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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

369名無しさん:2018/02/24(土) 22:03:08
4.剣士



 八神家を出てから程なくしてなのはと合流した恭也一行は、現在高町家を訪問するべく歩みを進めていた。
 既に翠屋で高町夫妻に今晩のアポを取り付けており、店が閉まるまでなのはの家に遊びに行く事になったのだ。
 ちなみに、いつの間にやら恭也達3人は高町家の夕食に招かれる事になっていた。柔らかい物腰でありながら押しが強い辺り、リンディと桃子の共通点はかなり多いようである。
 経緯はどうあれ、強行に反対するほどの事では無いこともあって、決定事項に抗う者はいなかった。家への連絡も抜かりはなく、翠屋を出る前に恭也とフェイトはリンディに、はやては電話を取り次いだシグナムに夕飯をごちそうになる事を告げてある。
 電話を切る間際のシグナムの縋るような念押しの確認が印象的だった、とははやての弁。余程シャマルの手料理を恐れているのだろう。
 それは兎も角、町中から外れて周囲の喧噪が収まる頃、なのはが恭也に気になっていた事を問いかけた。

「そういえば、恭也君はお父さん達に何て説明する積もりなの?」
「どうもこうもない。転移事故で異世界から飛ばされてきた『赤の他人』だと話すさ」
「え!?何で『赤の他人』になるの!?」
「何でも何も、本人でなければ他人だろ?」
「よく似た世界とか平行世界とかの話は?」
「特にする積もりはない。
 それに、俺が居たのが理論上有り得ないとされていた酷似した世界だったとしても、平行世界だったとしても、俺は俺であってお前の兄ではない事に変わりはないんだ」
「でも、その…、お父さんは…」
「勿論、お前の父親と俺の父親も別人だ。
 容姿が似ていたとしても、同一人物じゃないなら他人としか言えないな」

 恭也の淡々とした口調になのはも口を噤む。
 確かに、その通りだ。
 だが本当にそれで良いのだろうか?
 例え八神家のみんなが家族として受け入れていても、ハラオウン家で暮らしていても、そうやって線引きしている限り恭也の心は独りぼっちのままではないのか?
 恭也がしたいようにさせてあげたいと思う反面、意識してか無意識でか距離を取ろうとする恭也の態度を寂しいと思ってしまう。

「ックシュ」

 やや重くなった空気に可愛らしいくしゃみが響いた。
 注目を集めた事にか、雰囲気を無視したような格好になった事にか、フェイトが居たたまれなさそうに顔を赤らめ首を竦める。
 一月中旬という時期柄、吹く風はかなり冷たいのだからくしゃみくらいは無理もない。
 歩いているフェイトがそうなのだから、恭也に車椅子を押されているはやては一入だ。恭也の忠告に従わずに見た目重視のスカートにハイソックスを押し通していたら芯まで凍えていただろう。
 フェイトには悪いが空気が軽くなった事に内心でホッとしながらはやては話題を変えることにした。

「フェイトちゃん、随分冷えるけど大丈夫か?」
「う、うん」
「そうか?
 まあ、私も恭也さんの忠告聞いとらんかったらヤバかったやろな」
「それは何よりだ。
 だが、まあ、なんだな。達磨になるのは遣り過ぎじゃないのか?」


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