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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
386
:
名無しさん
:2018/02/24(土) 23:04:49
「まあ、相当嫌われてるようだしな。
ただ、…試合だけに集中していた俺とは違って、彼は周囲を見渡していた。あの子達に対してだけっていう可能性はあるし、それを余裕とは言わないだろうけれど、それでも意識を裂いてあれだけの動きを見せられてはぐうの音も出ないよ」
「へぇ…。
ところで、嫌われたってのは何だ?」
「面と向かって言われた訳じゃないが、彼は感情を排した剣士として理想的な在り方だからな。
10年後に相当する俺がこれでは怠慢だと思われても無理はないだろう」
「…そうか。
お前は日常であそこまで感情を殺せた事はなかったから『昔を懐かしむ』と言うより『過去の自分の姿に憧れてる』ってところか?
何にしても情けない話だな?」
「自覚はしてるよ」
「それなら絶対に隠し通せよ?
自分と同じ顔した奴が醜態さらして嬉しいはずがないからな」
「…?」
父の軽い口調の言葉の裏に強制するような意志を感じて、恭也が訝る様に僅かに眉根を寄せた。
何か気に障るような内容だったかと思い返してみても、特におかしな遣り取りは無かったように思う。聞き返したとしても、わざわざ言葉を紛らわせているのだから素直に答えてはくれないだろう。
とはいえ、恭也自身もこれ以上彼を失望させるのは望むところではないので反発する理由も無い。
「わざわざ念を押さなくても言う積もりは無いよ」
「それはなにより。
じゃあ、ちょっと出かけてくる。晩飯には帰るから」
「何処に行くんだ?
大して時間は無いよ?」
「わかってる。ただの散歩だ」
この寒空に、しかも僅かな時間で何処に行くつもりなのやら。
そう思いつつもそれ以上問い詰める事もなく、恭也は手つかずだった道場の片づけに取りかかった。
道場を後にした士郎はそのまま門を潜ると、道の先に小さく映る後ろ姿を認めてゆっくりとした歩調で歩き始めた。
『追う』と表現するにはあまりにもやる気のないその足取りは、先を歩く人物の目的地を知っている様にも、進路が同じになったのが単なる偶然の様にも見える。
実際、士郎は人影に視界の焦点を合わせるどころか視線を向けてすらいなかった。視線を固定することなく、ゆっくりと空や路面や生け垣など周囲の景色に目を向けている。
ただし、視界の端から人影が外れる事はない。
熟練の兵士が感じるはずのない赤外線スコープの照射に反応する様に、視線に反応される可能性を考慮した措置だ。当然、門を潜る時、どころか道場から出る時点で気配は消している。
(さて、これで上手く騙されてくれてるか?)
最大限の注意を払って前方を歩く希薄な気配の持ち主、不破恭也の後を追いながら、それでも士郎には自分の存在を隠し通せている自信が持てずにいた。
彼は特に気配を消していないはずだ。そして、遮蔽物のないこの状況なら、彼の位置は十分に士郎の索敵範囲内だ。それなのに彼の気配が周囲に溶け込み霞んでいる。
気配の感知と抑制はどちらか一方が突出する技能ではない。つまり、無意識にこれほどの気殺が出来る者ならば、当然、感知出来る範囲も精度も高いと考えるべきなのだ。
一見すると何の関わりもないように見える二人組は程なくして臨海公園に辿り着いた。
先行している恭也が公園内の海に面したベンチに座るのを公園入り口の下り階段を降りた所で見届けた士郎は、彼の斜め後方に位置するベンチへと足を向けようとして、
「うおっと!?」
右肩口に飛来した飛針を既のところで慌てて躱した。
背後で階段のコンクリートに飛針が弾かれる甲高い金属音を聞きながら、投擲者を睨みつける。
「随分と過激な挨拶だな」
「道場での打ち合いの時からずっとこそこそ覗き見している様な変質者に礼を尽くす謂われは無い」
(…筒抜けかよ)
予想以上の気配察知能力に士郎がこっそりと舌を巻く。
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