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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

405小閑者:2018/04/19(木) 12:48:18
 高町家では食卓を延長するための予備の机がある。それだけ友人知人が飛び入りで食事参加する事が多いのだ。
 今日もまた、その机が存分に役割を全うし、賑やかな食事風景が広がっていた。

「凄く美味しいね、はやて」
「ほんまやな。このミートパイ、どうやったらこんな味になるんやろ?」
「あら、はやてちゃんはお料理に興味あるの?良いわよ、後でレシピを教えてあげる」
「ほんまですか!?ありがとうございます!」
「ふふ。
 恭也君はどう?お口に合うかしら?」
「ええ、美味しく頂いてます。
 高、…桃子さん、は、洋菓子が専門と聞いていたんですが、他の料理でも十分にお店を開けるんじゃないですか?」
「ふふ、ありがとう。
 なのはにもちゃんと伝授しておくから期待しててね?」
「?
 まあ、なのはの料理なら味見が命懸けになる心配はしてませんがね」
「う〜ん、この反応は、流石は『恭也』君、と言うべきなのかしら?
 フェイトちゃんやはやてちゃんも苦労してるでしょ?」
「もう慣れました」
「まぁ、これはこれで可愛いと思えるようになりそうですわ」
「達観してるなぁ。頬が引き攣ってなければ完璧だよ」
「美由希、そういうところは見なかった事にしてあげなきゃダメじゃない」
「ほ〜う、恭也君は随分女泣かせになりそうだな。
 なのは、競争率高いから簡単に泣かされてたら生き残れそうにないぞ?」
「な、何言ってるの、お父さん!」
「失礼な、泣かせるような真似は、…それぞれ一度、位しか、…2度…?
 あ、いや、弄んだとかじゃないんだから、後ろめたい事は何も無い!」
「…と言う事は『落ちた』方かな?」

 そう言って士郎が見回すと3人共が揃って顔を赤らめ視線を泳がせる。
 なんとも分かり易い反応に苦笑しつつ、立場も恭也との関係も異なる3人共が彼に関連する理由で泣いている事に少々驚く。尤も、聞いた限り生死に関わる事件だったようなので、幼い精神が追い詰められれば感情が振り切れる事くらい普通にあるだろうが。

「あんまりいじめちゃダメよ、あなた。
 恭也君、お代わりは?」
「頂きます」
「はい。
 あら、恭也も?さっきお代わりしたばかりじゃない。いつもよりペースが速いけど大丈夫?」
「いつも通りだ」
「大丈夫だよ、母さん。恭ちゃん、さっきなのは達に怖がられたのがショックで自棄食いしてるだけだから」
「余計な事を言うな。いつも通りだ」
「あらあら」
「あの、高町さん、さっきのはほんまに迫真の演技であって、怖がっとるとかそういうんでは…」
「ああ、分かってるよ。本当に気にしてないから美由希の言った事は聞き流してくれ」

 そう言うと高町兄の表情が幾らか和らいだ。
 気持ちが晴れるような遣り取りではなかったので、顔に出ていた険を意識的に収めたのだろう。
 恭也に比べて高町兄は随分と感情が表に出易いように思う。
 恭也が『2〜3』としたら高町兄は『10』くらいだろうか?無論、一般人を『100』としてだ。
 大抵の人からは大差無いと言われそうだが、フェイトとなのはからは同意が得られるに違いない。
 勿論、恭也にだって表情筋を操作して『笑顔』を繕う事は出来るだろう。見た事も本人に確認した事も無いが、周囲の反応に合わせて演技する事だって出来るはずだ。
 だが、それらははやて達が望むものではない。彼の感情を伴う微笑みを見た事があれば、営業スマイルなどお呼びではないのである。

「そう言えば、恭也君、何か話したい事があるとか言ってなかったか?」

 楽しい団欒が途切れた折に、唐突に士郎がそう切り出した。
 ふと思い出したといった口調の士郎の問いに対して、応じる恭也の口調も平常そのものだった。

「ええ。
 大した話ではないんですが、管理局側は緘口令が引かれてるらしいので直接言いに来ました。
 管理局に所属する者が他の次元世界、要は地球以外の惑星から来ているという話は聞いて貰っていると思いますが、俺もその中に含まれます。
 俺はこの地球と言う惑星の人間ではありません」
『ええ?』

 サラリと語られた話の内容に驚愕の声が上がった。


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