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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

337小閑者:2017/12/24(日) 17:47:42
「全員くれぐれも周囲の警戒は怠るなよ。いつの間にか首筋に刃を突きつけられてリタイアなんて事も十分有り得るんだ」
「経験者の言葉は重いねぇ」
「アルフ、駄目だよ」

 揶揄するアルフをフェイトが窘めると、堅い雰囲気が僅かに緩んだ。
 今、クロノ達は恭也の言葉通り、視界の開けた空間で背中合わせに立つことで互いの死角を補っている。
 レベルの高い戦闘では互いに攻撃を止めて出方を伺いあう事がある。敵の手を読み罠を見破り逆に仕掛ける。物理的・魔法的な物だけでなく逃げられない状況や力を発揮出来ない配置に誘い込むことも含めた罠は、人数が多いときほど重要になってくる。
 専門の指揮者がいない小規模な部隊戦では、リーダー自身も戦闘に参加するため、途中経過を把握して戦術を修正する必要がある。いくらマルチタスクを習得していようとも指揮官のメモリが決まっている以上、戦闘行動と平行して立案するより効率も内容も良くなるのは自明だ。

「指示しておいてなんだが、やはり落ち着かないな」
「そりゃあそうだろうね。素人の僕でも、こんな見晴らしのいい場所で作戦会議する人がいないことくらい想像がつくよ」

 ユーノの指摘通り、こうした場合には敵に発見されにくい場所、狙撃が出来ない遮蔽物で視界が閉ざされた場所で行うのがセオリーだ。
 実際、八神一家はこちらの視界には入っていない。状況としては『一方的に奇襲しても構いませんよ』と宣言しているようなものだ。

「でも、クロノ君の言う通り、今は恭也君がこっそり近付いてくるのが一番怖いもんね」
「魔法だったら攻撃でも捕縛でも、起動の前に誰かが気付いて対処出来るかもしれないけど、恭也の接近には気付けそうにないからね」
「臭いで探せたら良かったんだけどねぇ。何でここは室内なのに風まで吹いてんだい」
「リアリティを追求しているからな」

 森林を想定してデコレーションされた訓練室は微弱ながらも風が吹いていた。だからと言って臭いを嗅ぎ取れないから風下にいるのかといえば、それもやっぱり確証が持てない。

「愚痴はそれくらいにして、集団戦をやってみて気付いた点があれば上げてくれ」
「はい」
「なのは、挙手はしなくていいから。隣じゃなかったら見えなかったぞ。
 念のために言っておくが、くれぐれも話に夢中になって周囲の警戒を怠らないでくれよ」
「わかってるよ!
 私が気付いたのは恭也君がグループでの集団戦でも活躍出来るってこと」
「具体的には?」
「えっとね、ユーノ君に協力して貰ってシグナムさんの動きが止まった瞬間にヴィータちゃんに攻撃しようとしたことがあったんだけど、恭也君は他の場所の戦いも見てるみたいで、魔法を撃つ瞬間に飛針をレイジングハートに当てて逸らされちゃったんだ」
「飛針?確か、恭也の使うニードルだったな。
 …偶然、じゃあないんだよな?」
「…3回あったよ?」
「ウソッ、3回も?
 なのはがシグナムの相手をしてるときは私とアルフでずっと追いかけてたから、そんな余裕は…無かった、と思うんだけど」
「そこで弱気になられても困るんだが…
 投げてるところは見ていないのか?」
「勿論見たよ。実際にはあたしやフェイトに何回も投げてたしね。
 あたしが食らったのは加減してくれてたからあたしのバリアジャケットでも弾ける程度の威力だったけど、フェイトの攻撃魔法を撃墜するときは本気で投げてたね。
 で、魔法の迎撃以外にあたし達に向かって本気の投げ方したやつに限って外してたね」
「そ、そうなの、アルフ?」
「あぁっと、フェイトの目では追いきれないかな?
 スピードが全然違ってたよ。逆に言えば加減してた方は全部命中してたんだけど。
 外したやつもどうせ何か企んでるんだろうとは思ってたけど、なのはに向けて投げてたとは思ってなかったなぁ。
 にしても、2回は気付いたけど、3回目は…ああ、フェイトのプラズマランサーを相殺した時の奴に混ざってたのかな」
「プラズマランサーを!?
 シグナムだって魔法で迎撃してたのに、ただの金属の針でどうやって!?」

 ユーノが本筋から外れてしまうと分かっていながらも、身体ごと振り向いて聞き捨てならないアルフの台詞に食いついた。
 まあ、無理も無いことではあるのだが、だからと言って警戒を解いていも良い理由にはならない。


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