮投下します。

193交わらなかった線 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 04:59:05 ID:Nc7Ok3P60

 掬いあげた土塊が宮永咲の遺体の上に被せられる。
 青のカードから出したペットボトルの水で汚れた両手を洗浄する。
 そしてるう子は両手を合わせ咲の冥福を祈った。
 遺体に土を被せ、両手を合わせるだけの簡単な弔い。
 心の片隅には近くにいるかも知れない殺人者からさっさと逃げるべきだという危機感はあったが
 それでも命の恩人である咲の弔いだけはやっておきたかった欲求が勝った。
 いま彼女の横には黒い乗り物が止まっている。所持した黒のカードから出した支給品であった。
 埋葬中に危険人物が来なかった1つの幸運にるう子は安堵する。
 埋葬を最後まで済ませることができたのだから。
 亡き咲に対し感謝の意を伝えようとした瞬間、、風が吹いたような音をるう子聴いた。
 るう子は口をつぐみ、感覚を研ぎ澄ませ、不吉さのようなものを感じ取ると乗り物に手を触れる――。

□ ■ □ ■ □ ■ 
□ ■ □ ■ □ ■ 


 俊敏で規則正しい動きで、金髪の白いライダースーツの女は神社へ足を運んだ。
 そして時折思い出すように定期的に右手で手刀を作り横にあるいは縦に振る。
 その動きは人に当たれば相応のダメージを与えると思える迫力があった。

――……うん確認

 彼女の表情は変わらず、代わりに眼差しは機嫌よく輝いた。左手にはカードの束が握られている
 カードの束を手にする前と後とではキレが……格段にとまでは言わないが、良くはなっていた。
 移動速度も上昇しているような気さえする。支給品に武器はなかったが超常の力を持つアイテムを入手できたことに
 女――ヴァローナは静かに感激した。

 彼女の目的は参加者と接触し、敵意がなければ情報収集と支給品確認。
 もし拒み、それでいて有用な支給品を持っていれば強奪する腹積もりだった。
 敵意があれば素手で太刀打ちできそうなら戦闘する事もやぶさかではない。
 その過程で相手が死んでしまっても強ければ構わない。

 そう彼女はどちらかと言えばゲームに乗り気だった。
 ヴァローナは殺人快楽者ではない。
 人を倒すことも殺すことも好きではなく、脆くないと認識出来るだけの強者を探し、打ち倒すのが彼女の最大の欲望であった。
 彼女は確認したいだけだ、自らも含め人間は脆いのかどうかを。
 そうし続けることで渇きとも言える心地悪い違和感が和らぐような気がするから。
 その欲求ゆえに、そして父親がギャングである出自ゆえに彼女は幼い頃から殺し屋紛いの仕事に携わって来た彼女に、
 今参加させられているゲームに対する強い忌避感を抱くはずはなかった。
 仕事の関係上敵対した静雄達との戦いの最中に攫われ、非戦闘員としか思えない子供を含めた殺人ゲームの強要をする繭に怒りはある。
 弱者をなぶったり、壊したりするのはどうしても気が進まないから。
 だが驚嘆すら覚える超常を見せつけた繭に対し、歯向かう気までは今のヴァローナにはない。


「っ!?」


 微かだが、エンジン音らしきものが聞こえる。ヴァローナは足を速めた。

194交わらなかった線 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 05:01:24 ID:Nc7Ok3P60

 森を抜け、彼女は神社の前に立った。
 そこにはタイヤ跡や不自然な土の盛り上がりはあったものの、参加者の姿はない。
 タイヤ跡をたどり先の森の方へ入ったが、参加者の姿は見当たらない。
 彼女は神社前に戻り思わず嘆息する。
 真っ暗闇に覆われた山の中、またもや彼女の手刀が空を切った。



□ ■ □ ■ □ ■ 
□ ■ □ ■ □ ■ 


――ほんとは会って話をした方が良かったかも知れない。でも……


 やけに低いエンジン音と微妙にサイズの合わないヘルメット。
 それらに少々困惑しながらもるう子はスクーターを走らせる。
 ぶっつけ本番だったが説明書を読んだこともあり、るう子は支給品のスクーターを扱えつつあった。。
 るう子は近くに誰の気配もないことに気づくと、スクーターを止め黒のカードと懐から計2枚のカードを取り出す。
 1枚は宮永咲の絵、もう1枚は咲の支給品で顎鬚の生えた大男の絵が書かれたカードであった。
 生きたカードであるルリグと深く関わっていたるう子には、それが参加者ではない別の人の成れの果てに思える。
 ゲーム開始前、繭は死んだ参加者の魂は白のカードに閉じ込められると言っていたのをるう子は思い出していた。
 
「誰だかわからないけど、あなたもいつか……」

 宮永咲の死を前にしてもるう子の志は揺るがない。
 むしろ2枚のカードを前にしてやる気を増したぐらいだ。
 

――さっきの人とは会う勇気はなかったけど、あなたとは……

 スクーターの座席に座り、ハンドルを握り走らせる。
 道路を僅かな光を照らして、それを頼りに目的地へ向かう。
 舞台の南西の市街地へ。
 殺し合いを阻止する手立てを探るために。



□ ■ □ ■ □ ■ 
□ ■ □ ■ □ ■ 


 盛り上がった土の下にはヴァローナより数歳年下と思わしき少女の遺体があった。
 状態からして直後ではないと推測できる。疵からして下手人は銃を持っている、うまく強奪できればと彼女は考えた。


「……その、あの人をそのままにしておくんですか?」


 手にしたカードから少女の静かなる問いがかけられた、
 カードには緑の長髪を極端に逆立たせた細身の少女の姿があった。
 名は緑子。生きたカードルリグの1人でヴァローナの支給品の1つ。
 ヴァローナの身体能力を若干ながら上昇させているのは緑子の力アーツの『奇々怪々』の力ゆえ。
 本来はルリグの力の大半はウィクロスというカードゲームの中でのみ発現されるもの。
 だがこのゲームに置いてはある意味創造主の繭の力もあり、事情が多少異なっているようだった。

195交わらなかった線 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 05:04:17 ID:Nc7Ok3P60

ヴァローナは遺体を見つめつつ呟く、

「……土を被せる?」
「……」

 少々怯えのような色をにじませ緑子は頷いた。

「……肯定します」

ヴァローナは静かに返答するや、手早く遺体に土を被せた。
緑子からはまだヴァローナにとって必要最低限の事しか聞いていない。
いくら力に憧れがあるといっても、そう容易に受け入れられるほど柔軟でもない。
別段打算的ではないと思っているものの、機嫌を損ね非協力的になっても困ると直感し受け入れる。
殺害したターゲットにそういうことをしたことはなかったなと思いつつ、ヴァローナは次のプランを練った。


【E-3/道路/一日目 深夜】
 【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
 [状態]:健康、スクーター運転中
 [服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻
 [装備]:黒のヘルメット着用
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
     黒カード:黒のスクーター@現実、チタン鉱製の腹巻@キルラキル
          ライダー(征服王イスカンダル)のカード
          不明支給品0〜1枚、宮永咲の不明支給品0〜1枚 (確認済)
     宮永咲の魂カード
 
 [思考・行動]
基本方針: 誰かを犠牲にして願いを叶えたくない。繭の思惑が知りたい。
   1: 最低限の警戒を忘れず、西の市街地へと向かい協力者を探す。
   2: 浦添伊緒奈(ウリス?)、紅林遊月(花代さん?)、晶さんのことが気になる
   3: 魂のカードを見つけたら回収する。出来れば解放もしたい。
 [備考]
※参戦時期は二期の8話から10話にかけての間です



【F-4/森/一日目 深夜】
 【ヴァローナ@デュラララ!!】
 [状態]:健康、『アーツ 奇々怪々』により若干だが身体能力上昇中
 [服装]:白のライダースーツ
 [装備]:手に緑子のカードデッキ
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS
黒カード:不明支給品0〜2枚(武器と判断できるものはない)
 [思考・行動]
基本方針: 武器を集めた後、強者と戦いながら生き残りを目指す。優勝とかは深く考えない。
   1: 緑子から情報を収集した後、武器になりそうなものを探す。
   2:強そうな参加者がいれば戦って倒したい。特に静雄や黒ヘルメット(セルティ)。
   3:弱者はなるべく手を掛けたくない。
 [備考]
※参戦時期はデュラララ!!×2 承 12話で静雄をナイフで刺す直前です。

196交わらなかった線 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 05:05:35 ID:Nc7Ok3P60
・支給品説明

【黒のスクーター】
小湊るう子に支給。
ヘルメット付きで、照明とエンジン音に多少の改造が施されている原付きバイクの一種。
トゥデイっぽい。照明はかなり細かい調整が効き、エンジン音も無音に近いとまではいかないが静か。
最高速度は時速60キロまで。説明書付き。


【ライダー(征服王イスカンダル)の魂カード】
宮永咲に支給。
当ロワ未参戦のサーヴァント、ライダー『征服王イスカンダル』の魂が封じられたカード。
ルリグと違って意思の疎通や行動はできないが、高い魔力は感じられる。
関連する宝具があれば何らかの変化はあるかも知れない。今のところ何らかの効果は見当たらない。


【グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS】
ヴァローナに支給。
植村一衣(ロワ未参戦)のルリグ 緑子が収納されたカードゲーム『ウィクロス』のカードデッキ。
外見は逆立った緑の髪の毛をした露出度の高いボーイッシュな衣装と雰囲気のした少女。物静かな性格。
ロワの説明をどれだけされているかは不明。
本来ならカードゲーム内のみで使用できるアーツ『奇々怪々』が使用可能。
他の能力が使えるかは不明。

※アーツ『奇々怪々』について
本来ならカードゲーム内においてシグ二(将棋で言う王将以外の駒のようなもの)を複数強化するのみだが。
当ロワにおいては黒カードから出してカードデッキを手に所持した場合にのみ、身体能力を若干上昇させる効果がある。
デッキを落としたり、カードを損傷させてしまうと効果は失われる。
元が元だけにエナコストはないが、もし別のアーツを使ってエナコストを消費した場合、
回復するまで奇々怪々は使用できない。
エナコストの回復は通常1コストにつき1時間。何らかの要因でエナコストが補充されればその限りではない。

197 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 05:08:23 ID:Nc7Ok3P60
投下終了
ルリグのカードのアーツに問題があった場合修正いたします
その場合修正は今夜。本投下は次の日の明朝になると思います

198名無しさん:2015/08/19(水) 05:52:24 ID:ARrf6zZQ0
仮投下乙です

カードの関しては問題ないと思いますが、>>194やるう子の状態表で「南西の市街地」、「西の市街地」とありますが、正しくは「南東の市街地」、「東の市街地」だと思います

199 ◆WqZH3L6gH6:2015/08/19(水) 16:54:51 ID:Nc7Ok3P60
>>198
ご指摘ありがとうございます
その辺訂正して10時前に本投下します

200 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:16:51 ID:7zrSSusw0
不安なので一旦、仮投下させていただきます。

201 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:17:35 ID:7zrSSusw0

 国立音ノ木坂学院。
 穂乃果たち、スクールアイドル『μ'』sの活躍により廃校を免れた学校である。

「ここが私が生徒会長を務める音ノ木坂学院です!」

 ランサーはその話をここにくる道中で何度も聞いた。
 しかし、穂乃果は熱心に何度でも話す。

「そうか、穂乃果はこの音ノ木坂が大好きなのだな」
「はい! 大事な皆で守った学校ですから!! 今から隅から隅まで学院内を案内しますね!!」
「いや、今はそんなことをしている場合ではない」
「ええー!!」

 ぷぅと頬を膨らませ、心底残念そうな表情を浮かべる穂乃果。

「……でもでも、私は学院内を知り尽くしてるんだよ!!
 どこに何があるかは知っておいて損はないよ!」
「……確かにそれは一理ある」
「だよねだよね!」

 しかし、ここは穂乃果のホームステージ。
 学校に詳しくなければ、生徒会長は務まらないと親友の園田海未に言われたことを思い出した。
  
「じゃあ、行こう!」

 そして、軽快にスキップをしながら穂乃果は駆け出して行った。
 しかし、ランサーは警戒を怠らない。
 その表情はさながら戦場立ったときとほぼ同じ。
 セイバーが外道に堕ちたというならいつ奇襲を仕掛けてやもしれない。

 ――無駄の無い見事な構え、俺以上……なのだろうな。
 ――しかし、騎士王……以上じゃねえ

 ――輝く貌(ディルムッド・オディナ)は騎士王(アルトリア・ペンドラゴン)には勝てねぇ


 先程の本部の言葉がランサーの頭の中を巡る。
 あの時、穂乃果がいなれば、自分はあの男に勝てたのだろうか?
 騎士として、弱き者たちをセイバーやキャスターから守護れるのか?
 しかし、そんなこととは裏腹に穂乃果は喜々として学校を案内する。
 
 グラウンドも。
 中庭も。
 弓道場も。
 講堂も。
 生徒会室も。
 図書室も。
 体育館も。
 屋上も。
 アイドル研究会の部室も。
 
 どこもかしこも一年半通い続けた穂乃果が大好きな学校そのままであった。
 ここにあること以外は全く違和感がないほど完全に音ノ木坂学院だった。
 しかし、今の穂乃果にとってはそんなことはどうだってよかった。
 そして、特にイベントもないまま最後に穂乃果のお気に入りの場所に向かった。

202 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:18:22 ID:7zrSSusw0
「で、ここがアルパカの……?」

 いつもはアルパカがいる小屋だった。
 だが、そこにいたのはアルパカではなかった。
 
 その代わりに……アルパカの小屋を背にその男は立っていた。
 アルパカの小屋があっては背後からの奇襲はできない。


「俺の忠告を無視したからには……騎士王と戦って死ぬ覚悟は出来ているのか?」
 

 そこには王の財宝の鍵剣を構えた―ー本部以蔵が立っていた。
 

 ◆ ◇ ◆


「―――俺がディルムつっあんを追わねばならぬ」


 気絶から目覚めた直後の一言はそれであった。

 駅構内。
 そこに千夜と本部を抱えたヴィヴィオはやってきた。
 そこのベンチにて千夜は肉体・精神から疲労感から眠気が襲ってきた。

「あまり無理をしないほうが……」
「でも……ランサーさんと穂乃果さんがいない間にこのおじさんが起きたら……」
「そしたら、私が何とかするから!」
「……わかったわ、じゃあ一時間だけ眠らせて……」

 そういうと、千夜は眠りについた。
 その顔は疲れ半分不安半分……そういった感じである。
 
 その数分後。
 本部は目覚めた。
 
「……おじさん?」
「ディルムつっあんは……いや、名簿にある名前で呼ぶならランサーと言っておくべきか。
 ……今のランサーじゃ、アーサー王に……セイバーには勝てねぇ。
 だからこそ、仲間(とも)として騎士王の魔手から俺が守護らねばならぬ」
(このおじさんとランサーさんは友達だったの……?)

 一先ず、ヴィヴィオと本部は情報を交換する。
 その際にヴィヴィオから本部はランサーがどこに行ったかを聞いた。
 苦渋をなめるような表情で本部は聞き続ける。そして……

「急がねばならぬ」
「え?」

 本部が鍵剣を振るう。
 すると空間に歪みが生じ、何かが出てきた。

203 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:19:21 ID:7zrSSusw0

「本部さん、それは……?」

 ヴィヴィオの知りうる魔法とは全く違う原理。
 次元転移や召喚魔法とは全く違うということだけはわかった。
 出てきたのは原動機付き自転車。
 後輪カバーに『銀』という彫り物がある原動機付き自転車。通称『原付』。
 
「お嬢ちゃん、これは原動機付き自転車って奴だ。
 起源は、自転車に小型のガソリンエンジンを付けたモペッドと呼ばれる乗り物というものだ。
 モペッドは本来『原動機が付いた自転車』あるいは『ペダルでこげるオートバイ』のことだが……、
 便宜上、日本以外の国ではペダルの有無にかかわらず小排気量のオートバイ全般がモペッドと呼んでいる。
 だが、この原動機付き自転車がわけが違う。なんせ江戸時代に作られたものなんだからよぉ〜」

 原付について長々と解説する本部。
 それにヴィヴィオは話半分くらいしか理解できなかった。
 ヴィヴィオにとって聞きなれない単語があまりにも多すぎたのだ。
 しかし、どちらかといえば『原付』よりも本部の持っている『鍵剣』のほうが気になった。
 
「行ってくる」

 本部は原付に跨り、エンジンをかける。
 原付に付属していたヘルメットを被り、原付をかっ飛ばす。
 法定速度完全オーバーで限界速度ギリギリのハイスピードである。


 ◆ ◇ ◆


「俺の忠告を無視したからに……騎士王と戦って死ぬ覚悟は出来ているのか?」


 ただならぬ殺気。
 それは穂乃果の素人目にでもはっきりわかるくらいだ。

「ランサーさん……」
「下がっていてくれ、穂乃果」
「やだっ!」
「言うことを聞くんだ! 穂乃果!」
「だって、あの小汚いおじさんがここまで来たのはきっとランサーさんを――――ガッ!?」
「!?」
「ディルムつっあん……少し遊んでもらうぜ」

 カーンという軽快な打撃音が響いた。
 ―――穂乃果の頭部から。
 そのそばには王の財宝の鍵剣が転がっている。

「お嬢ちゃんには少なくとも一時間は眠っていてもらうぜぇ」
「ッ!? 穂乃果!? モトベッ! 貴様ァ!!」
「安心しな、殺しちゃいねぇ。
 ……だが、これでアンタのご要望通りの1対1(サシ)になったぜ、ディルムつっあんよ〜」

 本部は王の財宝の鍵剣を穂乃果に向かって投げた。
 鍵剣がピンポイントに穂乃果の額に直撃して、穂乃果はそのまま気を失った。

204 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:19:58 ID:7zrSSusw0

 王の財宝の鍵剣自体には切れ味はほとんどない。
 だからこそ、打撃武器としてはかなり有用性は高い。
 なんせ古代バビロニアの宝物庫につながる鍵剣だ。
 その頑丈さは言うまでもない。
 
「守護るものも守護れずに何が騎士道だ? 片腹痛い」
「ッ……黙れ!」

 クスクスと笑う本部。
 それに対して激昂するランサー。
 騎士の誇りを踏みにじられたのだから。

「モトベッッ!!」

 いや、それだけではない。
 何かが引っかかるそのもやもやとした気分を振り切るかのように本部に立ち向かう。
 しかし、そのランサーの迷いとあまりにも直線的な動きは本部に読まれる。

 最小限かつ最速の動きでランサーの脇を抜けるように回避行動をする。
 そのまま本部は転がっていた王の財宝の鍵剣を拾い上げる。
 そして、何処からともかく弾丸のように四角い何かが複数射出された。

「なんだ、この石碑か!?」
「これは『麻雀牌』だ」
 
 まるで石礫のように麻雀牌はランサーに飛んでいく。
 五月雨が如く、ほぼ無尽蔵のように射出されていく麻雀牌。
 それをランサーはキュプリオトの剣で弾き、切り払う。
 
「足元がお留守だぜ」
「なっ!?」

 一瞬のスキを付いて本部はランサーに急接近する。
 そこから腕を掴まれて合気道のような投げと足払いを同時に決まる。
 ランサーの身体は空中で一回転し、そのまま脳天を地面にたたきつけられた。
 そして、押し倒すような形で本部はマウントポジションを取った。


「タフだなァ〜〜常人なら確実に死んでたぜ……」


 ランサーの首筋に本部の日本刀が押し当てられている。
 日本刀の無機質な冷たい感触だけが伝わっていく。

「日本刀ってのは引かなきゃ斬れない」 
「モトベよ……俺に情けを掛けているのか」
「そうだ……」

 完全に負けた。
 この本部という得体のしれない小汚い強者に敗北したのだ。
 もし本部が殺し合いに乗っていたら確実に自身は死んでいた。

205 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:20:53 ID:7zrSSusw0

「一度死んだぜ、ディルムつっあん」
「……いや、死ぬのは二度目だ……」

 だが、そこにあったのは屈辱ではない。
 騎士としての戦いに敗れて死んだという清々しさであった。
 本部の安い挑発に乗ってしまったが、故に己の実力不足を痛感させられた。
 そのような体たらくでは……『死んでいる』のと道義だ。

 次の瞬間、ランサーは本部のマウントポジションから脱出した。
 そして、そこで高々と宣言をした。
 




「ランサーのサーヴァントは今ここに死んだ!」

 





 だからこそ、自らの死を受け入れた。
 死ぬ時は潔く死にたい。それは自分の騎士としての本懐であった。
 今、ここにいるのは……

「ここからは俺の三度目の生だ……故に俺は愛でも忠義でもない。
 ……俺は『ディルムッド・オディナ』としてこの戦いを戦い抜くことを選ぶッ!」

 今、全ての迷いは振り切った。
 手には槍がなくても剣がある。
 戦うのならば、それだけで十分だ。

「戦いの勝利ってのは誰かのために捧げるもんじゃねぇからな……」
「モトベ殿……まさかそのことを俺に教えるために……」

 ランサーは男として大切なことを思い出した。
 一度は夢見た『地上最強の男』……いつからだったろう、そんなことも忘れてしまった。
 そして、大切なことを思い出させてくれた本部を自身の仲間(とも)と認めたのであった。

206 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:21:32 ID:7zrSSusw0

「俺はセイバーを倒す……その時まで俺は騎士道を捨てるぞ。モトベ殿」
「それでいい、その気迫があれば……あの騎士王さんに一太刀も与えられないぜ。
 ……これは餞別だ、長物ではないが持っていくとよい」
「モトベ殿……かたじけない」

 そういうと本部は村麻紗が入った黒カードをランサーに渡した。
 彼は生前二本の槍だけでなく二本の剣「モラルタ」「ベガルタ」を所持していたとされる。
 故に双剣を使くこともお手の物である……ということを本部は知っていた。

 その時である。
 
 二人は東の方から僅かだが光の残滓を目撃した。
 この時間帯、太陽の光にはまだ早すぎる。
 ここにはいなかった騎士王……そこから導き出される本部の結論は……

「あの光はまさか騎士王の聖剣か!」
「何っ、知っているのかモトベ殿ッ!」
「ああ……間違いねぇ、あの輝き……あんなものを出せるのは騎士王の聖剣ただの一つだけだぜぇ」
「急がねばならない……!」

 ランサーは焦る。
 こんなところにとどまっている理由などもうないのだから。
 そこで最後に本部に頼みをする。

「モトベ殿には南の墓地にいるであろうキャスターの討伐を頼みたい……
 モトベ殿の実力であれば……あるいは……」
「ああ、任された、こういうのがオイシイんだよなぁ」
「……それと穂乃果を皆のところに頼む……互いにご武運を!」

、ランサーはこれ以上穂乃果を連れてはいけないと判断し、本部に託して、自身は東に駆け出した。
 それを確認して本部は気絶した穂乃果を背中に縛り付けて、原付で来た道を戻る。
 
「……嬢ちゃん、ヘルメットっていうのは普通はこういう風に使うんだぜ」

 本部は穂乃果が持っていたヘルメットを穂乃果の頭部にかぶせた。

 正しいヘルメットの使い方は人を殴るのではない。
 ヘルメットは着用者の頭部を危険から守るものである。
 今、このように本部や穂乃果の使用方法こそが正しい用途なのだ。


【A-3/黎明】
【ランサー@Fate/Zero】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:キュプリオトの剣@Fate/zero、村麻紗@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:『ディルムッド・オディナ』としてこの戦いを戦い抜く。
0:東に向かう
1:穂乃果、千夜に「愛の黒子」の呪いがかかったことに罪悪感。
2:セイバーは信用できない。そのマスターは……?
3:キャスターは本部に任せる。
4:俺がセイバーに勝てない……? 否、勝利する!
5:本部を全面的に信頼
[備考]
※参戦時期はアインツベルン城でセイバーと共にキャスターと戦った後。
※「愛の黒子」は異性を魅了する常時発動型の魔術です。魔術的素養がなければ抵抗できません。
※村麻紗の呪いにかかるかどうかは不明です。

【A-2/音ノ木坂学院近く/黎明】
【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]:気絶、額にたんこぶ、ランサーへの好意(中)、千夜に対する疎み
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:ヘルメット@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0〜1枚
[思考・行動]
基本方針:誰も殺したくない。生きて帰りたい。
1:μ'sのメンバーを探す。
2:ランサーさんを見てるとドキドキする……。
3;小汚いおじさん(本部)は信頼できない。
[備考]
※参戦時期はμ'sが揃って以降のいつか(2期1話以降)。
※ランサーの「愛の黒子」の効果により、無意識にランサーへ好意を抱いています。時間進行により、徐々に好意は強まっていきます。
※ランサーが離れたことで黒子による好意が少々薄れました。

207 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:22:31 ID:7zrSSusw0

【本部以蔵@グラップラー刃牙】
[状態]:確固たる自信
[服装]:胴着
[装備]:黒カード:王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)@Fate/Zero、原付@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:こまぐるみ(お正月ver)@のんのんびより、麻雀牌セット@咲-Saki- 全国編
[思考・行動]
基本方針:全ての参加者を守護(まも)る
0:駅に戻り、穂乃果をヴィヴィオに預け、自身は南下してキャスターを討伐する
1:騎士王及び殺戮者達の魔手から参加者を守護(まも)る
2:騎士王、キャスターを警戒。
[備考]
※参戦時期は最大トーナメント終了後


【B-2/駅構内/一日目・黎明】
【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)、睡眠中、ランサーへの好意(軽)
[服装]:高校の制服(腹部が血塗れ、泥などで汚れている)
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実 、不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:心愛たちに会いたい
1:ランサーが心配
2:十四郎さん…
3:ランサーと一緒に居る穂乃果に嫉妬。
[備考]
※現状の精神はランサーに対する好意によって自責の念を抑えられ一旦の落ち着きを取り戻しています。
※ランサーの「愛の黒子」の効果により、無意識にランサーへ好意を抱いています。時間進行により、徐々に好意は強まっていきます。
※ランサーが離れたことで黒子による好意が薄れるかどうかは不明です。

【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVivid
[思考・行動]
基本方針:皆で帰るために行動する
1:駅で本部さん達を待つ。それまでの間は私が千夜さんを守る。
2:アインハルトとコロナを探す
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後です。
※ランサーの黒子の呪いについて大雑把に把握しましたが特に重要なことだとは思っていません
※黒子の呪いの影響は受けていません
※各々の知り合いについての情報交換は済ませています。
※ランサーが離れたことで黒子による好意が薄れるかどうかは不明です。



原付@銀魂
本部以蔵に支給
銀時が移動手段に使用するスクーター(原動機付き自転車)。車種はベスパ。
平賀源外の改造によってロケットブースター・飛行機能が追加されている。
ただし飛行機能は莫大なエネルギーを消費するため、使用すると1分後くらいに大爆発を起こす仕様。


麻雀牌セット(二セット分)@咲-Saki- 全国編
土方十四郎に支給
一般的な全自動卓用の麻雀牌のセット。
萬子・筒子・索子・字牌の136枚が二セット(計272枚)。
そこそこ固いので当たると結構痛い。

208 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 17:23:33 ID:7zrSSusw0
以上で仮投下を終了します。問題点があればご指摘お願いします

209名無しさん:2015/08/23(日) 17:48:30 ID:VPuQhKFg0
投下乙です
特に問題点はないと思います

210 ◆KKELIaaFJU:2015/08/23(日) 18:44:33 ID:7zrSSusw0
問題がないようなので、誤字脱字を修正し一部描写を追加したものを本スレに投下します。

211 ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:26:46 ID:qIVTDzUI0
一旦仮投下します

212それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:29:52 ID:qIVTDzUI0
――Who killed Cock Robin?

――I, said the Sparrow,

――with my bow and arrow,

――I killed Cock Robin.

  * * *

真っ暗な空間。
何かから逃げるように走っていた。

私はこの光景を、よく覚えている。
あの時だってそうだった。鎧の女の人に襲われて。
私を庇って、十四郎さんは……。

『手前の所為だ』

どこからか、そんな声が聞こえて来る。
少しの間だったが、同行していたから分かる。紛れもない土方十四郎の声。

(え?)

声も出せず、ただひたすら走り続ける。

213それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:30:22 ID:qIVTDzUI0
『手前が銃を出さなかったから、俺は死んだ』

(違う。だって、あれは、モデルガンで)


『いいや本物だ。あれを出していれば、結果は変わっていたかも知れねぇ』

(違う。だとしても、襲ってきたのはあの鎧の女の人で)


『手前が現実を認めてさえいれば、違う結果が見えていた』

(違う。やめて。私は何も悪くない。私は、私は……)


『俺を殺したのは……』


「ッ……」

宇治松千夜は、そこで目を覚ました。
荒い息を吐きながら、辺りを見回す。

「あ、起きましたか。随分うなされてましたよ」
「ごめんなさい……夢、だったのかしら」

ヴィヴィオが話しかけてくる。時計を見る限り、本当に1時間程度しか眠れなかったらしい。
夢は深層心理の表れとも言う。彼はあんなことを言いそうな人ではないと思っていたのだが……。

「十四郎さんを、殺したのは……」

自責、後悔。そんなことを考えているうちに、どうやら本部たちが帰ってきたらしい。
笑顔で出迎えようかとも思ったが、今の自分には出来そうになかった。

  * * *

214それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:30:58 ID:qIVTDzUI0
足首が痛い。
カイザルとラヴァレイ。2人の騎士をボディーガードに付けたことによる少しの精神的な余裕が招いた結果。
こういうのを、『慢心』とでも言うのだろうか。

「アキラ嬢、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよー。問題なく歩けま……痛っ!」

カイザルが馴れ馴れしく駆け寄る。気持ちは分かるが、非常にむさ苦しい。

「(あーあ。確かにあいつら盾にするために弱者のフリをして行こうとは思ったけどさぁ。
流石に派手にすっ転んで足いためるのってどうなの、ホント。
こんな姿、ウリスには見せたくないなあ)」

「どうしますかね。地図を見る限り、駅とやらまでそんなに遠くはないでしょうが。
少し休んで行かれますか、アキラ君」
「出来ればそれでお願いしまーす。はぁ、あきらアンラッキー……」

支給品に湿布や氷などがあれば良かったのだが、そこまで甘くはないらしい。
青いカードから冷凍スポーツドリンクを出し、それでしばらく冷やすことにした。

「(へぇ、こんなのもきちんと出てくれるんだ。感心感心)」


半時間ほど経ち、流石にこれ以上やると霜焼けになってしまうためスポーツドリンクを足から離す。
だが、それでもすぐには歩けそうにはない。
無理をすると余計に酷くなるのが、この手の怪我にはつき物だ。

「ふむ……なら、少し地下闘技場とやらを見て来るか。
何か役に立つ物が置いてあるかも知れない」
「ラヴァレイ殿、1人では危険です。私も一緒に……」

スポーツドリンクを飲む晶の傍らで、騎士2人が何か相談をしている。

「君にはアキラ君の護衛をお任せしたいのだ。何、私1人でも十分だ」
「はぁ……。それでは、お気をつけて!」

「(いちいち敬礼してんじゃないわよ。流石は上司と部下ってか)」

今ここで油断させ、2人を殺すことは可能だ。だが、それでは何ら面白くない。
なるべくいい気にさせたところを、一気にどん底へ突き落とす。
この時の心の折れる音と言ったら――。

「(あの2人はまだまだ泳がせておくに相応しい)」

それにしても。

「(私でさえもこの殺し合いの場に放り込み、私が封印を解こうとしていたバハムートを召喚して見せたあの小娘……)」

一体何者なのか。まさかベルゼヒュートにこんな真似が出来るとは思えない。
考えても答えは出そうにない。今は闘技場に向かうしかないようだ。


数十分後。

「……ラヴァさん、遅いですね」
「ええ。やはり、私も付いていくべきだったか……」
「(いや、あんたは私の盾でしょ。今私襲われたらどうするつもりなのよ)」

なかなか帰ってこないラヴァレイの身を案じていると、彼の向かった方から何かを引きずるような音が聞こえてきた。

この音は何だと言うが早いか、カイザルは走り出していた。

「ラヴァレイ殿、御無事でしたか! それは……」

無事に帰ってきたラヴァレイは、猫車を持っていた。

「薬の類などは見当たらなかったが、支給品にあったのでな。
これならアキラ君も移動出来るだろう」
「そう……ですね! アハハ……(マジで言ってんのこいつ……私は荷物じゃないっつーの! いや悔しいけど今はお荷物か)」

こんな2人に肩を持たれるよりはこちらの方が精神的に楽だと考え、晶は何も追及しなかった。非常に不本意ではあったが。

  * * *

215それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:32:09 ID:qIVTDzUI0
駅に戻ってきてからというもの、千夜はずっと土方十四郎という男のことを悔やんでおり、ヴィヴィオはそれに付きっ切り。
本部とかいう浮浪者は、少し様子を見てくるとか言って一旦駅の外へ出て行った。
チャンスは今しかない、私はそう判断した。
3人まとめて殺してしまおう。そして、優勝して、ランサーさんを……。

手元にある青酸カリのカプセルは、カプセルを開けると毒の液体が出てくるようだ。
咄嗟に打ち立てた計画はかなり短絡的ではあるが、事態は一刻を争う。
私は、赤いカードを取り出した。


「2人とも、差し入れだよ〜」

駅のホームのベンチで休んでいる千夜とヴィヴィオに、穂乃果が駆け寄る。
2人の横に座った彼女の手には、サンドイッチが3つ。

「いいんですか? 私たちもまだ赤いカードあるのに」
「いいのいいの。好きなの選んで頂戴」
「好きなのって……全部タマゴじゃないですか、具」

そう言いつつもヴィヴィオはそれを2つ受け取り、1つを千夜に渡した。
千夜も短く「ありがとう」と告げると、再び黙りこくってしまった。

「あ……本部さんにも差し入れして来ないと」

そう言い残し、穂乃果は本部の居る方へ走り去る。


「……あれ。千夜さん、食べないんですか?」
「御免なさい。今、そんな気分じゃなくて」
「もうすぐ朝ですし、食べないと今後どうなるか分かりませんよ。
とりあえず穂乃果さんにも悪いですし、私が食べましょうか」
「じゃあ……お願いするわね」

ヴィヴィオに手渡し、直後に違和感を覚えた。
無論、かなり早い朝ご飯と言ってしまえばそれまでなのだが。
何故、高坂穂乃果はこのタイミングで差し入れをしたのだろう。
わざわざ自分の赤カードを使ってまでする理由などない筈なのに。

まさか、と思った時には。
ヴィヴィオは既に、受け取ったサンドイッチを口に入れた後だった。

216それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:32:57 ID:qIVTDzUI0
「美味しい、かしら」

やや引きつった顔で尋ねる。

「普通に美味しいで……あれ、ちょっと味が……ぅぐ……」

ヴィヴィオの顔が徐々に青ざめてゆく。様子が変だ。
まさか本当に、このサンドイッチには。

気づいた時には、ヴィヴィオは痙攣し、口から血を吐いていた。

「ヴィヴィオちゃん!?」
「ぢや……さ…ん……」

喉を掻きむしりながら千夜を睨み、ベンチから転げ落ちる。

「ち、違うの、これは……」

何故ヴィヴィオは、私をここまで恨めしそうな目で見るのだ。
私は何もしていないのに。悪いのは、きっと、穂乃果ちゃんで。

「ぢや、ざん……なん…で…」

違う違うちがう私のせいじゃない私は悪くない私は関係ないきっと彼女のサンドイッチにも毒がしこまれていてけっきょくかのじょはしぬことになるんだやめてちがうわたしのせいじゃないわたしはわるくないおねがいだからそんなめでみないで――



バァン! と大きな音がホームに響き渡る。
我に返った時には、既にヴィヴィオは動かなくなっていた。
そして、手には、ベレッタが握られて。

「あ……れ?」

ヴィヴィオの口元だけでなく、胸元からもじわりと赤い染みが広がってゆく。
引き金は……引かれていた。

「いやあああああああああ!!」

すべてを悟り、千夜は逃げるように走り出した。
後に残されたのは、口にされることはなかったもう1つのサンドイッチと、1つの死体だけだった。


【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはVivid  死亡】
【残り56人】

217それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:34:42 ID:qIVTDzUI0
単純な割に合理的。穂乃果はそう結論付けた。

水などの飲み物に毒を仕込んだ場合、飲んで貰えない可能性だってある。
だから食べ物なのだ。それも、サンドイッチのように片手が塞がり、かつ手軽に食べられる代物。
そうすることで、捨てるか手早く食べるかの2択を相手に迫る。
ヴィヴィオたちに差し出した3つのうち最後の1つは、自分で食べるものではない。
本部以蔵を殺すために毒が仕込んである3つ目だ。
彼は駅周辺の様子を確認したらすぐに出発するだろうし、タイミングを見てそれを渡せばきっと食べる。

「本部さーん。差し入れで……」
「待たれよ」

穂乃果の言葉を遮ると、本部は顎で少し遠くを指し示す。
見ると、複数の影がこちらに向かって来ている。

邪魔が入ったか。思わず舌打ちしそうになるのを堪え、影を注視する。
本部ほどではないがかなりガタイの良い男が2人、何故か猫車に乗せられている小柄な少女が1人だ。

「(ちょっと……これどうするの? このままじゃコイツを迂闊に殺せないじゃない)」

計画の破綻に苛立っても仕方がない。とにかくこの場を切り抜けるしかないようだ。


「(あのさー。何で私、ゴツいおっさんたちばっかりに遭うの?)」

ラヴァレイに押してもらっている猫車に乗りながら、思わず顔をしかめる。
正直、晶にとってこれ以上の道具(ボディーガード)は不要だ。
何とかして2人に駅の前で仁王立ちしている男を消してもらいたいところだが。

「(ん……? 何だ、女もいるじゃないの)」

こちらの存在に気づいたらしく女は物陰に身を隠し、男はこちらをじっと見ている。

「我々に敵意はない! ここを通してもらおうか!」

カイザルが叫ぶと男がこちらに歩み寄り、じっと晶を睨む。
苛立ちを隠し、察してくれと言わんばかりに腫れている足首を指差した。

「そのお嬢ちゃん、足を怪我しておるのか」
「ええ。そちらはお2人で?」
「いいや、向こうにあと2人――」


耳に届いた銃声と悲鳴。
数秒ほど互いに顔を見合わせ、彼らは黙ってホームへ向かう。

既にホームは蛻の空。生きた者は残っていない。
それに彼らが気づいた時、何が起こるのだろうか?

218それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:35:33 ID:qIVTDzUI0
【B-2/駅付近/早朝】

【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]:本部に対する憎悪、動揺
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(6/10)、青カード(10/10)
     黒カード:青酸カリ@現実
[思考・行動]
基本方針:優勝してランサーを生き返らせる
1:この場を何とかして切り抜け、本部を殺害する
2:参加者全員を皆殺しにする
3:μ'sの皆を殺すのは残念だけど、ランサーさんを生き返らせるためなら仕方ないよね
4:い、今のって!? それにこの人たちは……?
[備考]
※参戦時期はμ'sが揃って以降のいつか(2期1話以降)。
※ランサーが本部に殺されたと思い込んでいます。
※ランサーが離れたことで黒子による好意が少々薄れましたが、上記の理由によって現在では好意が暴走して、それが本部たちへの憎悪に変わっています。

【本部以蔵@グラップラー刃牙】
[状態]:確固たる自信
[服装]:胴着
[装備]:黒カード:王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)@Fate/Zero、原付@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:こまぐるみ(お正月ver)@のんのんびより、麻雀牌セット@咲-Saki- 全国編
[思考・行動]
基本方針:全ての参加者を守護(まも)る
1:南下してキャスターを討伐する
2:騎士王及び殺戮者達の魔手から参加者を守護(まも)る
3:騎士王、キャスターを警戒
4:急いでホームへ向かう
[備考]
※参戦時期は最大トーナメント終了後


【カイザル・リドファルド@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康、動揺
[服装]:普段通り
[装備]:カイザルの剣@神撃のバハムートGENESIS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品1〜2枚(確認済、武器となりそうな物はなし)
[思考・行動]
基本方針:騎士道に則り、繭の存在を挫く
0:この2人(本部と穂乃果)から話が聞きたい。
1:俺と、ファバロが……。
2:アキラ嬢を守りつつ、アナティ城へと向かう。ラヴァレイ殿も居る以上、体制は万全だ。
3:リタ、聖女ジャンヌと合流する(優先順位はリタ>>>ジャンヌ・ダルク)
4:アザゼルは警戒。ファバロについては保留
[備考]
※参戦時期は6話のアナティ城滞在時から。
※蒼井晶から、浦添伊緒奈は善良で聡明な少女。小湊るう子と紅林遊月は人を陥れる悪辣な少女だと教わりました。
※ラヴァレイから、参戦時期以後の自身の動向についてを聞かされました。

【蒼井晶@selector infected WIXOSS】
[状態]:健康、左足首捻挫(軽度)、猫車に乗せられている。
[服装]:中学校の制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
    黒カード:不明支給品1〜3枚(武器があるらしい?)
[思考・行動]
基本方針:ウリスを勝ち残らせるために動く
0:利用できそうな参加者は他の参加者とつぶし合わせ、利用価値が無いものはさっさと始末する。
1:カイザルとラヴァレイを利用しつつ、機会を見て彼らと他の参加者を潰し合わせるなり盾にするなりする。
2:ウリスを探し出し、指示に従う。ウリスの為なら何でもする
3:紅林遊月、小湊るう子は痛い目に遭ってもらう
4:カイザルたちに男(本部)を始末してもらいたい
5:何よ今の……こいつらから話を聞く?
[備考]
※参戦時期は二期の2話、ウリスに焚き付けられた後からです
※カイザル・リドファルドの知っている範囲で、知り合いの情報、バハムートのことを聞き出しました。

【ラヴァレイ@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:軍刀@現実 、猫車(蒼井晶乗車中)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品0〜1枚
[思考・行動]
基本方針:世界の滅ぶ瞬間を望む
1:蒼井晶の『折れる』音を聞きたい。
2:カイザルは当分利用。だが執着はない。
3:本性は極力隠しつつ立ち回るが、殺すべき対象には適切に対処する
4:さて、どうしたものか……。
[備考]
※参戦時期は11話よりも前です。
※蒼井晶が何かを強く望んでいることを見抜いています。

支給品説明
【猫車@現実】
ラヴァレイに支給。
工事現場などでよく見かける手押し車。


  * * *

219それはあなたと雀が言った  ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:36:13 ID:qIVTDzUI0
また、走っている。目的地はない。誰かに会いたいという気分でもない。
普段なら既に動けなくなるほど走っているのに、体は止まろうとしなかった。

穂乃果たちは追ってくるだろうか、そんなことはどうでも良かった。
ただただ、逃げたかった。
ランサーという一時的な心の支えを失い、目の前で散った命を見て、千夜の精神は既に限界に近かった。

「私が、彼女、を……」

絞り出すように呟く。

毒を仕込んだのは恐らく高坂穂乃果。その上彼女は、私や本部以蔵をも殺そうとしていた。
結果的に、高町ヴィヴィオが死んだ。私がトドメを刺す形になった。
ここにおける『悪』が誰か、なんていうのはどうでもいい。

穂乃果から受け取る前に気づいていれば。
もっと早く「食べちゃいけない」と教えてあげていれば。
彼女が死んだのは、私のせいだ。それは、土方十四郎も同じ。
自分が2人を殺したと言っても、何らおかしくはない。


随分と走り続け、いつの間にか倒れていた。最後の気力を振り絞り、物陰に身を潜める。
当分動けそうにない。何より、しばらく一人になりたかった。


――誰が殺した? クック・ロビン。

――それは……。


【B-2とC-2の境界付近/早朝】

【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(極大)、情緒不安定
[服装]:高校の制服(腹部が血塗れ、泥などで汚れている)
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実 、不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:心愛たちに会いたい
1:私が、殺した……。
2:しばらく1人で居たい。

[備考]
※現在は黒子の呪いは解けています。

220 ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:37:07 ID:qIVTDzUI0
仮投下を終了します 指摘などあればお願いします

221 ◆DGGi/wycYo:2015/09/01(火) 20:54:55 ID:qIVTDzUI0
クリスについての描写が無かったので少し時間を空けて追記します

222名無しさん:2015/09/01(火) 22:56:49 ID:2nFyPJaM0
一先ず乙です

223名無しさん:2015/09/02(水) 02:35:57 ID:khYlw5pE0
投下乙です
クリスの描写がない以外は特に気になる点はないかと思います

224名無しさん:2015/09/02(水) 06:51:36 ID:.r5jYbwQ0
クリスねぇ…

225名無しさん:2015/09/02(水) 06:55:28 ID:.r5jYbwQ0
失礼、デバイスの方か

226 ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 06:55:35 ID:nFiPKWnI0
仮投下させていただきます

227芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 06:56:29 ID:nFiPKWnI0
時刻が黎明に入り、普段の日常ならば既に床に入っているような時間帯の頃、志村新八と矢澤にこの両名は映画館の前で一旦休憩を取っていた。
万事屋を出発してからかなりの時間が経ったが、彼らに危険が及ぶようなことは全くと言っていいほどなく、順調に当面の目的地である駅へ向かっていた。
途中で17歳とは思えない筋肉隆々とした範馬刃牙という少年に会ったが、逆に言えば彼くらいしか遭遇した者はいない。
ところが、このまま数時間歩き通して流石に疲労が溜まったのか、新八もにこも膝が痛くなってきた。
まだ歩けるには歩けるが、いざというときに動けなければ困る。
なので、ここに留まって一服することにしたのだ。

「ふぅ…」

にこは映画館の前で地面に尻をつき、一息つく。
長時間立っていることはスクールアイドルをする上で慣れてはいるが、やはり厳しいものがある。

「にこさん、これどうぞ」
「え、これって…」

新八はスポーツドリンクの入ったペットボトルをにこに差し出す。そのラベルには『歩狩汗』と書いてあった。

「新八が出す必要ないじゃない。にこのカードで――」
「さっき刃牙君に2回分使っちゃったじゃないですか。僕の分を使ってくださいよ」

そういえば、にこはヘルゲイザーのカードと引き換えに食料と飲料を2回分失っていた。
それを気遣って新八が自分の青カードでスポーツドリンクを出してくれたのだろう。
そう思うとなんだか申し訳なくなり、小さい声で礼を言ってから、ペットボトルを受け取った。

喉が乾いていないといえば嘘になるので、にこはペットボトルへ口をつけて水分を体内に運ぶ。
ゴクゴクと喉を通る水が身体の渇きを癒していく。
力がみなぎって、いつでも動ける気力が湧き上がってきたような気がした。
半分ほど飲んで、ボトルに蓋をしめる。疲れているといってもヘトヘトまでとはいかないのでこれくらいの水分を補給すれば十分だ。
新八へ目を向けると、にこの持つものとは別のペットボトルを片手に水分補給をしていた。
青カードを2回も使う必要があったのか疑問に感じたが、ペットボトル1本で済ませた場合に起こる不具合をすぐに察して赤面しながら目を伏せた。
新八も新八で、同行者が女の子ということもあってそっちの方面にも気を遣っていた。

「そ、そういえばお腹も空いたわねー」

青カードを2回使ったことをすぐに忘れるために、それとなく切り出してみる。
一応万事屋を出てから何も食べておらず、刃牙へ渡した食料を見て食欲がそそられたのは事実だ。

「あ、それなら僕の赤カードで何か出しますよ。えーと、何出そうかな…まあいいや、何か出ろ!」

すぐさま新八は赤カードを振りかざして食料を出す。
特に何を食べたいとか考えてもいなかったので、とりあえず適当に出して出て来たもので腹ごしらえしようと思っていた。
しかし、その考えが裏目に出てしまう。

「………」
「……何コレ」

赤カードから出てきた食料。新八が何も考えず適当に出したもの。
それは黒く焦げた…とても食料とは思えない、思いたくない暗黒物質《ダークマター》であった。
見ていると食欲が引き立てられるどころか減衰していき、新八とにこの顔はみるみるうちにひきつっていく。
そこら中に漂う異臭が鼻を突き、これを食してはいけないと脳が警鐘を鳴らしている。
そして、2人は心から理解した。これは食料ではない、毒料だと。

「なんでよりにもよって姉上のダークマターが出んだよ!!こんなもん食べるくらいだったらそこらへんの土食うわ!!ふざけんなよあのカリフラワー頭ァァ!!」
「これ新八のお姉さんの料理なの!?アルパカの方がまだマシな料理作れるわよ!!」

こうして、新八は赤カードをもう一度使う羽目になった。
今度はにこの手で食料を出してもらったので、なんとか食料にありつけることができた。


◆ ◆ ◆


万事屋を発ってから現時点まで、新八とにこは刃牙以外と誰も会わずに映画館前まで来た。
今一度言うが、彼らは殺し合いに乗った危険人物とは誰とも遭遇していないのだ。
ここ数時間、2人だけで駅へ向かって移動する中、ずっと無言だったというはずもなく。

「にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこにー♪笑顔届ける矢澤にこにこー♪にこにーって覚えてラブにこ♪」
「……どう?」

にこが目の前に座っている新八に向かって持ち前の自己アピールを披露できる程度には緊張感がなくなっていた。
住む世界は違えども、二人とも好きなものがアイドルだということもあり、いつもの調子でおしゃべりする程度には打ち解けていた。
他に話す人物がいないことも大きく、殺し合いの中にいることが嘘であるかのような束の間の平和がそこにはあった。

228芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:00:16 ID:nFiPKWnI0

(ぐっ…なんて破壊力だ…!)

それを見た志村新八は思わず感嘆の声を上げて拍手しようとする自分をどうにかして抑える。
このにこのアピールは新八からすると、非常に高評価であった。
ファンを湧き立たせる力を"破壊力"と形容するならば、その『にっこにっこにー』は寺門通の『お通語』と同じくらいの破壊力を(新八の基準では)有していた。
志村新八は寺門通に一筋ではあるが、アイドル業界に関しても明るい。
仮にμ'sとかいうテラコヤアイドルが江戸にあったとするならば、寺門通とタメを張れるアイドルになっていたであろうことが新八にはわかる。
しかし寺門通親衛隊隊規の十四条には「隊員はお通ちゃん以外のアイドルを決して崇拝することなかれ」というものがある。
絶賛したいのはやまやまだが、果たして寺門通を差し置いて賛辞を送っていいのかどうか考えあぐねていた。

「……まさかアンタ『寒い』なんて思ってんじゃないでしょうね!?」
「…へ?」

しばらく黙っていて何の反応も示さない新八ににこがつっかかる。
かつて後輩に『寒い』とか言われたのがよほどこたえていたのだろうか、凄みのある剣幕で新八に迫る。

「いや、すっごいかわいかったです!最高です!世界のYAZAWAです!!」
「それ別のYAZAWA!!新八、やっぱりアンタも『寒い』って――」
「思ってませんって!!本当に良かったです!!江戸でやったら大ブレイク間違いなしですよ!!」

新八の弁解に嘘偽りがないと判断したのか、にこは気まずそうに「まあ、いいわ」と言って引き下がった。

「そろそろ出発しない?十分休憩とれたし、もう3時過ぎちゃってるわ」

にこは傍らに置いていた板のような物を拾い、それに目を落として現在時刻を確認する。
「それ」に表示されている時刻は3時を過ぎていた。
タブレットPC。にこに支給された黒カードの中の1枚に入っていたものだ。
表示画面に直接触れて操作が可能で、にこの住む年代では既に普及している。
新八は過去に宇宙船だとか頑侍だとかのオーバーテクノロジーに触れてきたが、タブレットPCというからくりの技術には大層驚かされた。
どうやらにこの世界の地球人の技術は江戸よりも進展しているらしい。
にこが言っていた、「江戸は歴史の授業では習ったがもうなくなっている」という言葉はあながち間違ってはいないかもしれない。

「あ、そうだ。出発するのは僕の黒カードの中身を確認してからでもいいですか?」

ふと、新八はにこのタブレットPCを見て自分にも支給された黒カードがあることを思い出す。
取り出してみると、新八の腕輪にある黒カードは全部で3枚あった。
にこの黒カードは刀とタブレットPCで2枚分と、刃牙から譲り受けた魔法の箒。残りの黒カードがあと1枚あるかないかだろう。
どうせなら役に立つものが入っていればいいが、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を配置したりわざわざ志村妙のダークマターを用意してくる主催者のことだ。
この時点で嫌な予感しかしない。
頼むからツッコまざるを得ないようなモンは出ないでくれと切に願いながら、新八は黒カードからアイテムを出した。

「……」
「…花陽――」



それを見て、新八はメガネを曇らせ、にこは目を見開いた。
新八の黒カードから出てきたのは、μ'sの大切なメンバーの一人である小泉花陽――

229芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:01:23 ID:nFiPKWnI0



「のメガネじゃないの」
「なんでメガネ!?」

1枚目の黒カードから出てきたのは、小泉花陽――小泉花陽のメガネであった。
にこはプライベートで何度かコンタクトを外してメガネを装着した花陽を見たことがあるため、その赤い柄を見て瞬時に判別できた。

「いくら僕がメガネくらいしか特徴ないからって支給品までメガネにする必要ねーだろうが!!
そりゃ確かにメガネのおかげで助かったことあるけど!!周りが性転換してるのに僕だけメガネの柄の色が変わっただけで済んだけども!!」
「自覚してたんだ…」
「自覚って…え、ちょっと待ってください、にこさんの僕の第一印象ってまさか――」

にこは申し訳なさそうに新八から目を逸らしたあと、先ほどの『にっこにっこにー』をしていたときと同じポーズをとり、

「な、何のことだか全然わからないにこー♪にこはー、新八君のことメガネスタンドみたいだなんてぜーんぜん思ってないにこ?」

としらばっくれた。

「腹立つ…!さっきは可愛いと思ったけど今は滅茶苦茶腹立つ!!」

頬にビキビキと血管が浮き出る感触を感じつつ、気を取り直して2枚目の黒カードを手に取り、アイテムを召喚する。
無論、新八の心は殆どを嫌な予感に支配されていた。
それでも。それでもまともなアイテムが出てくれるという一抹の希望に縋りながら、出てきたそれを見た。

「またメガネね」
「うん…なんとなくそんな気はしてた」

その黒カードの裏側に記載されているアイテム名の欄を見ると、【岸谷新羅のメガネ】と書いてあった。
――僕って一体何?
そんな思いの元、新八は涙を堪えながら最後の黒カードを手に取る。
もはや期待などしていない。過去に人間かけたメガネとか揶揄されたこともあるが、こうもメガネが関わってくると諦観しか生まれない。
悲愴感と共に黒カードからアイテムを出す。

「メガネね」
「メガネですね…」

黒カードの裏側を見る。【越谷 卓のメガネ】と書いてあった。

「マジでホントふざけんなよあのカリフラワァァァ!!なんで黒カードの中身が3枚ともメガネなんだよ!!
アレか、僕がメガネのおかげで命拾いしたことあるからってメガネをゲームの残機みたいに扱えってのか!?
できるわけねーだろ!!ここは現実で心臓一突きされたら一巻の終わりなんだよ!!スマブラじゃねーんだよ!!」

230芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:02:02 ID:nFiPKWnI0

目を血走らせて怒り狂う新八をよそに、にこもヘルゲイザーの入ったカードを取り出す。
説明によると、これは魔女が使う箒らしく、この殺し合いの場では素養に左右されるものの誰でも魔法が使えるようになっているらしい。
「プチデビル」という存在が必要な魔法は行使できないようだが、悪魔なんてにこは見たこともないし見たくもないので特に気にしないことにした。

「使える魔法は……相手に幻覚を見せたり視覚を奪ったりする魔法――何よ、魔法少女らしくないわね」

にこの理想的な魔法少女らしい魔法といえば、「箒を飛ばす魔法」くらいか。
「箒を飛ばす」のだからきっと箒に跨って空を飛べるのだろう。
一応、攻撃魔法も使えるらしい。
ひとまず、黒カードからヘルゲイザーを出してみる。
実際に見てみると、確かにただの箒だ。柄の部分には六芒星を模した飾りが付いている。

「…ちょっとやってみようかしら」

にこは何かを思いつき、早速それを実行に移す。
虚空に向かってウィンクをしながら、

「魔法少女――」

ヘルゲイザーを片手に人差し指と小指を突き立て、

「にこにーにこちゃん!」

咄嗟に考えた決め台詞と決めポーズをとる。

「にこっ♪」

なんとなく、魔法少女っぽくなれたような気がする。
殺し合いなんて異常な状況にいるけど…こんな夢でしか味わえないような体験をするのは悪くないかもしれない。

「何寒いことやってんですか」
「ハッキリと寒いって言ったわこの人!!世界のYAZAWAって言ってた割には随分と熱い手の平返しじゃない!?」

落ち込んだ様子で、ポーズをとっていたにこの背後から新八が声をかけた。
メガネを黒カードに回収したのだが、依然としてその表情は暗い。
切り札になり得るアイテムなのに3つともメガネを引き当ててハットトリックを達成してしまったのだから当然といえば当然か。

231芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:03:22 ID:nFiPKWnI0

「私がやろうとしてるのは寒いことじゃなくてま・ほ・う!」
「ああ、それって刃牙君がくれた箒ですよね?本当にそれで魔法なんて使えるんですか?」
「やってみないとわからないわ!『箒を飛ばす魔法』っていうのを使ってみようと思うの」
「『箒を飛ばす魔法』…魔女宅みたいに空を飛ぶ魔法なのかな」

どこか哀愁が漂っているメガネに内心で同情しながら、箒に跨って実際に魔法を使おうとする。

(えっと…)

しかし、よくよく考えればどうやって魔法を使えばいいのかわからない。
にこは魔導士でもなければ、特別な素質を持っているわけでもない。
とりあえず、『箒を飛ばす魔法』の最も近くに『箒星』と書いてあったのを思い出し、

「――箒星」

と唱えた。
――すると。

「…にこさん、動いてます!箒が動いてます!」
「ホントだ…すごい…まるで魔法少女みたい…」

僅かにだが、にこの跨る箒が動き始めた。
しかし、それと同時ににこの体に容赦なく疲労感がのしかかった。
魔法とは、魔力を消費して発動するもの。
素質を持たないにこからただでさえ少ない魔力を持っていかれるので、短時間で疲労が蓄積してしまうのだ。

「だ、大丈夫ですか!?」
「まだいけるけど…ちょっときついかも…」

にこが辛そうな表情を浮かべたのを見て、新八が心配して駆け寄る。
今のところ中程度の疲労で済んでいるが、重ねて魔法を行使したとなれば気絶は免れないであろう。
しかし、にこを襲う災難はこれだけではなかった。

「あの…にこさん、なんかこの箒、様子が変ですよ?」
「へ?」

新八がヘルゲイザーの異変に気づく。
先ほどから箒が小刻みに震えていると思えば、穂の部分が光っていた。
力を溜めているようにも見えて、まるで急発進しようとしているロケットのようで――

「にこさん、コレ危ないです!早く降り――」

232芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:05:22 ID:nFiPKWnI0
新八が言い終える前にヘルゲイザーは空へ向かって一直線に飛び出した。
…それに跨るにこと咄嗟にヘルゲイザーの柄を掴んだ新八を乗せて。

「「ウオアアアアアアァァァァァァァ―――――――!!!!!!」」

数瞬と待たぬうちに、地面がみるみる遠くなっていく。
にこも新八も、自分達が空を旅しているのだと直感的にわかった。
にこが発動した魔法は、『箒星』。
確かに「箒を飛ばす魔法」だが、その実は「箒を猛スピードで飛ばして攻撃する魔法」である。
そのため、ヘルゲイザーは跨っているにこのことなど気にも留めず、定められた方向へ一直線に突進したのだ。
箒の向いていた角度が上向きだったので、結果的に空を飛ぶことになってしまったのは皮肉という他ない。

「……にこさん、目を開けてみてください」
「……新八、私空を飛んでいるわ」

2人は夜空の彼方へと消えていった…。
その向かう先はヘルゲイザーのみぞ知る。

【G-6/上空/一日目・黎明】
【志村新八@銀魂】
[状態]:メガネ
[服装]:特になし
[装備]:菊一文字RX-78@銀魂、メガネかけ器@銀魂
[道具]:特になし
[思考・行動]
基本方針:………。
   1:………。
[備考]
※腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(8/10)、黒カード:3枚(小泉花陽のメガネ@ラブライブ!、岸谷新羅のメガネ@デュラララ!!、越谷 卓のメガネ@のんのんびより)は、メガネかけ器に装着されています。

【矢澤にこ@ラブライブ!】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:ヘルゲイザー@魔法少女リリカルなのはViVid、タブレットPC@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(8/10)
    黒カード:不明支給品0〜1枚、イヤホン
[思考・行動]
基本方針:皆で脱出
   1:新八と、鉄道を使って音ノ木坂学院に向かう 
   2:μ'sのメンバーと合流したい
[備考]
※参戦時期は少なくとも2期1話以降です
※志村新八と情報交換しました

※歩狩汗@銀魂×2、志村妙のダークマター@銀魂がG-6/映画館前に放置されています。
※ヘルゲイザーに乗ったにこと新八がどこへ向かうかは後続の書き手様にお任せします。
※箒星は魔法に素養のないにこが発動しましたので、そんなに遠くへは行かないかもしれません

【タブレットPC@現実】
2010年頃から本格的な普及が始まった、パーソナル・コンピュータの一種。
板状の外見で、表示画面に直接触れるような操作が可能である。
画面には現在時刻が表示されていますが、機能の詳細は後続の書き手にお任せします。

【小泉花陽のメガネ@ラブライブ!】
小泉花陽が1期にて、主にμ'sに加入する前にかけていたメガネ。
かけるとかよてぃんになれる気がする。

【岸谷新羅のメガネ@デュラララ!!】
岸谷新羅がアニメでかけているメガネ。
かけると一人称がころころと変わる気がする。

【越谷 卓のメガネ@のんのんびより】
越谷 卓がアニメでかけているメガネ。
かけると存在感が薄くなる気がする。

【メガネかけ器@銀魂】
志村新八に本人支給。
新八専用のメガネスタンド。
腕輪はメガネかけ器に装備されている。
ある意味スタンド@ジョジョの奇妙な冒険ともいえるかもしれない。

233芸風ノーチェンジ ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:06:37 ID:nFiPKWnI0








「おいィィィィィィィィ!!僕の状態表だけなんかおかしいだろうが!!完全にメガネが本体になってんだろうが!!」






【G-6/上空/一日目・黎明】
【志村新八@銀魂】
[状態]:健康
[服装]:いつもの格好
[装備]:菊一文字RX-78@銀魂、メガネ
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(8/10)
    黒カード:3枚(小泉花陽のメガネ@ラブライブ!、岸谷新羅のメガネ@デュラララ!!、越谷 卓のメガネ@のんのんびより)
[思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   1:この箒はどこへ向かっているんだ…?
   2:にこさんと、鉄道を使って音ノ木坂学院に向かう
   3:銀さん、神楽ちゃん、桂さん、土方さん、長谷川さん、μ'sのメンバーと合流したい
   4:神威、範馬勇次郎を警戒
[備考]
※矢澤にこと情報交換しました
※範馬刃牙と情報交換しました
※万事屋付近にいる天々座理世、風見雄二とは時間帯が深夜だったこともありニアミスしています


【矢澤にこ@ラブライブ!】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(中)
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:ヘルゲイザー@魔法少女リリカルなのはViVid、タブレットPC@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(8/10)
    黒カード:不明支給品0〜1枚、イヤホン
[思考・行動]
基本方針:皆で脱出
   1:私空を飛んでいるわ
   2:新八と、鉄道を使って音ノ木坂学院に向かう
   3:μ'sのメンバーと合流したい
[備考]
※参戦時期は少なくとも2期1話以降です
※志村新八と情報交換しました
※範馬刃牙と情報交換しました


※歩狩汗@銀魂×2、志村妙のダークマター@銀魂がG-6/映画館前に放置されています。
※ヘルゲイザーに乗ったにこと新八がどこへ向かうかは後続の書き手様にお任せします。
※箒星は魔法に素養のないにこが発動しましたので、そんなに遠くへは行かないかもしれません

【タブレットPC@現実】
2010年頃から本格的な普及が始まった、パーソナル・コンピュータの一種。
板状の外見で、表示画面に直接触れるような操作が可能である。
画面には現在時刻が表示されていますが、機能の詳細は後続の書き手にお任せします。

【小泉花陽のメガネ@ラブライブ!】
小泉花陽が1期にて、主にμ'sに加入する前にかけていたメガネ。
かけるとかよてぃんになれる気がする。

【岸谷新羅のメガネ@デュラララ!!】
岸谷新羅がアニメでかけているメガネ。
かけると一人称がころころと変わる気がする。

【越谷 卓のメガネ@のんのんびより】
越谷 卓がアニメでかけているメガネ。
かけると存在感が薄くなる気がする。

234 ◆RPDebfIIlA:2015/09/02(水) 07:09:05 ID:nFiPKWnI0
以上で仮投下を終了します

かなり急ぎで書いたのと、かなりネタ寄り(特に状態表)な内容になりましたので、
そちらの可否判断をよろしくお願いします
もし寒かったら修正した上で本投下したいと思います

235名無しさん:2015/09/02(水) 07:33:58 ID:ouYgfgso0
仮投下乙です
眼鏡かけ器@銀魂に笑った
個人的には問題ないと思います

236名無しさん:2015/09/02(水) 09:13:04 ID:A/I.37/g0
結局ランサーの顔を見たキャラは殺人を躊躇せず行う人格に改変されるということでいいの?

237 ◆zUZG30lVjY:2015/09/02(水) 09:41:49 ID:.uGvEJ4o0
>>236
その辺は議論スレの方で話す方がいいかと


◆DGGi/wycYoさんの投下があったのでこちらも仮投下します

238Libra ◆zUZG30lVjY:2015/09/02(水) 09:42:56 ID:.uGvEJ4o0
狩猟とは常に己の忍耐との戦いである。
時にはいつ来るとも分からない獲物を待ちぶせ、時には獲物の痕跡を探って広大な大地を彷徨う。
たとえ丸一日の労力が無駄に終わることになったとしても、次の日にも同じことを続けられる忍耐力。
それこそが狩猟に要求される最大の能力だ。
無人の市街地を駆け抜けながら、ランサーはあまりにも基本的な心得を思い返していた。

「(だが……これは狩猟よりもよほど厄介だな)」

思わず歯噛みせずにはいられなかった。
ランサーを狩猟者、セイバーを獲物と喩えるのは容易いが、この表現は的を射たものとは言い難い。
これが"狩猟"であるならば、特定の標的を執拗に追いかける必要はない。
追跡困難と判断した時点でその標的を諦め、別の狩り易い標的を探すべきであり、そのサイクルをいつまでも続けられることこそが狩猟に求められる忍耐である。
唯一無二の標的を追い続ける忍耐力は狩猟に求められるものではないのだ。

――思い出されるのはグラニアとの逃亡の日々。
怒りに燃えるフィン・マックールは、フィオナ騎士団の総勢のみならず盟約を結んだ外地の兵までも動員し二人を狩り立てた。
過剰とも言える兵力数は、しかし決して過ぎたものではない。
野に解き放たれた野兎一羽。
他のどの野兎でもなく、そのたった一羽を探し出し仕留めることがどれほど困難か分からぬ者はいないだろう。
現実的な手段で成し遂げようとするなら人海戦術で探し当てるより他にない。

翻って、現状はどうか。
総勢七十人――死亡者を加味しても六十人前後のうち、標的はセイバーただ一人。
それを追うもディルムッド・オディナただ一人。
もはや藁の山から一本の針を見つけ出すにも等しい難行だ。

「(……やはり手がかりが少なすぎる)」

ランサーが得ている手がかりは、学院から見て東の方角に光を見たというただ一点のみ。
その光が具体的にどこで発せられたのかすら定かではなかった。
故にランサーは、ひたすら東へ進みながら破壊の痕跡を探し続けることしかできないでいた。
それでも『不可能だ』と諦めきれないのは、偏に宝具の破壊力の凄まじさを知っているからに他ならない。
光輝の眩さと魔力の迸りから察するに、開放されたのは対軍、あるいはそれ以上の種別の宝具。
ならば地表や周辺構造物に少なからぬ被害がもたらされているはずである。
その痕跡さえ見つかれば有力な手がかりとなるはずだ。

ランサーは低層の建物を踏み台に跳躍を繰り返し、近隣で最も高い建物の屋上に降り立った。
ここなら広範囲を見渡すには充分な高さがある。おおよそエリア1つ分かそれ以上の範囲を見渡すことができるだろう。
夜間故の視認性の悪さも、サーヴァントの超常的な視力にとってはさほど問題にはならない。
――本来ならば濃霧が立ち上っていようと4km先を見通すことができるのだが、この戦場における弱体化は視覚にも及んでいるようだ。

川の河口、否、島々を分断する海峡の向こうに病院と思しき建築物が見える。
いかにも傷ついた者達が集まりそうな場所だ。
仮にランサーが無差別殺戮を試みるなら、真っ先に目をつけておく施設の一つだろう。
支給品というシステムが存在する以上、弱者を殺め装備を奪うことは戦力の拡充に直結する。
恥も外聞もかなぐり捨てて勝利を目指すのならという前提ではあるが、序盤の戦略としてこれ以上に有効なものはないはずだ。
あまり快くない想像を働かせながら、視線を手前の方に戻していく。
やがて、今まで見落としていたことが不思議なくらいの『違和感の塊』が目に止まった。

「(橋が――ない?)」

地図が正しければ現在位置と病院の間には橋が架けられているはずだ。
しかし、どんなに目を凝らしてもそれらしきものは見当たらない。

「……あそこか!」

ランサーは建物から飛び降り、橋があるべき場所へと一直線に駆け出した。
痕跡の在処さえ見つかれば牛歩に徹する必要はない。
最速のクラスの名に恥じぬ俊足で車道を走り抜け、瞬く間に郊外の岸壁まで辿り着く。
そこに広がっていたのは目を疑わずにはいられない光景だった。
橋梁の崩壊自体は想定の範囲内だが、破壊の痕跡が明らかに異質。
爆破による崩壊でも、橋脚の破壊による崩落でもなく、純然たる熱量で丸ごと焼き払らわれている。
一体どれほどの熱量を束ねればこんな芸当が出来るというのか。

239Libra ◆zUZG30lVjY:2015/09/02(水) 09:44:06 ID:.uGvEJ4o0
「…………」

動かぬ証拠が目の前にある。
しかしながら、ランサーは安易にその場を動こうとはしなかった。
焦りに任せて行動を起こすべきではない。戦士としての経験がそう告げていた。

確かに、この破壊が宝具によってもたらされた公算は高い。
だがそれは『セイバーの宝具によってもたらされた破壊』であることを保証しない。
ランサーは腰に提げた――すぐさま抜き放てるようカードには戻していない――キュプリオトの剣に手をかけた。
征服王イスカンダルの剣。それがここにある以上、名簿に名のないサーヴァントの武具も存在しうると考えるのが道理である。
そう、アーチャーの宝具もまた然り。
バーサーカーに放たれた無数の宝具の中に、真名解放によってこれほどの破壊をもたらす宝具があったとしても何の不思議もないのだ。

しかも問題はそれだけではない。
――仮に、橋を破壊したのがセイバーであると仮定しよう。
次に浮かぶ疑問は『何故』だ。
対軍宝具、あるいはそれを凌駕する対城宝具や対国宝具の真名解放ともなれば、魔力消費は極めて膨大なものとなる。
大量の魔力を何の意味もなく浪費するサーヴァントなどいるはずがない。
セイバーには橋を壊さなければならない理由があったはずなのだ。

「それも……橋を渡る前に」

破壊の痕跡を見る限り、宝具の真名解放がこちら側の岸で行われたことは確定的だ。
これから渡ろうとする橋を破壊したというのなら、それこそ相応の意味があったに違いない。

真っ先に思い浮かぶのは、不可抗力。
橋に陣取った強大な敵を倒すため止むを得ず橋を巻き込んだというパターンだ。
この場合は単純明快。敵の撃破と引き換えに橋は破壊され、セイバーは渡海を諦めた可能性が高い。
無論、舟などの渡海手段を確保した可能性もあるが。

次に可能性が高いのは生存者の封じ込めだ。
海峡を渡る手段が豊富に存在するとは考えにくく、常人が自力で泳ぐには過酷過ぎる。
つまり、3箇所の橋と1箇所の鉄道橋が破壊されてしまえば、この島にいる参加者の大部分は他の島に移動できなくなる。
こちらの仮説が正しければ、セイバーは未だにこの北西の島に残っているはずだ。

そして三番目、最も可能性の低い仮説。
三つの島を結ぶあらゆる交通手段を途絶させ、全ての参加者から移動の自由を剥奪する――

「……くっ」

宝具を用いた痕跡さえ見つければ手がかりになるとばかり思っていたが、いざ見つけてみると結果は真逆。
橋が落とされていたという事実が、ランサーに理不尽な選択を突きつけてきていた。
海を渡ったと判断して渡海を試みるべきか。
未だこの島にいると判断して引き返すべきか。
前者は、単なる移動の一環として渡った場合と、諸島全体を巻き込む計略が発動された場合に分かれる。
後者は、島を移ることを諦めた場合と、この島に狙いを絞った封じ込め戦略を取った場合に分かれる。

全体の被害を考慮するなら『島を渡った』と判断するべきだ。
しかし、この島には見知った者達がいる。高坂穂乃果がいる。宇治松千夜がいる。無力な少女達がいる。
もしもセイバーがこの島に残っていたとしたら、彼女達が凶刃に斃れることも覚悟しなければならない。
無様な槍兵が見当違いの方角を彷徨い歩いているうちに――

今、ランサーの前には天秤がある。
片方の腕には、他の2つの島に送り込まれた顔も知らぬ多数の命。
もう片方の腕には、己の呪いが心惑わせた少女を含む少数の命。
選んだ側が『当たり』ならば両方が危機から逃れられる。
選んだ側が『外れ』ならば選ばれなかった側が危機に陥る。
あまりにも不自由な二択。それでもどちらかを選ばなければならない。
ランサーは苦悶を飲み込み、強く瞼を閉じた。

「……すまない」

240Libra ◆zUZG30lVjY:2015/09/02(水) 09:45:16 ID:.uGvEJ4o0
 


    □  □  □



結論を言おう。
ランサーは『少数』を選んだ。

正しき天秤の守り手たらんとするならば、迷うことなく『多数』を選ぶべきである。
しかし、ランサーはそのように振る舞うことを良しとできなかった。
親しき者も見知らぬ者も強き者も弱き者も『1』と数え、純然たる数量の多寡で生死を切り分けるなど、到底許容することができなかったのだ。
そんなものは人間の考えではない。正しくあり続ける機械装置の在り方だ。
もしも人間がこのような思考回路で動こうとするなら、人間らしい感情を捨て去るか、或いは人間らしい感情を際限なく痛めつけ続けるより他にない。
故にランサーは海峡を前に踵を返した。
騎士として、サーヴァントとしての判断ではなく、心あるヒトとしての、ディルムッド・オディナとしての決断だった。







【A-3/市街地/一日目・早朝】
【ランサー@Fate/Zero】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:キュプリオトの剣@Fate/zero、村麻紗@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:『ディルムッド・オディナ』としてこの戦いを戦い抜く。
1:まずは北西の島からセイバーを探す。
2:穂乃果、千夜に「愛の黒子」の呪いがかかったことに罪悪感。
3:セイバーは信用できない。そのマスターは……?
[備考]
※参戦時期はアインツベルン城でセイバーと共にキャスターと戦った後。
※「愛の黒子」は異性を魅了する常時発動型の魔術です。魔術的素養がなければ抵抗できません。
※村麻紗の呪いにかかるかどうかは不明です。

241Libra ◆zUZG30lVjY:2015/09/02(水) 09:46:13 ID:.uGvEJ4o0
仮投下終了です
先の話の修正がどうなっても大丈夫なように、比較的ニュートラルな立ち位置からの考察回ということで

242 ◆zUZG30lVjY:2015/09/02(水) 09:52:39 ID:.uGvEJ4o0
指摘される前に一つ

>総勢七十人――死亡者を加味しても六十人前後のうち、標的はセイバーただ一人。
この六十人前後というのは、だいたいこれくらいだろうというランサー視点での当て推量です

243 ◆0safjpqWKw:2015/09/07(月) 10:21:05 ID:6UIwZmhU0
少し不安な点があるのでこちらに投下します

244フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ ◆0safjpqWKw:2015/09/07(月) 10:22:33 ID:6UIwZmhU0

駅に向かって走り続けるランサーは、ふと立ち止まった。
広い三叉路。左に行けば駅に続き、右に行けば最初の目的地だった音ノ木坂学院がある。
右手の道の先、夜であれば見逃してしまいそうな黒い影。
朝日に照らされ始めた今では、それが人の身体――遺体だとはっきり認識できる。

「……あれが、セイバーと戦って敗れたという、トウシロウか」

遺体の傍らに立ったディルムッドは目を伏せる。
侍は全身に傷を負っていた。一つとして、軽傷と呼べるものはない。
どれもが致命の一撃。命を刈り取ることを目的として放たれた、「殺す」ための剣ばかりだ。
特に、腹部への突きと胴部に走る袈裟切りの一撃が深い。真正面から渾身の力で斬り伏せられたことが容易に想像できる。
思わず簡単しそうなほど見事な切り口。しかしディルムッドの表情は暗い。
ディルムッドの見立てでは、この男は腹部か胴部、どちらかの一撃でほぼ間違いなく力尽きたのだろう。
だが下手人――セイバーはそれだけでは飽き足らず、駄目押しの一撃を加えた。
放っておいても絶命する男に、辞世の句を残すことすら許さず、無慈悲なまでの死を叩きつけた――あの、正しき騎士たらんと揺るがぬ誇りを掲げていたはずのセイバーが。

「モトべの言う通り……お前は、騎士道を捨てたのだな。俺などよりも遥かに……苛烈に、徹底的に」

騎士王と交わした剣を思い出す。
胸踊り血が沸き立つ、騎士の誇りを賭けたあの決闘を。
ディルムッドが生前経験したどんな戦いにも勝るとも劣らない、清澄かつ純粋なあの剣劇を。
初戦はディルムッドが優勢だったものの、まだ決着はついていない。
片腕の自由を奪われてもなお衰えぬあの闘志に、ディルムッドは身震いするほどの敬意と歓喜を掻き立てられた。
騎士王の名に恥じぬ、煌めく星々にも勝る気高さ。
相手にとって不足なし、どころではない。かの王を剣で打ち倒すことこそ、騎士たる者が心震わし挑む大いなる試練――!

「……なるほど、これが甘さか。確かにこんなものを抱えていては、今のセイバーには及ばんな……」

それら全てを――セイバーは、打ち捨てている。
自らを縛る鎖を斬り裂き、身を軽くして、ひたすら前へと突き進んでいる。
今一度覚悟を新たにし、ディルムッドは刀を抜く。
キュプリオトの剣ではなく、本部から預かった村麻紗を――眼前に伏す、一人の侍の魂を。

245フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ ◆0safjpqWKw:2015/09/07(月) 10:22:58 ID:6UIwZmhU0

「トウシロウ、東洋の侍よ。埋葬してやりたいところだが、今は時間がない。
 だが、お前の意志は俺が継ぐ。お前が騎士王と打ち合ったこの刀に誓おう。
 騎士王は必ずや俺が討ち果たす。お前が遺した、この刀でな」

ディルムッドは刀を納め、土方十四郎の亡骸を抱えて跳躍した。行き先は、ほど近くにある音ノ木坂学院。
先を急ぐ身ではあれど、ディルムッドは土方の遺体をあのまま野晒しにしておくことはできなかった。
日が昇れば急速に腐敗が始まる。せめて日の当たらぬところで眠らせてやりたい。
場所の検討も付いている。先ほど穂乃果に案内された際、最後に見た場所、アルパカの小屋だ。
ディルムッドの足ならば、寄り道しても一分とかからない。
あのときは本部が立っていたためじっくりとは見聞していないが、本来の主であるアルパカがいないことはわかっている。
決闘の場から一跳びで小屋の前に到着し、中に土方の遺体を横たえようとして――

「……むっ!?」

突如、ディルムッドの足元が光を放った。
警戒し、瞬時に小屋を出ようとしたディルムッドだがその背中が硬いものに突き当たる。
視線を巡らせれても、そこに壁などない。
あったのは光の帯。小屋の中心から放射線状に広がった青い光が、ディルムッドの退出を防いでいる。
そして光は徐々に勢いを増し、やがて目も眩むほどの光になって――!





「……なん、だと……?」

光が収まった時、ディルムッドの見る景色は一変していた。
狭いアルパカ小屋ではない。
木造の建物。その教室の一つ。


「ば、バカな……ここは音ノ木坂学院ではないぞ。どこだ、ここは!?」

土方の遺体を横たえ、ディルムッドは地図を開き、現在地を確認する。
F-4。旭ヶ丘分校。ディルムッドと土方十四郎の遺体は、音ノ木坂学院から遠く離れた南の島に転移していた。

246フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ ◆0safjpqWKw:2015/09/07(月) 10:23:27 ID:6UIwZmhU0

「何故だ、何故……!」

そのとき、ディルムッドの腕輪からすとんと一枚のカードが落ちる。それは黒カードではなく、IDカード。
キャスターに破壊された「ファバロの剣」と同じく、ディルムッドに支給された黒カードの変化した物体。
その効果は、特定施設のアンロック。
殺し合いの会場となる西の島、東の島、南の島は橋と電車によって繋がっているが、地続きではない。
橋と線路が全て破壊された場合、水面を渡る手段を持たない者は島に閉じ込められてしまう。
無論、そこまでの事態はそうそう起こるものではないが、かといって確実に起こらないとも断言できない。
そうなった場合のフェイルセーフ。
それが、三つの島に一つずつ存在する学び舎――音ノ木坂学院、旭ヶ丘分校、本能字学園――を繋ぐ、ワープ装置であった。
本来、このワープ装置は殺し合いが始まってからリミットの半分、つまり36時間で自動的に開放されるものだった。
が、ディルムッドの持っていたIDカードはそのタイマーをパスし、装置を使用可能にするカードキーだったのだ。
ディルムッドは殺し合いが始まってすぐキャスターの気配を察知したため、己のカードで最初に出てきた剣を掴むやいなや行動を開始した。そのため、残るカードを確認できていなかった。
穂乃果と合流した後も、愛の黒子の呪いにかかった穂乃果をケアすることで忙しく、また征服王の剣という獲物も手の中にあったため確認を怠っていた。
そして知らぬままアルパカの小屋というワープ装置のある施設に踏み入ったため、IDカードを認証した装置が自動で起動し、ここに転移させたのだった。

「装置は一度起動すると……バカな! 六時間は再使用不可だと……!」

黒カードに戻したIDカードから効果詳細が浮かび上がり、ディルムッドは絶句する。
一度起動した装置は再使用が可能になるまで六時間かかる。
つまり西の島の装置は停止しているため、ここから東の島に行くことはできるが、すぐに西の島へ舞い戻ることは不可能なのである。

「ここから走って駅まで、どれだけ時間がかかる……!」

本来であれば、ワープ装置は重要な移動手段となっただろう。
だが先を急ぐ槍兵には、これ以上ないほどの不幸となってその背中を刺したのだった。

「どうすればいい、どうすれば……!?」

ディルムッドの――ランサーの問いに答える者は、誰もいない。
日が差し暖かくなり始めた学校で、土方十四郎の亡骸だけが冷たい汗を流すランサーの慟哭を聞いていた。

247フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ ◆0safjpqWKw:2015/09/07(月) 10:24:11 ID:6UIwZmhU0

【F-4/旭ヶ丘分校教室/一日目・早朝】

【ランサー@Fate/Zero】
[状態]:ダメージ(小)、焦り
[装備]:キュプリオトの剣@Fate/zero、村麻紗@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:IDカード
[思考・行動]
基本方針:『ディルムッド・オディナ』としてこの戦いを戦い抜く。
1:可及的速やかにB-2の駅に戻る。
2:穂乃果達から離れたことに対しての後悔。
3:状況が許す限り、セイバーの追討を優先。場合によっては鉄道も活用する。
4:穂乃果、千夜に「愛の黒子」の呪いがかかったことに罪悪感。
[備考]
※参戦時期はアインツベルン城でセイバーと共にキャスターと戦った後。
※「愛の黒子」は異性を魅了する常時発動型の魔術です。魔術的素養がなければ抵抗できません。
※村麻紗の呪いにかかるかどうかは不明です。
※A-4の橋の消滅を確認しました。
※セイバーの行先に関しては、向こう岸へ渡った場合とこちら側に残った場合の両方を考慮しています。


・支給品説明
「IDカード@アニロワ4オリジナル」
音ノ木坂学院、旭ヶ丘分校、本能字学園を結ぶワープ装置の認証キー。
ワープ装置は本来ゲーム開始から36時間経たなければ開放されないが、このIDカードを持つ人物だけはそのセキュリティを回避して装置を使用できる。

・施設説明
「ワープ装置」
音ノ木坂学院、旭ヶ丘分校、本能字学園にそれぞれ設置されたワープ装置。
橋、電車が不通になった時のための安全装置のため、ゲーム開始から36時間経たなければ開放されない。
ただしIDカードを持つ者であればセキュリティを回避できる。
また、一度使用すると送信側(つまり使用者が最初にいる場所)の装置は六時間システムダウンし、受信も送信もできなくなる。
音ノ木坂学院のワープ装置はアルパカの小屋、旭ヶ丘分校のワープ装置はれんげたちの教室。
本能字学園のワープ装置については後続の書き手にお任せします。

248フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ ◆0safjpqWKw:2015/09/07(月) 10:25:33 ID:6UIwZmhU0
投下終了です。
使用できる人物に制限があるとはいえ、この段階で場所を瞬時に移動できる施設がありかどうかご意見をお願いします。

249名無しさん:2015/09/07(月) 13:02:28 ID:ehzT4OPs0
ワープについては意見が分かれると思いますが、自分は大丈夫だと思います

ワープの転送先については、指定は出来ず、どちらかの施設にランダムで飛ばされるという解釈でよいのでしょうか?

250名無しさん:2015/09/07(月) 14:49:37 ID:nm9I7SEo0
仮投下乙です
特に問題ないかと思います

251名無しさん:2015/09/07(月) 16:07:40 ID:nm9I7SEo0
同じく問題は無いかと

252名無しさん:2015/09/07(月) 16:59:21 ID:ctrPHXNE0
土方の死体は音ノ木坂学院と公園の間で、A-2の右端付近
ランサーはA-4の橋からB-2の駅までまっすぐ戻る途中で、現在位置はB-3

これでたまたま死体を見かけるって、位置関係はどうなっているんだろう

253名無しさん:2015/09/07(月) 19:29:41 ID:6gK5PH3M0
市街地のB-3からB-2にかけて移動している時に、たまたま死体との間に遮るような建物がなく、鯖の視力で目に留まった…って可能性もあるが
それにしたって地図の縮尺がかなり縮まってる感じはある
千夜も夜中で見つかりにくかったとはいえ、かなりの距離を走ってB-2まで逃げ切ったような描写だったし

254名無しさん:2015/09/07(月) 19:35:31 ID:8KDNpeds0
ワープ装置の仕様については特に目立った問題は無いと思います

ただ強いて言うなら、前話までに決められていたキャラの進行方向を一話で変える
ワープ装置の唐突な登場という事実は、正直なところ少しだけ引っ掛かりました
とは言え単なる気持ちの問題といえばそれまでなので、何も無いなら自分も強く主張しません

255名無しさん:2015/09/07(月) 20:05:18 ID:ctrPHXNE0
>>253
>広い三叉路。左に行けば駅に続き、右に行けば最初の目的地だった音ノ木坂学院がある。
>右手の道の先、夜であれば見逃してしまいそうな黒い影。
この表現で位置関係が更にカオスってる気がする

256名無しさん:2015/09/07(月) 20:18:50 ID:ctrPHXNE0
ttp://s1.gazo.cc/up/151962.jpg

図示すると、こう
これ作ってて気付いたけど、ひょっとして修正版の状態表じゃなくて、
Wikiに載ってるバージョンの現在位置地図を見て話を考えたのかな

257名無しさん:2015/09/07(月) 20:25:20 ID:WBGBiakM0
その図以外のパターンはいくらでもあるぞ
そんな難癖じみた指摘するぐらいなら素直に「気に入らないから破棄しろ」って言えば?

258名無しさん:2015/09/07(月) 20:28:45 ID:YnBujQqg0
そのいくらでもあるパターンを示さないと議論を引っ掻き回そうとする荒らしにしか見えんぞ

259名無しさん:2015/09/07(月) 20:32:43 ID:WBGBiakM0
>>258
例えば>>256の図で言うと赤のライン上に三叉路があったと考えればなんの問題もない

260名無しさん:2015/09/07(月) 20:33:54 ID:ctrPHXNE0
>>259
それ三叉路じゃなくて丁字路じゃね

261名無しさん:2015/09/07(月) 20:35:46 ID:WBGBiakM0
>>260
「三叉路があったら」って話だけど

262名無しさん:2015/09/07(月) 20:37:58 ID:ctrPHXNE0
いやまぁ丁字路も三叉路の一種といえばそうなんだが、
上の図みたいに死体が移動ルートの近くにあるならともかく、
駅までの距離と大して変わらないのに寄り道するのはそれはそれでおかしくなる
お前、自分が不在の間に何か起こるの不安がってたじゃねーか、と

263名無しさん:2015/09/07(月) 20:39:51 ID:3STuUG2c0
出先で地図見れないから的外れだと申しわけこの議論もないけど、赤ラインがエリア区分なら死体の置いてあるエリア次第なんじゃないの?

264名無しさん:2015/09/07(月) 20:45:04 ID:WBGBiakM0
>>262
1分掛からないって書いてあるし別に何とも思わないけど

というかこの程度で一々修正要求されてたらやってられん

265名無しさん:2015/09/07(月) 20:46:09 ID:QMM6D7fY0
そもそも市街地なんだから常識的に考えたらまっすぐ移動するんじゃなくてある程度道沿いに動いてるんじゃないですかね
どうも自分の考えたルートしかあり得ないと思ってるぽいけど

266名無しさん:2015/09/07(月) 20:47:45 ID:YnBujQqg0
ランサーの思考に関しては、元々支離滅裂なキャラとして描かれているから多少の不自然な行動はアリだと思う

267名無しさん:2015/09/07(月) 20:48:04 ID:XeIYninU0
それはそうと、アルパカ小屋ってなんか臭いそう
もっといい場所がなかったのかというか、駅に連れて行ってやれなかったのかというか


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