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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

416小閑者:2018/04/19(木) 20:43:06
 恭也の後ろ姿を横目にアリサ達も教室へ向かって歩きだした。
 3人が落胆しているため自然と会話も途切れていたのだが、思案顔だったすずかがポツリと疑問を口にした。

「ねぇ、アリサちゃん。リンディさん、恭也君の歳が決まってるのにどうして学年を間違えたんだろうね?」
「そう言えばその話だったわね。
 ん〜、あれじゃない?学力が合わないから学年を下げたとか?」
「アリサちゃん?」
「ちょっ!?冗談、冗談よ、なのは!」
「あはは…、あ、でも、学校によって勉強の進み具合は違うらしいから可能性はあるかもしれないよ?
 それに、恭也さん、えとなのはちゃんのお兄さんも授業はあんまり真面目に聞いてなかったから大学受験の時に大変だったってお姉ちゃんも言ってたし」
「むぅ」

 アリサを笑顔で恫喝していたなのはもすずかの意見に不承不承視線を緩めた。
 兄が、知能は高いが知識は浅い、という評価を受けているらしい事を思えば強くは出難い。

「あ、そか、きっとそれや」
「え、はやて?」

 一番恭也を低く評価しそうにないはやての同意の言葉にフェイトが驚いて聞き返す。
 はやてにも自覚はあるようで、フェイトに苦笑を返す。

「ちゃうちゃう、恭也さんがおバカさんや、言うつもりはないんよ。
 恭也さんがこっちに飛ばされたの、春頃や言うとったからな。5年生の授業なんてほとんど受けとらんやろ」
「ああ、そうか。
 1・2学期の授業を受けてないのに3学期に合流するなんて無理があるわね。
 それで今は4年に編入して4月から改めて5年生になろうって訳か。
 きっと、リンディさんが間違えたのもそこね。
 どうせなら戸籍も10歳にしておけばよかったでしょうに。こっちの学校に通うつもりがなかったってのは本当みたいね」

 アリサが納得顔で話を纏めると、誰からも異論の声はあがらなかった。
 ただ、恭也との学生生活が1年延びた事が単純に嬉しかったのも手伝って、その後はいつも通り授業が始まるまで笑顔が絶える事はなかった。





「早速だが、転入生を紹介する」
「不破恭也です、よろしく」
「なぁんであんたがこのクラスに入って来るのよ!!」

 アリサ達のクラスの担任が朝のホームルームで開口一番に発した台詞に合わせて入室した恭也が簡潔な自己紹介を済ませると、間髪入れずに椅子を蹴り倒しかねない勢いで立ち上がったアリサが人差し指を突きつけながら絶叫した。
 メンバーの誰もが呆然としている中で即座にツッコミを入れてみせる辺りは『流石はアリサ』としか言いようがないだろう。
 対する恭也も心得たもので、慌てず騒がず教師に向き直ると落ち着いた口調で申告した。

「先生、生徒の一人から正面切って『おまえなどこのクラスに入れてやるものか』と宣言されました。
 いじめです」
「ありゃあ、いじめじゃなくてケンカだ。
 自力で頑張れ」
「やる気なさげな声援だけ!?あんた本当に教師か!?」

 確かに、正々堂々真正面からぶつかってくるならケンカだろうか?少なくともいじめと聞いて思い浮かぶ陰湿な姿とはかけ離れている。
 尤も、どちらであったとしてもそこで生徒の背中を押すという教育方針は少々斬新ではあるだろう。

「教員免許はちゃんと持ってる。崇め奉ると良い」
「御免被る。
 金持ちの子息令嬢を相手にそんな返答でよく訴えられないな」
「フッ、要領良く生きてきたからな。もとい、生徒達から尊敬されてるからな。
 不破、おまえも生徒である以上、先生にはちゃんと敬語を使え。
 文明社会に生きるからにはほとんどの場合、肩書きの力関係に従わなくてはならん。それが嫌ならさっさと俺より偉くなるんだな」
「少しはオブラートに包んだらどうです?
 おまえ達もよくこの教師に従っているな?」

 小学校の先生とは思えない赤裸々な返答を寄越す教員に、流石の恭也も呆れながら生徒に振ると、アリサ達を除く全員が声を揃えて答えた。

『反面教師!』

 全員がイイ笑顔を浮かべるだけでは飽きたらず、ズビシッ!とサムズアップして見せてくれた。


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