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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

355名無しさん:2018/02/24(土) 20:59:13
 恭也は冷蔵庫に向かうフェイトを見送ると、装ってもらったご飯に合わせてゆっくりと残ったおかずを平らげにかかる。気を使ってフェイトが戻るのを待てば、彼女が慌てるか気に病む事が分かっているからだろう。ご飯の量からしても流石に恭也の方が時間が掛かると予想出来た事も一因か。
 そんな風に落ち着いて食事する様が馴染んだ恭也と、彼のために甲斐甲斐しく嬉しそうに動き回るフェイト。
 その様子はまるで、

「なんだか新婚夫婦のやり取りみたいね」
「え…新、婚、夫婦?」

 ポツリと零したリンディの言葉に浅漬けを手に食卓に向かって来ていたフェイトの動きが停止する。
 色白な顔が桜色に染まり、夕焼けの様に赤味が差し、深紅へと至る。

「…リトマス試験紙みたいだな」
「恭也君、女の子に失礼なこと言わないの!」
「フェイト、大丈夫かい?」
「う、ん、…なんともなイヨ?」
「そんな顔で言われてもな…
 母さん、フェイトは純粋なんだからあまりいじめないこと」
「あら、幸せな人は少し位の冷やかしは刺激になって良いものなのよ?
 周囲にもそう見えてるんだって思えると、いっそう幸せを実感出来るもの」
「その見解にはかなり個人差が有りそうですがね。
 ところで、フェイトはこの状況の何に幸せを感じてるんです?」 
「恭也さん。
 人から聞いた答えは得てして身に付かないものよ。自分で気付かなくては意味が無いわ」
「…確かにその通りだとは思いますが、漫談から派生した様にしか見えないこの状況で言われても、誤魔化すための屁理屈にしか聞こえませんよ」
「同じ年頃のフェイトさんはこんなに素直なのに、どうして恭也さんはそんなにスレてるのかしら」
「身近にリンディさんと同系統の困った大人が居たからです」
「それじゃあしょうがないわね」
「そこで納得しちゃうんですか、リンディさん?」

 苦笑するエイミィにリンディが口元を掌で隠してホホホと笑い返す。
 そんなリンディの様子が昨日までの取り繕ったものでない事が分かってエイミィも小さく安堵した。

 昨日まではリンディから恭也への心配が見え隠れしていた。
 勿論、恭也の様子がおかしかったのはエイミィにも分かっていた。恐らく、初対面でもなければ彼の振る舞いがおかしいことに気付かない者は居なかっただろう。だが、リンディが心配するほどの危うさだったかと聞かれれば、エイミィは否と答えただろう。
 リンディは任務中であれば、たとえどれほど状況が切迫していようと絶望的であろうと、上に立つ者としての責務から強靭な意志で内心を誰にも悟らせない。
 それが、意図したものか、気を許しているが故なのか、家庭ではその隠蔽レベルが僅かに下がる。それでも、余程の事態に至った時に垣間見せる程度だ。
 そのリンディが隠し切れない程の心配事となれば、エイミィの目からすると単に考え事に耽っているだけに見えた恭也はもっと悪い状態だったのだろう。
 いくらなんでも事件中ほどの深刻さではなかったと思いたいが、リンディの方が観察力もあるし機密の高い情報も知っているのだ。
 勿論、一般的に思い浮かべる『精神的に危険な状態』とは違う可能性はあるが、楽観する気にはなれなかった。
 何の相談もなかったからにはエイミィに手伝えることではなかったのだろうが、だからこそ全容が分からず不安が膨らんだとも言える。
 だからこそ、リラックスしているリンディを確認する事で、漸く少しだけ安心できた。きっと、隣で呆れ顔を隠そうとしないクロノも内心では同じ想いだろう。


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