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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

340小閑者:2017/12/24(日) 17:49:46
 揃ってアルフに言い負かされる様子を見て、クロノも漸く納得出来た。
 クロノの持っていたシグナム達の印象は間違っていた訳ではないようだ。単に、あの2人が、いや恐らくヴォルケンリッター全員が恭也へ無条件の信頼を寄せているということだろう。
 書の主であるはやてとほとんど同等の信頼度と言うのは信じ難い話だが、だからこそフェイト達が不機嫌なのだろう。主従の関係にある訳でもない恭也を懐深くに置いているということなのだから。

 自覚の程は不明だが、それは仲間や戦友の範囲なのだろうか?
 いや、八神家で一緒に暮らしていたのだから家族の一員とは思っているのだろうが、下手をすればもっと親密な…

 そこまで考えを進めたクロノは、溜息と共に下世話な思考を吐き出した。
 人間関係は当事者同士が決めることだ。相談を受けたならまだしも、想像だけで邪推するなどワイドショーのゴシップ記事を囃し立てる姦しい主婦と変わりが無い。
 今考えるべきは均衡している現状を打破する方法、引いてはこの模擬戦に勝利する事だ。
 とは言え、敵もさる者、明確な弱点や連携の穴など見つけられそうに無い。

「地道にいくしかない訳か」

 流石に攻略法なるものを期待していた訳ではないつもりだが、それでもこれほど薄氷を踏むような戦いが続くとなれば喜ぶ気にはなれない。
 尤も、格下相手に悠々とした戦いなどしていたら腕が鈍る一方だ。実力の拮抗していて何をしてくるか分からない相手との模擬戦はクロノにとっても非常に良い糧となるはずだ。
 ただし、魔法に関する高度な技能とか巧みな応用といった意味ではなく、全く異質な戦闘方法の恭也を相手にするのは、本当に実戦の様で神経が磨耗していく。…理想的な模擬戦のような気もするが、この精神的疲労は素直に認め難いものがあるのだ。

 クロノの妙な葛藤が決着するのを待っていたかのように、遠方で急速に魔力が高まりだした。
 全員でそちらに向き直りながらクロノが声を張り上げる。

「来るぞ!ユーノ!」
「了解!」

 ユーノが返事と共に即座にシールド魔法を自分達の背面側に起動すると、ほとんど同時にシールドを蹴り付ける音が響いた。
 振り向くと突進の勢いを吸収するために障壁に着地した恭也がとんぼ返りで地面に降り立つところだった。
 激突しなかっただけでも立派と言えるタイミングで突然発生したシールドに対しては、流石の恭也も衝撃を透過させるような高度な技は出せなかったようだ。
 ここまではクロノの予想通りだ。付け加えるなら、恐らく現在の恭也は単独行動なのでシグナム達が到着するまでに5人がかりで何としてでも討ち取らなくてはならない。
 シールドを背後に展開した時点で、恭也にもこちらの意図が読めているだろう。ここが勝負の分かれ目になる!
 だが、またしても恭也の行動はクロノの想像を軽々と超えていった。

「弾丸激発!」
【Rock'n Roll!】  

 恭也のトリガーボイスに不破の音声確認が応じると、即座に恭也の魔力量が跳ね上がる。そして、シールドを隔てたクロノ達が行動を起こす前に、身体強化を発動すると同時に背後に向けて猛烈な勢いで疾走を開始した。

「な!?」

 ユーノのシールドを盾にして脇目も振らずに、倒れないのが不思議なほどの前傾姿勢で背中を向けて逃走する恭也に、全員が呆気に取られる。
 一撃離脱にしてももう少しスマートな逃げ方があるだろうに。その考えがある可能性を想起させてクロノの肌を粟立たせた。

「に、逃がすか!」
「追うなアルフ!砲撃が来る!全員散開!離脱しろー!!」

 クロノの焦りを滲ませた怒声が響いた直後、視界上方に大きな黒い魔力塊が出現。一気にバレーボール程度のサイズまで凝縮されたかと思うと、反発するように爆散し周囲一帯を魔力の嵐が荒れ狂った。


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