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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

324小閑者:2017/12/24(日) 17:35:51
 レティの言葉に苦笑いを浮かべながらも内心で同意するリンディ。
 尤も、レティにデータを見せたのは何も驚愕を分かち合いたかった訳でもなければ、彼女の驚く様を見たかった訳でもない。運用部に所属するレティに恭也の実力を知って貰いたかったからだ。
 魔導師ランクからすれば恭也の実力は限りなく底辺を這いつくばっていると判断されてしまう。この判断自体は魔法文明に帰属する管理世界では仕方がないものではあるし、リンディ自身もクロノとの遭遇戦が済し崩し的に始まっていなければそもそも彼の実力を確認しようとは考えなかったはずだ。
 仮に恭也が武装局員になる事を希望した場合にその判断基準は間違いなく彼にとって不利に働くだろう。門前払いこそしないだろうが、高ランク魔導師との手合わせなどと言う場自体が設けられることは無く、彼の実力は誰にも知られる事無く埋もれる事になる。そうなれば戦場に配属されようとも良くても後衛、悪ければ補給部隊などの補助的なものになる。
 それらの役割が非常に重要であることは否定しようの無い事実ではある。前衛部隊しかいない軍など大した脅威には成り得ない。だが、同時に補給部隊しかなければ軍とは呼べない。組織である以上、偏っていてはダメなのだ。

 恭也の戦闘技能は魔法に依存しない。勿論、魔法を使わなければ空を駆ける事は出来ないし、身体強化を発動していなければ超高速行動は行えないだろう。
 だが、足場自体は任意の空間に形成出来なくとも彼であれば建築物や樹木で代用してみせるだろうし、超高速行動以前に魔法が関与していない視認出来ても理解出来ない数々の体術は十分に戦力に成り得るものだ。
 尤も、魔力弾の一撃で破壊出来るような純物理的な力場の形成という正しくFランク相当の魔法で、こともあろうかSランク魔導師に文字通り殴りかかれるだけでも非常識な戦果ではある。
 そんな、たとえ限定条件下であろうと高ランク魔導師と渡り合える者を遊ばせておく余裕などないのが管理局の実情だ。
 そして、力を発揮出来る条件が限定されている人物をその条件を満たす部署に配置するのが運用部の役割であり、その運用部を纏め上げているのがレティなのだ。
 だから彼女に戦力を内密にしておくなどという選択肢は在り得ない。そして彼女であれば恭也の技能を生かす事無く腐らせてしまうという心配はない。
 望みさえしてくれたなら。

「何処からでてくるのかしらね?『自分が居ない方がはやてちゃん達は幸せなんじゃないか』、なんて考え方」
「脚色されてるわよ。
 今後の事を話していた時に、ポツリと『傍に居ない方が良いかもしれない』って言ってただけ」
「他の意味に取り様がないじゃない」
「まあ、ね」
「『世界はこんな筈じゃなかった事ばかり』って言うのはクロノ君の言葉だったかしら?」
「ええ。
 でも、恭也さんの悩みは『転送事故でここに来なければ、自分が関わったりしなければ、あの子達はもっと幸せだったんじゃないか』って言うのとはちょっと違うんじゃないかしら?
 人の数だけ夢と理想と欲望があるなら、現実になるのが一握りなのは当たり前だろう、って当然のように答えてたもの」
「…それはそうでしょうけど、犯罪者の私欲に巻き込まれて不幸を背負い込んだ人にそんな理屈は、…彼、前の世界で家族を失ってるんじゃなかった?」
「人災ではなかったみたいだけどね。
 でも、転移事故に巻き込まれたのは彼一人。他の人が一緒に助からなかったのも、彼が孤独に苛まれたのも、容易に受け入れられる事ではないはずなんだけど、ね。
 それに、恭也さんも犯罪に巻き込まれても仕方ないって言ってる訳ではないのよ。降り注ぐ火の粉を払うために身に着けたのがあの戦闘技術ですもの」
「自分の理想とは違っていても、目の前に現実として現れたら嘆いていても仕方ない。理想に近付けるように力を尽くすのみ、か。
 年齢的に初等科なのに悟りきってるわね。
 …あら、じゃあ『自分が居ない方が〜』て言うのはこれからの事?」
「そうでしょうね」

 眉間に皺を寄せるレティと、同意を示す様に苦笑を返すリンディ。
 普通に考えれば、はやてにしてもなのはやフェイトにしても、恭也が一緒に居てくれる事を喜びこそすれ嘆いたり嫌がったりする事はないだろう。
 彼の感性を持ってすると全く別の結論に至るのだとすれば、悟っているというより一般人と大きくずれているだけなのかもしれない。


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