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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
383
:
名無しさん
:2018/02/24(土) 22:56:24
ただし、それを全て本人の意識の問題と一蹴するには、なのはの家族は特殊過ぎた。なぜなら、物心がつく前から見続けてきた兄や姉の動きこそがなのはにとっての基準なのだ。それがどれほど一般常識からかけ離れていようとも、孵化したばかりのヒヨコの如く刷り込まれてしまったなのはにとって、後天的に身に付けた常識程度では『運動が苦手』という自己暗示を払拭しきる事が出来ないのだ。
笑い話のようにしか聞こえないかもしれないが、放っておいたら餓死するまで本を貪り読んでいそうな重度の活字中毒者という超インドア派であり、真っ平らな道路で躓くなり足を滑らせるなりして転んでみせる姉が、眼前の剣劇に参戦出来るとなれば自分自身の欠陥を疑いたくなるなのはの心情も理解出来るだろう。
そして身体操作そのものは兎も角、父親譲りの非常に優れた動態視力と空間把握能力(死角に存在する物体を把握する、という意味ではなく、認識した空間内の物体の位置関係や相対距離を精度良く把握する能力)を持つなのはは、辛うじてではあるが、試合を目で追う事が出来ていた。そして、なのはが読み取る限り、試合は開始直後からずっと恭也が流れを掌握していた。
流石に振られた木刀の刀身自体が見える訳ではないが、なのはにはそれが何を目的とした斬撃であるのかは大凡の予測が出来るのだ。
例えば、先程の恭也の一撃は、兄に右へ躱させて次撃を撃ち込み易い位置に誘導しようとしていたのだ。恐らく兄がその通りに動いていれば続く3手で決着していただろう。ただし、そんな短絡的な誘導に兄が気付かないはずはなく、恭也はそもそも他の分岐まで想定して攻撃していた。左に躱していれば十数手で、右の木刀で上方向に弾いていれば20手以上で、受け止めれば…、といった具合に。
そんなふうにどの選択肢を選んだとしても『悪化』を強制する斬撃を恭也は開始直後からずっと放ち続けているはずなのだ。
それでも二人は未だに打ち合い続けている。
なぜなら、兄の選択が、最も軽度な悪化で済むものか、僅かでも有利になる選択をしているからだ。それが恭也の想定を越える対処法なのか、想定した上で黙認することしか出来ない選択肢なのかは剣術の知識が無いなのはには分からない。
そう。なのはに分かるのは、2つだけ。
試合の流れをコントロールし続けているのが恭也であること。
そして、そうであるにも関わらず、この戦いがずっと拮抗したままだということ。
戦技で勝っているのか、戦術に長けているのか、その両方なのか?いずれであるのかまでは分からないが、結論は変わらないだろう。
不和恭也より高町恭也の方が、強いのだ。
それは、恭也の強さを間近で見続け、肌で感じていたなのはにとっては驚愕に値する事実であり、『それだけ』でしかない事実でもあった。
恭也ですらどうする事も出来ない現実は確かに存在する。
己の無力さに打ちのめされ慟哭する彼の姿を何度も見てきたのだ。今更間違えたりはしない。
恭也に寄せる信頼は、単純な武力などではないのだから。
そして、戦闘経験の面でも、肉体性能の面でも、この試合の内容が全く理解出来ていないはやては、ただただ魅了されていた。
管理局員との模擬戦は基本的に魔導師を相手にしているためこのような展開にはならない。距離があれば切り合いになりようがないし、距離が詰まれば恭也に敵うわけがないからだ。
そして、ヴィータやフェイトは勿論のこと、近接特化で同じ剣士のシグナムが相手でもこういう展開にはならない。勿論、それが武器の特性であり、ひいては戦闘スタイルの違いであることははやてにも理解出来ているのだが。
ただし、だからといってスタイルが噛み合った時にこれほどの戦いになるとは想像もしていなかった。
先程、美由希がリビングで『夢物語にしか存在しないはずの魔法』に目を輝かせていたが、はやてにとっては止むことのない耳鳴りのような打撃音と、姿が霞むほどのスピードで繰り広げられている目の前の剣戟の方がよっぽどファンタジーだ。
目から侵入してくる光景に圧倒されていたはやての口から、在り来たりな、そして最もふさわしい言葉がこぼれた。
「スゴい…」
「 !?」
辛うじて聞き取れる程度の少女の呟き。
家の前を通る車の走行音に紛れてしまう程度の声量と、逼迫した感情を含まない声音から恭也が雑音として聞き流したその声の半拍後、自動人形達との命懸けの戦いで味わったのとは別種の緊張感を孕んだ試合が予想もしない形で呆気なく幕を閉じた。
「なっ!?」
驚愕の声を上げる恭也の視線の先で、これまでどれだけ引き離そうとしても小太刀の間合いから半歩と離すことが出来なかった少年が、同極の磁石が反発する様に一瞬にして3m程の距離をとった後で棒立ちになっていた。
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