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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

341小閑者:2017/12/24(日) 17:50:50
 ヴィータの視界の端に、ディアボリック・エミッションの効果範囲からぎりぎりのタイミングで抜け出した恭也の姿が映る。
 その場所は確かに本人が到達出来ると申告した通りの位置だが、正直言って半信半疑だったヴィータとしてはホッとしたのが半分、呆れたのが半分といったところだ。誰が考えても樹木が障害物になる雑木林を、それらを躱しながら疾走して辿り着ける距離ではないと思うのだが。
 『恭也に対する疑問・驚愕・否定といったあらゆる思考は模擬戦が終了するまで仕舞っておけ』というシグナムの忠告に珍しく素直に従ったヴィータが視線を戻す。
 耳を劈く轟音と視界を閉ざすほどの魔力流の中に、結局逃げられなかったのか爆心地に対して盾となるようにシールドが張られているのが微かに見える。魔力光からすると書庫の司書のようだ。
 ユーノと接点の無いヴィータは、どうして司書が模擬戦に?と思わなくは無いが、実力が劣る者がこの場に居るはずがないし、実際に開幕直後にシグナムのシュランゲバイセンを受け止めていた事からしてもかなり強固なシールドを持っているのは理解している。
 だが、これで連中はそう簡単には離脱出来なくなった。
 一度完全な守勢に回ったならこちらの波状攻撃が終了するまで耐え切るしかない。そして自分達の攻撃は耐え切れるほど温くは無い。

 だが、はやての魔法の終了に被せてギガントシュラークを放つべく上空へと移動したヴィータは、横合いから思いもよらぬ強襲を受けた。
 寸前で襲い来る金色の一閃に気付いてグラーフアイゼンで受け止めるが、体勢が不十分だったヴィータは勢いを吸収しきれず弾き飛ばされ、更に追い討ちで放たれた桃色のバスター砲で林へと叩き落された。

「ヴィータ!?」

 グラーフアイゼンが自動展開してくれたパンツァーシルトで直撃だけは避ける事が出来たが、今のはやばかった。完全な不意打ちだったから防げただけでも善しとするべきかもしれないが、不意打ちされた原因が慢心では言い訳のしようがない。
 おまけに先程聞こえた悲鳴じみた叫びははやての声だった。なのは達を効果範囲に封じる事が出来ても出来なくても、ここで総攻撃を掛ける予定なので恐らく全員で付近まで来ていたのだろう。
 はやてにカッコ悪いところを見られた恥ずかしさと、後でシグナムと恭也から慢心を指摘される悔しさが怒りへと転化されて急激に燃え上がる。
 はやての魔法の持続時間は残り僅かだ。即座にギガントシュラークを放つために攻撃に適した位置に目星をつけると怒りに任せて木々の間から飛び出した。

「こんのヤロー!!」
「まあ、落ち着け」
「な!?」

 飛行魔法で飛翔するヴィータを横手から伸びた腕が絡め取った。
 勿論、ヴィータの驚愕の叫びは、腕の主がディアボリック・エミッションの反対側に居るはずの恭也だった事に対してだったが、その驚きは直ぐに上書きされてしまった。
 全力で飛翔しようとしたヴィータに恭也がしがみ付いたかと思ったら、縺れる様にして空中でくるくると回転した後、2人一緒に地面へと着地してしまったのだ。
 移動しようとする物体を押し止める方法として、物体に加わっている力に対して正反対で同じ大きさの力を加えるのが最も単純だ。
 だが、ヴィータの飛翔魔法の推力に対抗出来るだけの力は魔法の補助が無い恭也には出す事が出来ない。
 ならばどうやったのかと言えば、恭也は幾つも足場を生成し、それを蹴ってヴィータの推力とは別方向から力を加えることによって進行方向だけを操作したのだ。
 結果として、着地した2人は恭也がヴィータを背後から覆い被さるように抱きしめる体勢になっていた。

「ちょっ、恭也!何すんだ!放せ!」
「落ち着けと言うに。
 向こうにはハラオウンやなのはがいるんだ。追撃もせずにお前が突っ込んでいくのを待っているからには罠が仕掛けてあるに決まってるだろうが」


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