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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

396名無しさん:2018/03/05(月) 00:25:35
「…あの、美由希さん、どうしたらそんなに胸が大きくなるんですか?」
「へ?」
「おお、フェイトちゃん、ストレートやね。
 でも、秘訣とかあるんやったら私も知りたいです」
「そう言われても…
 私だって何が原因かなんて分からないよ。
 それに御神流の運動量だとちゃんと固定しておかないと本当に胸が千切れるんじゃなかってほど痛くなる事があるし、バランスを崩すしそうになる事もあるから剣士としては手放しで喜べないんだ。勿論、小さかったらそれはそれで悩みの種にはなったんだろうけど。
 そんな訳で、特に積極的に大きくなるのを望む訳にもいかなかったから、特別に何かしてた訳じゃないんだよ。筋肉の鍛え方だったらいくらでも相談に乗って上げられるけど、こればっかりは…」

 美由希としてもこの手の話題は得意ではないので避けたいところだが、その悩み自体は身に覚えがあるので無碍にもし難い。
 だが、確定していないからこそ未来と言うのであって、本人に分からないのだから他人にだって分かる訳がないのだ。『成長したら大きくなるよ』なんて無責任な事も言いたくない。その言葉に何の根拠も無い事が分かっているからこそ、過去に美由希自身もその言葉を返され、適当にあしらわれている様にしか聞こえなかった事を覚えているからだ。
 だからと言って、適切なアドバイスが出来る訳でもない。
 そもそも、100%胸を大きくする方法なるものが見つかっているなら、逆に世の女性はこれほど胸の大きさを気にしたりしないだろう。

「え〜と、とりあえず生物学的には脂肪の塊な訳だから、沢山食べる事、かな?」
「お姉ちゃん、身も蓋もないよ…」
「色気まであらへんな…」
「そ、そんな事言われても」
「でも、お腹とかにも付いちゃいませんか?」
「そこは運動するしかないと思うんだけど…、私の運動量はあんまり参考にならないと思うんだ」
「そう、だよね。
 お姉ちゃん、さっきの試合に参加出来るんだよね?」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「凄いですね。魔法なんかよりよっぽどファンタジーやと思いますけど」
「ファンタジーかなぁ?
 でも、確かに運動量的には参加出来ると思うけど、本当に参加だけだよ?」
「どう言う事?」
「三つ巴の戦いだとしたら、間違いなく最初に脱落するのは私だって事。
 不破君が10歳だなんて信じたくないよぉ」

 いつの間にか話題が『胸を大きくする方法』から逸れている事に気付くことなく、美由希の泣き言に3人は顔を見合わせた。
 恭也が負ける姿を想像出来ないのは確かだが、同じ剣術流派の先達と言う事で美由希の方が強いのだろうと漠然と考えていたのだ。

「ほんまに美由希さんより恭也さんの方が強いんですか?」
「え?そりゃあ、ずっと師事を受けてるんだから恭ちゃんの方が…、あ、ごめん、不破君の事だね。
 うん、強いよ。多少の相性の違いはあるかもしれないけど、私は恭ちゃんの本気をあそこまで引き出せた事ってほとんどないから」

 試合を思い出しているのか、美由希は遠くを見るような眼差しになっていた。
 自分より遙かに年下の少年の実力が自分を上回っていれば、大抵の者はショックを受けるだろう。
 だが、美由希が気にしているのは少々別の理由だった。

 高町恭也が10歳の頃と比べても、不破恭也はあまりにも強過ぎる。
 恭也が10歳の頃といえば、士郎が重傷を負って入院したため恭也が自ら師範代を名乗り美由希を指導しだした頃合だ。『師範代』は自称でしかなかったが、美由希を正しく導けいている事を考えれば、逆説的に御神流の基準に照らし合わせても恭也の実力は十分に高かったと言えるだろう。
 恭也は年齢からすれば不自然なまでのストイックさで周りの子供が遊んでいる時間を剣術に費やしてきたのだ。その恭也を越える彼は、一体どのような密度の鍛錬をこなしたのだろうか?それは、本当に健全な精神でいられたのだろうか?
 そして、もう一つ。
 普通ならあり得ない同じ素材という比較対照があるとどうしても考えてしまう。如何に10歳時点の実力に差があろうとも、肉体の成長期に順当に上達していれば兄と彼の実力差がこの程度ではなかったのではないのか、と。物心がついて刀を振れるようになってからの数年間と、成長期の十年間ならばどう考えても後者の伸び代の方が大きいはずなのだから。


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