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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

348小閑者:2018/01/14(日) 10:58:35
 魔法とは物理法則の一時的かつ局所的な上書きによる事象の操作である。
 そして魔法の威力は単純な魔力量だけではなく物理法則を上書きするための術式の演算精度に左右される。同じ量の魔力を注ぎ込んだとしても構築した術式が杜撰であれば威力は下がり、精度が高ければ威力は上がる。
 そして、非殺傷設定の魔法は、その魔法の『威力』に相当する魔力量を被弾者から削り取り、尚且つ相応の痛みを与える。一時的なものであっても苦痛は精神を疲弊させるため、集中力を必要とする魔法の行使は勿論、戦闘行動自体に支障が生じるし、痛みが強ければ意識を奪うことも出来る。だからこそ、局員を殺傷する事に躊躇の無い犯罪者相手に『殺す事無く逮捕する』などというある意味『気楽な方針』が罷り通るのだ。
 ただし、非殺傷設定の魔法であっても破壊力自体は存在する。
 物質を透過して精神だけを攻撃出来る魔法に変化させる訳ではない代わりに、物質であれば紙の盾すら貫通出来ない魔法に劣化させる訳でもない。
 では、分厚い鉄筋を破壊出来る魔法が何故生物の肉体を破壊出来なくなるのか?
 また、保有する魔力で相殺しているという説明が正しかったとすれば、保有量を上回るほどの威力の魔法を受けた場合は肉体を損傷することになる。だが、実際にはそんな現象は起きたことがない。それは何故なのか?
 これらの疑問に対する明確な回答は、管理局でも出せていないのが実情だった。
 開発された当初には当然のように「そんな得体の知れないもの使っていいのか!?」という意見が出た。だが、余程の実力差か兵力差が無い限り戦場で加減など出来るはずがないし、「犯罪者の生死など関知しない」と言い切ってしまえば一武力集団に成り下がりかねない。結局のところ、ブラックボックスであろうと成果の出ている手段を死蔵させる余裕は今も昔も管理局には無いのだ。
 いい加減に聞こえるかもしれないが、仕方の無い面も含まれているのも事実ではある。
 科学的手法とは発生した事象を様々なアプローチで解析し、理論を構築し、実験で正しさを証明するプロセスを言う。つまり結局のところ、多くの場合『理解』とは『現象』の後についてくるのだ。ニュートンが発見しなくても万有引力は働いていたし、コペルニクスが証明しなくても太陽系の惑星は太陽を中心にして公転していたのだから。
 ちなみに、AAAランクのフィールド系魔法防御であるアンチマギリングフィールドに対して有効な『魔法で発生した効果』をぶつけるタイプの魔法(そこらの岩を加速させて打ち出すスターダストフォールなど)は流石に非殺傷にすることは出来ない。精々、属性付加されている魔法までだ。

 閑話休題
 昨日の模擬戦でなのはとフェイトが連携した殲滅魔法とはやての戦略級魔法を連続して受けた恭也は、意識こそ取り戻したもののそのまま医務室にかつぎ込まれた。
 クロノの経験上、一般的な上級魔導師であっても昏倒したまま最低でも丸二日は意識が戻らない程のダメージの筈なのだが、一同が何の根拠もなく想像していた通り、恭也は夕方には起き出して帰宅した。
 団体戦から一夜しか明けてないのだからフェイトやアルフ(恐らくは更にはやてとなのは)の心配は尤もではあるのだが、既にクロノには恭也の行動にいちいち目くじら立てる気にはなれないというのが本音だった。
 勿論、本来であれば役職上クロノも見過ごして良い立場にはいない。だが、あらゆる事柄に関して恭也と自分たちでは物差しが違い過ぎるように思えてならないのだ。ミクロン単位の物体の長さを巻尺で計ろうとしているというか、横断幕の文字を顕微鏡を使って読もうとしているというか、とにかく的外れな印象ばかり付きまとうのだ。
 それに、こう言ってはなんだが、正直なところ恭也であれば所謂『周囲の大人』が心配する必要や意味は無いと思っている。
 こと、肉体の運用に関する恭也の知識や見識は、医療に関する知識に特化している医者を上回る可能性すらありそうだ。
 勿論、『だからほっといても大丈夫』という訳ではない。『医者の不養生』という言葉がある通り、知識が有っても実行しなければ意味は無い。その意味では自分自身を蔑ろにしているようにしか見えない恭也は、途轍もなく危険な思想を持っていると言ってもいいだろう。
 では、何故クロノが心配していないかと言えば、フェイト達が彼の事を心配しているからだ。


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