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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

323小閑者:2017/12/24(日) 17:33:23
「…まだ悩んでるみたいね、不破恭也君は」
「そうね。
 悩む必要なんて無いと思うんだけど、彼自身は納得出来ないみたい」

 モニタールームでコーヒーを啜りながら訓練室のやり取りをモニタ越しに眺めているのは、リンディと彼女の同僚であり友人でもあるレティ・ローラン提督だった。

「負い目ばかり増えていくのよねぇ、恭也さんには」
「負い目?」
「この世界に留まるって言ってくれた事よ」
「良かったじゃない。例のロストロギア、結局どう調べても恭也君のいた世界が割り出せなくて、システムの暴走で偶然その世界と繋がったんじゃないか、なんて半端な結論だったんでしょ?
 尤も、機能の何割かがブラックボックスだって話だから何処まで本当の事かはわからいけれど。
 でも、どうしてそれが負い目になるの?」
「彼に事情を説明して謝罪しようとしたら、『元の世界に戻る件だけれど』って切り出した時点で私の言葉を遮って『この世界に居させて貰いたい』って」
「…考え過ぎじゃない?」
「彼に関しては何処まで察してるか読めないから、気軽にそう言えないのよ。
 『ロストロギア』が現代の技術では解明しきれない物が多いって事も知ってるはずだもの。
 改めて説明と謝罪をしても『ちょうど良かった』で済まされちゃうし」
「負い目は増えるし、悩みは抱え込む、結構な問題児ね。
 それで態々彼のために模擬戦まで準備した訳ね。どうにもならない事態は幾らでもあるっていうのに、なかなかに御執心じゃない?」
「子供を導くのは大人の役目。
 尤も、大暴れした程度で悩みを晴らせるほど単純な精神構造はしてないのよねぇ、恭也さんは。
 集中出来ずに直ぐにリタイアなんて事にならないといいけれど」

 レティの模擬戦に関する言葉をリンディも否定はしなかった。揶揄は兎も角、恭也のために団体戦になるようになのはやユーノの行動に裏工作したのは事実だからだ。
 クロノの指摘通り純粋な戦力評価であれば個人データを優先するべきだし、不確定要素となる恭也をヴォルケンリッター側に組み込むなど論外だ。今回の模擬戦は参考データにしか使えないだろう。
 そこまでして、八神一家の戦闘データを記録するための模擬戦を強引に団体戦に仕立て上げたのは、話に上がった通り恭也に何がしかの切欠を与えたかったからだ。
 勿論、はやて達を軽んじている訳ではない。ただ、勝訴出来る算段が立っている上にメンタル面で余裕のある彼女達よりは、不安定になっている恭也を優先するべきだと判断したのだ。

「クロノ君を口先だけでやり込める所を是非とも生で見てみたかったんだけど、この調子じゃ無理かしら?」
「趣旨が変わってるわよ?
 彼の戦闘記録が信じられないから直に見たいっていうから呼んであげたのに」
「そりゃあ疑いもするわよ。
 あれを初見で見たままを受け入れる人がいたらそっちの方が異常よ」
「順番に見なかったの?」
「言われた通り、クロノ君との遭遇戦から順番に管制人格との戦いまで見たわよ。
 確かに最初から闇の書戦を見たら絶対CGだと決め付けてたと思うけど…
 だからってあれは無いわ。
 クロノ君との戦闘やシグナム戦の前半では魔法を使ってないんでしょ?」
「まあ、ねぇ?」
「それに戦う度に新しい技を見せたってことは、前回の戦闘を経験したから強くなった、なんて都合の良い台詞も当て嵌まらない。
 ってことは、いくらシグナムが身内だったからって寿命を磨り減らすような戦いで手札を伏せたままにしてたってことでしょう?
 …まさか、戦力分析も出来ないって事は無いでしょうね?」
「それは無いと思うわ。
 馴染みが無い筈の魔法戦闘まで評価してたもの。馴染みが無い分、先入観や魔法理論も無いから、起きてる現象そのままの物凄く的確で辛辣な評価だったわ。
 それにクロノが相手の時には単に魔法が使えなかっただけだし、シグナムさんの時にはメッセージを伝えたかったらしいわよ?」
「メッセージ?何て?」
「…はやてさんの味方だよって事と、蒐集活動を続けるとはやてさんに害があるかもって」
「…それだけ?」
「……それだけ」
「…まぁ、大事なことなんでしょうけど、…命懸けで?」
「…………命懸けで」
「…価値観の違いかしら。
 ちょっと正気の沙汰とは思えないんだけど」


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