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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

403小閑者:2018/04/19(木) 12:46:34
8.大人



 士郎と共に戻ってきた恭也が風呂から上がる頃にはのぼせていたなのは達も復帰し、帰宅した桃子が夕飯を作る間、なのはの発案に従い4人はリビングでテレビゲームに勤しむことにした。

 ゲーム初心者のフェイトと恭也にも出来るゲームと言うことで双六の様なボードゲームタイプとコントローラを振り回す体感ゲームタイプが選択肢として上げられ、初心者組みがどちらも運動に長けているからという理由で後者となった。
 ゲームソフトは4人で出来るテニス。ペアは経験者同士と初心者同士でじゃんけんをして勝ち同士・負け同士とした結果、なのは&フェイトV.S.はやて&恭也となった。
 始めた当初は『運動は苦手だけどゲームなら得意』と主張するなのはと、『ヴィータと散々やり込んだ』と自信を露わにするはやての熟練者2人が初心者2人をフォローしながら和気藹々と遊んでいた。
 ゲームキャラにダイビングボレーをさせようとしたフェイトが、自ら飛び跳ねて着地地点にいた恭也に顔面鷲掴みキャッチされたり。
 なのはの打った頭上を越えるロブをスマッシュしようとした恭也が、抜き手も見えない背負い刀の抜刀よろしくコントローラを振り回してゲーム機のセンサに検出して貰えなかったり。
 そんな初心者に有りがち(?)なミスを笑い合う余裕もあった。
 しかし、笑顔でいられたのは初心者2人がゲームに慣れるまでの10分程度だった。
 たかがゲーム。
 されどゲーム。
 真剣に取り組むからこそ楽しいのだ、と言ったのは何処の誰だったか。
 僅かな隙間を逃すことなく打ち抜くスタイルのなのはと、チェンジオブペースで相手のリズムを崩してチャンスを作り出すはやての実力はほぼ拮抗していた。
 方法論こそ違えど熟練した2人がこの短時間に今更上達するはずはなく、勝利を目指す以上は必然として互いに相手の弱点を攻撃することになる。1対1であれば苦手な球種やコースを探すところだが、これはダブルス、互いに分かり易い急所を抱えているのだから、自ずと行動は決まってくる。
 相手初心者をどう攻撃するか、それをフェイントにフォローに走ろうとする熟練者の裏をどう掻くか、味方初心者をどう行動させるかに腐心するようになっていく。
 そうなると勝負の行方は伸び代のある初心者達の上達速度に掛かってくる。
 そして、フェイト・恭也共に流石と言うべきか、予想を裏切る事無く物凄い勢いで上達した。
 どちらもテニス自体のルールを把握するところから始めたにも関わらず、あっという間に上級者モードのNPCを相手にしても引けを取らないであろうレベルに到達してしまったのだ。
 だが、そこまでいくと個人の特性が現れ始める。
 恭也もフェイトも反射神経と動体視力が人類の範疇から逸脱した高速戦闘のエキスパートなのだ。当然の事ながら、彼らの性能は平均的な一般人が楽しむために作られた家庭用ゲーム機に注ぎ込むには明らかにオーバースペックなのである。逆に言えばプレーヤーキャラの移動スピードや打球スピードを彼らのスペックが遺憾なく発揮出来るように調整されたゲームなど、一般家庭の善良なお子様方に楽しめる代物ではなくなってしまう。
 『もっと速く動いてよ!』とか『どうしてあんな遅い珠しか打てないんだ!?』というゲームプレーヤーとしては負け犬の遠吠え的な『自分だったら』という負け惜しみが何度か零れた後、漸く2人とも考え方を切り替えた。
 即ち、このゲームの本質は来た玉に反応するのではなく、如何に敵の思考を読み、誘導し、裏を掻かにあるのだ、と。
 来た玉に反応するのは出来て当然、としている辺りはこの2人ならではの前提である。ただ、戦術としては間違ってはいないのだが、瞳の何処を探しても笑みの欠片も見つからない戦場さながらの雰囲気を纏って取り組む姿は『みんなで楽しむ家庭用ゲーム機』の遊び方としては限りなく間違っていると言わざるを得まい。
 熟練者2人も、徐々に口数が減り目の据わり始めた初心者(素人に非ず)の雰囲気の変化に頬を引き攣らせていたが、そこは類友、さしたる時間を待たずに同類と化す。
 だが、洞察と駆け引きとなれば独壇場となるかと思われた恭也であるが、殺伐とした斬り合いとスポーツでは勝手が違うのか、単になのは・フェイトペアの以心伝心ぶりが上回っているのか、手の読み合いに移行しても一進一退の試合展開が続くことになった。
 結局、3度目のファイナルセットのマッチポイントで、現実であれば互いにタッチネットを取られているのでは?という距離でのスマッシュ&ボレーの打ち合いという在り得ない応酬の末、力んだ恭也がコントローラを握り潰すのと同時に、興奮したフェイトが無意識に零した帯電した魔力がコントローラ内の回路を焼き切り煙を吹いたのが決まり手となった。
 勝負の結果は壊れたコントローラ2つを前にがっくりと床に手を突くなのはの独り負けで幕引きとなった。


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