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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

332小閑者:2017/12/24(日) 17:44:46
 リンディの呼び掛けに別室で戦闘の記録・解析を進めていたエイミィが空間投影ディスプレイ越しに元気に返事を返した。

『彼の回避能力にはまだまだ不明点がたくさんあるんですけど、前回までの戦闘で分かったことを説明しますね。
 真っ先に目に止まるのは、単純に行動による回避だと思います。
 非常識なほどの動態視力と視覚情報の認識力、その情報を活用出来る頭脳、更には頭脳が導き出した回避のための無理難題を実現させる反射神経と運動能力。人間の域は越えちゃってますけど、この辺りまでは誰もが行う回避行動のグレードアップ版です。
 勿論、誘導を伴わない砲撃や射撃と言った音速に迫る直射魔法を躱せるのは、魔法が物理面に転化される際の予兆や対戦者の行動・表情から攻撃の射線やタイミングを、戦局や直前までの攻撃・回避・防御と言った戦いの流れから攻撃手段やその意図を、その他諸々を見抜く洞察力が予知能力レベルだからこそなんですが。
 …分かってます。『恭也君だから』の一言で片づけるのは無責任だってことは。
 でも、前回までの記録は恭也君の運動能力が際だってたもので、拾い出した特異点が悉く彼個人の肉体性能って結論に行き着いちゃったんですよ。
 解析するための取っかかりに煮詰まっちゃってたんですよねぇ』

 エイミィの澱み無い説明は、技術者としての敗北宣言へと急降下していった。
 記録したデータは、いくら詳細であろうとそのまま何もしなければ数値の羅列でしかない。並んだ数値から意味を見いだす事こそが技術屋の腕にかかっていると言える。それが前例のない事象であれば尚更だ。
 また、前半の説明部分についてもリインフォースとの戦いの説明としては納得出来なくもないが、今回の模擬戦での回避方法を説明するには明らかに言葉が足りていない。
 逆に言えば、前回までと今回とを比較して明らかになった差違こそが解析のヒントになるはずだ。
 レティの期待を裏切ることなく、エイミィは自身の非凡さを示して見せる。

『でも、今回の模擬戦で漸く一つ明らかになりました。
 恭也君の動きは緩急の落差が物凄く大きいのにその変化が驚くほど滑らかなんです。
 つまり、彼の動きから自分の攻撃の届くタイミングに彼が居る場所を予測すると、間に合わなかったり早過ぎたりするんです』

 言われて訓練室の各所を映す分割されたモニタに目を向けるとふらふらと動き回る恭也の姿が俯瞰で映し出されていた。
 他のメンバーより明らかにロングレンジで映されていたのは、開始当初、恭也の姿がモニタ画面から度々フレームアウトしていたからだ。それは管理局の所有するコンピュータが物理面・戦術面から予測して自動追尾するカメラを振り切っていた事を意味するのだが、その様なカラクリがあったとは。
 カメラの動きは機械的なもののはずだ、と思いがちだがそのプログラムのアルゴリズムを考案したのは人間だ。
 恭也の技能は人間を想定したものなので、プログラマーも術中に嵌まるのは避けられなかったということなのだろう。

 彼の行動は確かに非常識以外の何物でもないが、そこで思考停止してしまってはエイミィの言葉通り責任放棄になりかねない。レティも思いついた攻略法を上げてみる。

「変化を読む事は出来ないの?」
『残念ながら変化についても綺麗にランダムにしたり、規則性を持たせておいて相手が慣れてきたのを見透かして突然別のパターンにしたり出来るみたいで。
 付け加えるならパターン自体もバラエティに富んでます』

 流石に簡単に攻略させてはくれなようだ。”豊富”と言ったところで限度はあるのだろうが、それでもパターンを見抜いた頃には変えてくるだろう。ここでも予知能力じみた洞察力がやっかいな壁になる。
 恭也自身も決定力になるような攻撃力を持ち合わせていない事を自覚している筈なので、援軍待ちか敗走援護の時間稼ぎ以外で敵に姿を晒し続けることはしないはずだ。全ての回避パターンを見せた頃には彼の目的は達成されているだろう。
 ランダム回避を封じる事が出来たとしても反射神経便りの行動回避だって十分以上にやっかいなのだし。

『もう1つおまけに、カメラ映像には引っかからない要素もあるみたいでして』
「引っ掛からない要素?」

 言葉の意味を図りかねたレティの疑問にリンディが口を挟んだ。


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