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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

325小閑者:2017/12/24(日) 17:36:43
「まぁ、自分なりの答えを見つけるしかないんでしょうけど…
 あと3年でうちのグリフィスもああやって『人を幸せにするには』なんて悩みを抱えるようになるのかしら」
「さぁ、どうかしら。
 少なくとも、クロノが10歳の頃には目の前の事に掛かりきりで周りを見渡せる余裕は無かったわね」
「普通はそうよねぇ。特に男の子は精神的に成熟するのが遅い傾向があるし。
 それにしたって私達だって自分の存在意義や行動に疑問を持つようになったのはもっと後だったわよね?」
「ええ。
 あの頃はまだ純粋に『管理局の正義』を信じていられたと思うわ。管理局員として悪い人達を捕まえていけば、きっとみんなが幸せになれるって…。
 恭也さんは、知ってるのかしらね…」


 リンディが声に出さなかった言葉を察してレティも口を閉ざす。
 勧善懲悪が罷り通るほど世界は優しくないと、世界は想像以上に汚く汚れているのだと、そう思い知らされたのは何時頃だっただろうか。
 自覚の無い悪意。悪意の隠された善意。醜悪極まりない善意。『価値観の違い』の一言で片付けるには異質過ぎる心の在り方。…自分自身の中にも存在する心の一面。
 モニタに映る表情を表す事のない少年は、そういった世界の醜さまで知っているのだろうか。
 そんなものは知る事無く過ごして欲しいと思う反面、生きていけば何時かは必ず直面するものだとも分かっている。社会に暮らす以上多かれ少なかれ向かい合わなくてはならないそれは、管理局員になることでより具体的でより極端な実例を『事件』と言う形で付き付けられる事になるだろう。
 自分が例外でない事を知ったレティが、それでも絶望せずに済んだのは身近な友人達の小さな優しさに気付けたからだ。
 何れやってくるその時に、深い闇と対を成すように暖かい光が存在する事に彼らは気付けるだろうか?
 きっと大丈夫だ。
 屈託の無い笑顔を浮かべる少女達と柔らかい視線で見守る少年を見ていると、根拠も無くそう思える事がレティを少しだけ勇気付けてくれた。










「はやて、訓練室の予約時間は決まってるんだ。
 いい加減に始めないと決着が付く前に切り上げる羽目になるぞ」
「はーい。
 じゃあ、クロノ君の小言が本格的になる前に始めよか」
「好きで言ってる訳ではないんだが…」
「あはは、ゴメンゴメン、冗談やって。
 それじゃあ改めまして、これより」
「済まんが、少し良いか?」

 事ある毎に脱線していた模擬戦が漸く始まろうとしたところで、またもや横槍が入った。
 だが、発言者が誰なのか気付くと、全員が口を挟む事無く次の言葉を待った。
 一斉に集まった視線に怯む様子も無く、思考を纏めきれていないのかどこか茫洋とした口調で恭也が続く言葉を口にした。

「はやては、何故特別捜査官を志望したんだ?」
「え?」
「ハラオウン提督からシグナム達と離れずに済ませる方法として管理局員になる事を提示された事は予想出来る。
 だが、刑罰の軽減が管理局への奉仕であるなら他の部署でも問題ないはずだ。
 あの方なら、お前達が如何に垂涎モノの戦力であろうと本人の意思を無視するとも情報を隠して利己的に思考を誘導するとも思えない。戦闘行動に係わりの無い部署も同時に提示してくれたんじゃないか?」

 想像もしなかった恭也の発言内容に、はやては咄嗟に言葉が返せなかった。
 状況からしててっきり恭也の話は最近悩んでいる事に関連していると思っていたのだが。
 …ひょっとして、自分の進路や将来を案じてくれていたのだろうか?
 頬が自覚出来るくらい熱い。心配させておいて喜ぶのは間違っている気もするが膨らむ気持ちは抑えられない。

「なのはは武装局員、フェイトは執務官だったな。
 どのくらいの程度差があるかは知らないが、どちらも戦闘技能を要求されている以上、戦う事が前提だろう?」
「あれ、恭也君、もう知ってるの?」
「え、私も?」

 三日前にリンディに告げた内容を直接伝えてもいないのに悩みを抱えているようだった恭也が知っている事に驚くなのはと、恭也と出会った時には嘱託として従事していた自分まで心配の対象になっていたことに驚くフェイト、そして、恭也さんはみんなに優しいなぁ、と横でこっそり落ち込むはやて。


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