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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

381名無しさん:2018/02/24(土) 22:50:07
 違う。
 予測されたんじゃない、俺が思考を誘導されたんだ。
 やっぱり彼は感情に翻弄されて判断を誤るような未熟さは無かったんだ。
 だが、一体どこまでがブラフだったんだ!?
 誘いに乗った事?
 勝利に執着する感情が透かして見えた事?
 リビングでの遣り取りから?
 それとも、俺が勝手に深読みしているだけで本当は全てが偶然の産物なのか?
 いや、そんな事より!

 次々に浮かぶ疑問と疑念に翻弄されかけた思考を一瞬で漂白すると、全ての神経と注意を眼前の敵に集中する。
 雷徹の衝撃に因り硬直している自分より繰り出した斬撃の力の解放に因り硬直している彼の方がコンマ零何秒かは次の行動の開始が早い。
 その十分の一秒に満たない出遅れは、速度を信条とする御神の剣士にとって勝敗を決するのに十分な時間だ。
 現状を冷静に把握した上で、尚諦める事無く敵を見据える恭也は自分が微笑を浮かべている事に気付いていなかった。




 木刀同士が打ちつけられる高く乾いた音が響く。
 時に強く、時に弱く、しかし間断無く響き続けるその打撃音は、ともすればうねりを持った連続した一音に聞こえそうだなほどの密度で閑静なはずの道場を満たし続けていた。
 いくら二刀流が手数を重視した戦法であり、手にしているのが日本刀の中でも短い部類に入る小太刀サイズの木刀であるとはいってもこの上もなく非常識だ。
 斬撃である以上、単に振り回している訳ではない。無論、腕の筋力自体は不可欠だが、一撃毎に全身の骨格や筋肉が連動していなければ威力は生まれない。そして素材が木材であっても『刀』としての強度を持っている以上は相応の密度=質量があるという事だ。動作の面でも質量の面でもドラマーがスティックを振るのとは訳が違う。
 そして、彼らの異常性に輪を掛けているのは、どちらも足を止めて打ち合っている訳では無いという事だ。
 一秒と同じ場所に踏み留まる事無く、壁も天井も足場にしながら道場内を縦横無尽に駆け巡り、目まぐるしく互いの位置を入れ替える。
 更に、そんな動きをしているにも関わらず小太刀の間合いを外れた事は一度としてないのだ。武器の特性上、弾き飛ばす攻撃ではないとは言え、これだけの行動範囲と移動速度からすればこれだけでも十分に異様である。
 そんな人間の規格を逸脱した戦いをはっきりと肉眼で捉える事が出来ているのだから、フェイトも高機動魔導師としての面目躍如と言えるだろう。
 尤も、見えるからといって、即、あの戦闘に参戦出来るなどと思い上がる程フェイトは馬鹿ではない。

 あの位のスピードまでなら、魔法の補助が前提にはなるけど、私とバルディッシュなら、五合や六合であれば多分何の問題も無く対応出来る。
 十合や二十合であってもなんとか凌げると思う。
 だけど、きっとその先で詰まれてしまう。
 …多分、単純な手数の問題じゃない。
 あれほどのスピードで動き回っているのが信じられないほどの手数に圧倒されて勘違いしそうになったけど、なのはの戦い方と根っこの部分が同じなんだ。

 『捌ききれないスピードと手数』ではなく『対処出来ない体勢や状況への誘導』
 それはスピードで劣るなのはがフェイトと五分の戦績を叩き出している重要な要素だ。


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