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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

336小閑者:2017/12/24(日) 17:47:09
『生後半年の赤子の分際で何を生意気な。
 せいぜい失敗を繰り返して成長してみせろ』

 カチン、ときた。
 背伸びする子供を馬鹿にするような言葉に、敵愾心を煽るような口端を持ち上げた表情までサービスしてくれたのだ。10歳そこそこの子供にここまであからさまに鼻で笑われて頭に来ない者などそうそういないだろう。

 必ず報いてみせる。
 恭也自身も悩み事を抱えていたその時期に、ここまで分かり易い敵役を演じさせたのだ。はやては勿論のこと、恭也自身にだって欠かせない存在だと思わせるほど成長してみせてやる!

 そんなポーズとは裏腹に、4人の脳裏には別の想いがよぎる。
 からかいながらそっと導き、憎まれ役を演じてでも背中を押し、道を誤ろうとすれば正面から立ち塞がり、常日頃から影に佇み優しく見守る。
 知識として知る理想的な親の在り方を、気負う事も違和感を感じさせる事も無くこなしてみせる恭也だが、彼自身が年端もいかない子供なのだ。
 はやてから聞いたクリスマスの出来事は、細部を伏せた触りだけでも恭也の内面の歪つさを伺わせるには十分な内容だった。
 悲しい想いをした人ほど他人に優しくなれる、そんな言葉で片づけられるレベルは遠の昔に越えている。
 シャマルなど、その一端を垣間見ながら手を拱いていることしか出来なかった事すらある。

 一日でも早く、恭也を守れる存在になりたい。

 魔導書が消失し契約が破棄されて尚はやてを主と仰ぐように、制約とも契約とも無関係な純粋なその想いを胸に秘める。

<話を戻すぞ。
 今、相手側は遊撃よりの前衛を務めてるフェイトも含めて一塊になってる>
<一塊?馬鹿な、一網打尽になりかねない布陣にするはずがない。
 幻術だ>
<それはないな。気配の位置が一致してる>
<シグナムの意見は尤もだけど、この場合私でもそうするわ>
<何言ってんだよシャマル!こっちにははやてが居るんだから、どう考えたってそんなの変だろ!>
<通常なら有り得ない布陣と言うことはイレギュラーを考慮していると言うことか。…恭也だな>
<ああ、そうか!ザフィーラ冴えとるな!
 …ん?でも恭也さんと何の関係が?>
<今居る位置と関係してる筈ですよ。ね、恭也君?>
<離れてる奴が居たら暗殺、もとい、忍び寄って個別撃破しようと思っただけだ>

 恐らくクロノは、はやてが広範囲型の攻撃魔法を起動しようとも魔力の収束を関知してから対処出来ると考えたのだろう。
 その考えに思うところがないでもないが、確かに気配を消して忍び寄る恭也よりは対処のしようもあるだろう。

<なるほどな。技能面でも戦術面でも恭也の特性を良く理解している>
<チッ、ハラオウンめ、小賢しい奴だ>
<それは…ちょっと>

 はやては暗殺紛いの戦法に悪びれる様子の無い恭也にツッコミを入れたいところだったが、それが見当違いである事くらいは理解出来た。クロノもそれを肯定しているからこそ、考慮した配置をとっているのだ。
 そもそも、模擬戦とは実践を想定した戦いだからこそ意味があるのだ。つまりは、卑怯臭い手を採用する可能性を考慮していない事の方が問題なのだ。
 無法者を取り締まる職に就く以上、自分が採用するかどうかは別として、こういった戦法にも対応出来るような柔軟な思考は必要不可欠だろう。
 思考が一般的な良識を持つはやてにとって、学ぶべき事は山の様に積まれているようだ。


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