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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
333
:
小閑者
:2017/12/24(日) 17:45:21
「映像に映せない要素があると言うことよ。
彼と対戦した人が記録を見ると、必ず『この記録はおかしい』って主張するの。顔を青ざめさせて『瞬間移動か幻惑魔法を使ってたはずだ』って。
クロノ曰く、遭遇戦で見せた『気配を消す』っていうのと似て非なるもの、モニタ越しでは分からない何か、だそうよ」
「…恭也君のコメントは?」
「『頑張って躱してます』」
「…そりゃあ『余裕で躱してます』なんて言われても困るけど…」
「惚けてる、と断言するのも難しいのよ。
なんせ、恭也さん自身が特殊な技法と認識していない可能性を否定しきれないんですもの」
やはり『恭也だから』で済ませるより他に無いようだ。
「なるほど。
『肺から吸い込んだ空気からどうやって酸素を抽出するのか』なんて化学式以外で答えようが無いものね」
「レ、レティ?
どうして例えが物理現象レベルなの?この場合『心臓の動かし方』くらいだと思うんだけど…」
「そうかしら?
純然たる運動能力だけでAランク以上の魔導師と張り合ってるのよ?自律神経くらい制御してそうじゃない?」
レティの言い分にリンディが絶句する。
彼女が真顔で言い切った事に驚いている訳ではなく、心の片隅でちょっぴり同意してしまったからだ。
我に返ったリンディは小さく咳払いするとレティを小声で嗜めた。
「いくらホントの事でも口にしちゃいけない事くらい分かるでしょ?」
「…そうね、気を付けるわ」
(何を口走ってるかは指摘しない方が良いのよね?)
控え目な毒舌なのか、礼節の敷居が下がっているのかは判断に迷うところではあるが、何れにせよリンディにしては珍しい失言にレティも心の中だけで自問する。
リンディは良く言えば思慮深く、悪く言えば計算高い面がある。彼女はほわわんとした言動に反して失言や失態が無いのだ。レティの様に付き合いの長くない者の中には『ほわわんとした言動』が既に演技なのではと疑う者も居るほどだ。
(こんな単純な失言をするなんて誰かの影響かしら)
そんな風に考えるレティの視線の先にあるモニタには、苛烈な魔法が飛び交う戦場を飄々と駆け回る非常識が映されていた。
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