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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
363
:
名無しさん
:2018/02/24(土) 21:45:35
03.苗字
静寂。
家族全員が揃い、あまつさえ2名の来客を加えた八神家としてはあり得ないほどの重い沈黙がリビングに満ちている。
それほどの衝撃。
恭也が身内を大切にする事は共に過ごした2ヶ月に満たない生活で見せつけられている。
それは、粗末な『恭也自身の扱い』と比較すれば大切という言葉では表しきれないほどのものだ。
その恭也が、八神の姓を捨てる?
静寂を破ったのははやての守護騎士の将・シグナムだった。
「恭也」
声量が大きかった訳でも語気が強かった訳でもないシグナムの声にはやてとフェイトの肩がビクッと揺れる。
その反応に気付かない振りをしたまま、シグナムは確認しなくてはならない事柄を直球で恭也に問いかけた。
「それは、我々がお前の事を疎外したいと考えている、と思っているからか?」
「違う」
恭也の即答に、全員の不安が僅かに薄らぐ。
それでも、シグナムは留まる事無く、更に踏み込む。
「では、お前が我々との縁を切りたいという事か?」
「…」
今度の問いかけには、即座に答えが返る事は無かった。
その事実に全員が先程を上回るほどの衝撃を受けた。
顔面を蒼白にして唇を震わせているはやてとフェイトの反応が最も顕著だったが、問いかけたシグナム自身も両目を大きく見開いた。
「…何故だ!?
何故…」
動揺したままシグナムが譫言のように呟く。
言葉が続かないのは、浮かばないからだ。
縁を切りたいほど、見限ってしまいたくなるほど、自分達は恭也を失望させてしまったのか?
その悲観的な思考とは別に、冷静な部分が最も高い可能性に思い至る。
「まさか、自分の存在が私達の負担になると考えた訳ではないだろうな!?」
「ええ!?
そうなんか、恭也さん!」
「てめぇ、恭也!ふざけんなよ、コラ!」
シグナムの言葉に即座に反応したはやてと、即座に沸騰したヴィータが恭也を問い詰める。
「いや、待て、落ち着け。
済まん、そうじゃないんだ」
対する恭也は多少動揺している様で、片言の言い訳が返ってきた。
恭也が本当に身を引く事を決心していたなら、どれほどの非難にも罵声にも懇願にも動じる事はないだろう。
逆に言えば、今の恭也の態度こそが誤解である事を雄弁に語っているのだが、興奮している一同の中に気付く者はいなかった。
「どんな事態だろうが、そんな事してあたし達が喜ぶ訳ねぇだろが!」
「…そう言ってくれると思ったからその案は却下したんだ。
全員、落ち着いてくれ。今のは誤解だ」
ヴィータの激発を見て冷静になった恭也が、静かな声で否定したため、全員が睨みつける視線のままではあったが漸く聞く体勢を整えた。
「俺がお前達と縁を切りたがる事などあり得ない。逆なら兎も角な」
「私らだってあり得へんよ!」
「ああ、そう言ってくれるとも思っていたから最初に否定しただろう?」
「では、何故私が『縁を切りたいのか』と問いかけた時には無言だった?」
「うむ、言葉の意味を理解するのに時間がかかったんだ」
「日本語だっただろうが!」
「あまりにも想像の埒外だったから言葉が浸透しなかったんだよ!」
「でも恭也君、廃案にしたとはいえ身を引く事は考えたんでしょ?それなら予想外と言うほどではなかったんじゃないの?」
「『身を引く必要がある』のと『縁を切りたい』では180度違うだろう」
「じゃあ、恭也さんは私らと一緒に居たいって思ってくれてる訳やね?」
「…まあ、そういう言い方も出来るかもしれんな」
はやての念押しに対してこの期に及んでも直接的な表現を避ける恭也を全員がジト目で睨む。
勿論、それが恭也の照れ隠しであることが分かっているからこそのリアクションだ。
どうやら全員、誤解だったと納得出来たようだ。
しかし、そうなると最初の疑問に戻ってしまう事になる。
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