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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
365
:
名無しさん
:2018/02/24(土) 21:51:27
リビングを再び包む静寂を破ったのは恭也だった。
「さて。
姓が変わったからといって俺自身が変わる訳ではないんだ。あまり深刻に考えないでくれ、と言ってしまうのは虫が良過ぎるか?」
「そんな事無いわ。
みんなも突然だったからちょっと戸惑ってるだけよ。
恭也君はもの凄く強引な所があるくせに、こういう所では遠慮し過ぎなの」
「そうだな。
恭也は横柄な態度やからかうのを控えて、もう少しだけ自分自信の欲求に素直になっても良いと思うが」
「ザフィーラは子犬の姿でその渋い声は違和感有り過ぎるな」
「そう言うのを控えろと言ってるんだ」
「欲求通りに行動して婦女暴行にでも及んだらどうする気だ?」
「恭也君、どうして私を見るの!?
もしかして私狙われちゃってる!?」
「2人しか居ませんからね。
シグナムを押し倒すって現実的じゃないでしょ?」
「消去法!?しかも、口調がもの凄くどうでも良さそう!!」
「『本能に任せて動かない』のも欲求だろう。見ず知らずの相手であろうと悲しませたくない、と思うこともな。
そもそも、今のお前にその手の欲望があるように思えんが?」
「肉体機能としては問題なさそうだし欲求も確かにある。
ただ、『想いを交わす行為』という認識が強くて強要する気にも手軽に済ませる気にもならんな」
「そうか。
…その認識は少々意外だな。古流というのはその方面でも動揺しないように、『単なる行為』として慣らしてるものかと思っていたが」
「概ね、その認識で間違ってない。
少なくとも未経験のままでは仕事を請け負う事を禁じられていた。弱点になりかねないしな。
俺が特殊なのは叔母達の教育の賜なんだろう。
俺が成人する時どうする積もりだったんだろうな?」
「俺に聞かれてもな」
「はい、そこまで!」
柏手を打ってまで話を締めたのはシャマルだった。
恭也が視線だけで続きを促すと、シャマルは溜め息を吐きながら窘めた。
「この家には年頃の女の子がたくさんいるんですから、直接的な表現じゃなくってもそう言う話題は謹んで貰わなくちゃ困ります!」
恭也が言葉に釣られるように周囲を見渡せば態度こそそれぞれ違うものの、シャマルの危惧を裏付ける光景が広がっていた。
はやては背伸びをしたいのか平気な表情を装ったまま頬を紅潮させている。
フェイトは顔色が見取れないほど俯いているのに耳や首筋まで真っ赤に染まっているので隠し切れていない。
ヴィータなど、怒りに顔を紅潮させている、と思わせたいようでしかめっ面になっているのに視線がさ迷っているので丸わかりである。
「確かに不用意だったか。
ところで、シグナムまで一緒になって赤面している様に見えたのなんて気のせいだ、うん。
間違いなく気のせいなんだ!
だからレバンティンを出すな!抜くな!構えるな!」
「からかうのは控えろと言ったそばからこれか…」
「恭也君のはコミュニケーションに近いから、あれを控えるとホントに無口な子になっちゃいそうよ?」
「…上手くいかないものだな」
「描写されてないからって、おわッ、ほのぼのと喋ってないで、と、ハッ!、こいつを止めろ!」
「やれやれ」
恭也が壁を背にして鍔迫り合いするところまで追いつめられた所でシャマルが取りなした。
小太刀の方が室内での取り回しで有利なはずだが、今回はシグナムの迫力勝ちだったようだ。それを表すように、恭也の顔が普段以上に仏頂面だ。
ただ、先程までの静寂は何処にも無くなり、普段の八神家の空気を取り戻していた。
ザフィーラは何処までが計算した行動なのかと問い質したくなる気持ちをぐっと堪える。
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