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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
419
:
小閑者
:2018/05/03(木) 12:10:37
10.寂寥
恭也が学校に通うようになってから数週間が過ぎたある日の週末。
アリサに招かれたなのは、フェイト、はやて、すずかは、招待者本人と共にアリサの部屋に3台並べられたキングサイズのベットの上にいた(ちなみに、わざわざ家具を部屋の外に運び出さなくてもベットを追加出来るほどアリサの部屋は広い)。
時刻は20時にならないところなので小学生とはいえ就寝にはやや早い時間だが、既に全員一緒に入浴を済ませて持参したパジャマに着替え終えている。ただし、傍らに置かれた少々のスナック菓子とジュース類がパジャマ姿と矛盾しているだろうか。
全員が眠たそうな表情を見せるどころか、ベットの中心で笑顔を突き合わせている事からも分かる通り、これから始まるのは所謂パジャマパーティだ。
元々、アリサ、すずか、なのはの3人では何度かそれを開いていた。その流れから言えばフェイトが転校してきて仲良しグループに加わった頃に彼女も含めた4人でのお泊まり会を開くはずだったのだが、残念ながらその時期は事件の絡みでなのはもフェイトも余裕がなかったのだ。
そんな訳で、序でと言っては失礼極まりないが、最近メンバーに参入したはやても一緒になって5人での開催となった。
ちなみに、恭也は参加していない。
なのはが提案した恭也の参加にはフェイトが賛成し、はやてが消極的賛成を示したのだが、意外と性道徳的に真面目な恭也本人が辞退した事と、アリサの『この手のイベントは女の子だけでするものよ!』という主張が通ったためだ。
アリサの主張の理由は、当然、異性が居ては出来ない話をするためなのだが、もう一つ、本人が居ては出来ない話をするためでもある。
「それじゃあ、早速本題からいってみましょうか?」
「本題?
アリサちゃん、今日はお話する事、決まってるの?」
「別にいつも通り、何話しても構わないわよ。
ただ、今回は『これだけは外せない』って話題があるだけよ!」
「外せない話題?」
初参加のフェイトとはやてが多少の緊張から口を開けずにいると、アリサとなのはの遣り取りにすずかが合いの手を入れた。
「多分、フェイトちゃんの事だと思うよ、なのはちゃん」
「え!?私?」
すずかに呼ばれて静観していたフェイトが声を上げた。
ただし、本人に心当たりは無いようで、声にも表情にも疑問が浮かんでいた。
「その通り!
トボケてる積もりは無いんでしょうけど、その程度で矛先を弛めるほど、あたしは甘くないわよ!」
「えと…、お手柔らかに」
その生き生きとした表情から、何を言っても無駄、と悟ったフェイトは既に笑みが引き攣り気味だ。効果の期待出来ない嘆願が最後の抵抗といったところだろう。
当事者ではない3人も苦笑するしかない。
だが、アリサにはこのネタが傍観者3人を仲間に引き込む力を持っている確信があったようで、少々演技がかった口調で手札を切った。
「それじゃあ、早速白状して貰いましょうか!
愛しの恭也様との甘ぁ〜い同棲生活を!」
「…えええっ!?」
アリサの台詞を理解するために数瞬の間を要したフェイトは、ワンテンポ遅れて驚愕の声を発した。普段の彼女の話し声からでは想像出来ない、広い部屋を満たして余りある声量が驚きの度合いを示している。
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