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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

351小閑者:2018/01/14(日) 11:06:20
 恭也の様に実年齢通りの容姿でなかったらアウト判定を喰らいそうな台詞を幸せそうに呟くフェイトと、心配を掛けた事に多少の後ろめたさが有るのかフェイトを振り払う事無く眉間に皺を寄せる恭也。

「アハ、ベタベタする〜」
「…それは一般的に嬉しそうに言う台詞ではない。不快に思って離れる場面だ」
「あったか〜い」

 会話が成立する事を諦めきった様に呟く恭也と、予想を裏切る事無く脈略の無い言葉を思いつくままに並べながら頬を摺り寄せるフェイト。
 恭也が視線だけ向けるとニマニマと笑うアルフの隣で、普段であればフェイトを諌めるであろう良識派のクロノは視線を逸らして見なかった事にしているようだ。昨晩の心配するフェイトの姿を思い出して少しくらい大目に見る気になったのだろう。
 こうなれば恭也は自力で状況を打開するしかない。
 尤も、その気にさえなれば他力など必要としないのも恭也なのだが。

「いい加減目を覚ませ」 ビシッ!
「イタッ!?」

 未練も逡巡も無くフェイトの額を中指で弾く恭也に、クロノとアルフが慌てふためく。寝惚けているところに目の奥で火花が散るほどの衝撃を受けたらシャレでは済まない。
 だが、当のフェイトは目尻に涙を浮かべて右手で打たれた額を押さえているが、蹲ったり床を転げまわってはいない。以前クロノが受けたものと比べれば、本当に軽い一撃だったようだ。

「一体、何が…?」
「そろそろ『年頃』と呼ばれる頃合の娘が寝惚けていようと男にしがみ付くんじゃない」
「え、恭也?」

 痛みで覚醒したフェイトははっきりした口調を取り戻したが状況は理解出来ていなかったようで、聞き間違える事の無い声に顔を上げて、間近にある顔に驚いて硬直した。
 不意打ちで至近距離から恭也に見つめられた事でフェイトの顔が急速に赤くなる。
 そんな何時までも身動きしないフェイトに、彼にしては珍しく辛抱強く言葉を重ねる。

「何時まで呆けている。
 はしたないから妄りに男に身体を寄せるものじゃないと忠告しているんだが?」
「…え?
 あ、ごごごごごめんなさい!」

 左手を恭也の背中に回したままになっている事に漸く気付いたフェイトが慌てて手を離して、一歩退いた。
 真っ赤な顔で視線を落として縮こまる姿は非常に愛らしく、普段着に着替えて自室から出て来たばかりのリンディにも『何か』があったと一目で伝わった様だ。

「おはよう、恭也さん。
 何があったのか教えて貰えないかしら?」
「おはようございます、リンディさん。
 アルフの散歩で汗を掻いたんです」
「それでフェイトさんが赤くなってる訳じゃないでしょ?」
「そちらは寝惚けて乱行に及んだだけです。
 身体を冷やしたくないのでこれにて失礼。詳細は本人からどうぞ。」

 恭也はそれだけ告げるとするりと自室へ滑り込んだかと思うとすぐさま着替えを掴んでUターンし、4人の間をすり抜けて洗面所へと入っていった。誰にも反応させる事の無い見事な転進だ。
 相変わらず凄いはずの技能を惜しみなくくだらない事に注ぎ込む男である。

「逃げたな…」
「逃げたわね。仕方ないから本人に聞きましょうか」
「あうぅぅぅ…」
「容赦無いな、母さん」


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