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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

422小閑者:2018/05/03(木) 12:15:31
 戸惑うアリサ達とは別の反応を示したのはなのはだった。

「そっか。
 恭也君の事、もっと知って、もっと仲良くなりたいんだね」
「…うん」

 なのはの指摘に頬の赤みを僅かに増したフェイトが、はにかみながらも小さく頷いた。

 なのはとフェイトはPT事件を通して何度もぶつかりながら想いを交わし、なのはが差し出し続けた手を最終的にフェイトが取る形で友達になった。そして、事後処理や裁判の為に一緒にいる事が出来ない代わりに、ビデオレターを通して沢山の言葉を交わして交流を深めた。
 好きな事、嫌いな事、思った事、考えた事。
 他者と関わる事の少ない生活を送ってきたため最初は戸惑っていたフェイトも少しずつ口数も話題も増えていき、その分だけ互いの事を理解して近づく事が出来ていった。
 フェイトが言いたいのはきっとそう言う事なのだろうとはやて達にも察する事が出来た。
(余談だが、思いの外、純朴な答えが返って来た事でアリサが地味にダメージを受けて密かに悶えていた)
 ただ、沈んだ表情で過去形で語ったという事は上手くいっていないのだろう。

「フェイトちゃん、悩み事なら相談乗るよ?
 恭也さんと一緒に生活するんは私の方が先輩やしな」
「大丈夫。みんなで考えればきっと上手くいくと思うの」
「はやて、すずか…」

 優しく声を掛けてくれるはやてとすずか、言葉にせずとも眼差しに想いを込めて励ましてくれるなのはとアリサにフェイトの瞳が感激に潤む。
 その様子にアリサが視線を泳がせつつ先を促した。誰もが、別に照れなくても良いのに、と思いつつも、そこで照れなくちゃアリサちゃんじゃないよね、とも思わせる辺り、絶妙なバランス感覚である。

「えっと、ね、どう言えば良いんだろう…
 別に、みんな揃ってる時は平気なの。私も一緒にお話出来るし、恭也にクロノや私がからかわれてみんなで笑ったり…
 でも、2人っきりになると、なんだか、上手く話せなくって…」
「緊張してまうんかな?
 みんな、言うてたけど、具体的には何人やったら平気なん?少なくなったら緊張してくん?」
「え?…ええと、誰か居れば平気かな?アルフと3人の時には普通に話せてたよ。多くは無いけど、母さんかクロノかエイミィが居ても大丈夫だったと思う」
「う〜ん…
 それじゃあ、一緒にいる人が会話に参加してないシチュエーションはなかった?部屋にはもう1人居るけど他の事してて話をしてるのはフェイトと恭也だけ、とか」
「ちょ、ちょっと待ってね?
 え〜と…、あ、それも平気だ。
 何度か、母さんかエイミィが夕飯を作ってる時にリビングで恭也と話した事があったよ」
「って事は、本当に2人っきりの時だけって事か…」

 はやてとアリサが的確に状況を絞り込んでいく。その結果、浮かび上がったシチュエーションにはやては首を傾げていた。
 フェイトが恭也を意識して緊張するというのは、はやてにも身に覚えがあるため納得出来る。しかし、逆にそうやって緊張に強ばるフェイトに対して恭也が何もフォローを入れないというのは少々違和感があったのだ。


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