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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

392名無しさん:2018/03/04(日) 23:49:27
7.認識



 模擬戦の観賞で体を冷やしたはやてを抱き上げた美由希と、同じ理由で歩けないなのはとフェイトを抱えた恭也が道場から足を踏み出すと、それを見越したように風が吹く。
 吹き付ける寒風の冷たさに、暖房器具が一切無い道場とは言え、風を凌げるだけでもマシだった事がよくわかる。
 悪い事に、道場に面した縁側にある窓を兼ねた引き戸は季節がら閉め切られて内側から鍵を掛けられているため、玄関からしか家の中に入ることが出来ない。月村家やバニングス邸ほどの豪邸ではないとはいっても、この北風では10mの遠回りはかなり辛いところだ。

「はやて、寒いからしっかりくっついててね?」
「ありあとはんでふ、では遠慮無く。
 …おお、一見しただけでは分からないこのボリュームと弾力は!」
「ちょっ!?
 はやて、何で胸揉むの!?しかも手つきが物凄くイヤラシんだけど!?」
「ハッ!?
 あまりの魅力に思わず揉みしだいてしもた!?
 ス、スイマセン!」
「ま、まぁ、分かってくれれば良んだけど…
 言葉遣いがハッキリするほど興奮してるみたいだし、ひょっとしてはやてってそっちの人?
 私はてっきり不破君なのかと…」
「シッ、シー!!」

 自業自得気味ではあるものの、その台詞にはやてが慌てて美由希の口を手で塞ぐ。
 だが、当然ながらそれでは空気を震わせた声が恭也に届くのを妨害する事は出来ない。

「ちょっと待て、流石に聞き捨てならないんだが。
 俺が女の胸を揉んで歩いてるような言い方をしないで貰えませんか?
 先日のはあくまでも事故です。胸を揉んで喜んでいるのはあくまでもはやてであって俺じゃありませんよ」

 真面目な顔で釈明する少年の顔を美由希がまじまじと見つめる。
 数秒掛けて自分の台詞を『胸を揉んで興奮するのは不破君なのかと思っていた』と解釈したのだと理解すると、はやての顔を、継いでなのはとフェイトの顔を確認して自分の解釈が間違っていない事を悟った。
 先程の遣り取りを他意もなくあそこまで見事に曲解するということは、自分がはやてに好かれている可能性を微塵も考慮していないのだろうが、ここまでくると鈍感と言うよりは日本語の理解力の問題ではないだろうか?

「…訂正した方が良い?」
「そのままで…お願いします」

 少々不憫に思い一応提案してみたが、やっぱり予想通り断られた。流石に恋する乙女としては、この想いはなし崩し的に知られたくはないだろう。
 泣き崩れそうなはやてに助け船を出したのは、恭也に抱き上げられているなのはだった。

「え〜と、あ、恭也君、やっぱり凄く汗かいてるね。服がぐっしょり濡れてるよ」
「流石にあれだけ動けばな。
 すぐに風呂に入れるから、少しくらい濡れるのは我慢してくれ」
「あ、それは全然平気だよ。ね、フェイトちゃん?」
「うん、暖かくて気持ち良いくらい。
 あ、恭也にとっては冷たいよね。ゴメンね?」
「…まぁ、構わないがな」

 恭也の返事はニュアンス的には冷たい事に対するものと言うより、喜んでいるようにすら見える少女達の態度に対するコメントだったようだが、2人に気付いた様子は無い。
 どちらも無邪気な事この上ないが、その2人で比較すれば無邪気さ加減はなのはの方に軍配が上がるようだ。

「でも、うちのお風呂に5人いっぺんって流石に狭そうだね、お姉ちゃん」
「…え?
 あの、なのは?5人目って誰?」
「あれ?お姉ちゃん一緒に入るんでしょ?」
「私が5人目?じゃあ、4人目は、って言うか、誰と入る気?」
「え?
 だから、私とフェイトちゃんとはやてちゃんと恭也君とおね『ええっ!?』っわ!?」

 なのはを除いた少女達の驚愕の叫びが響いた。


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