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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

322小閑者:2017/12/24(日) 17:32:20
 だが、暫くはそっとしておいてあげよう、と率先して周囲に訴えていた3人娘こそがその一週間後に誰より先に音を上げた。恭也に構って貰えない事に想像以上に寂しさを募らせてしまったのだ。
 そのため『悩み続けるのは良くない。たまには気分転換が必要な筈だ』という勝手且つ一方的な見解を導き出し、恭也を漫談に巻き込もうと画策するようになってしまった。
 先ほどのなのは達の掛け合いの様な遣り取りがまさしくそれで、恭也が参加する事を期待した呼び水のつもりなのだ。手段があまりにもアレな上に、あの内の何割が演技なのかが周囲の者には非常に気になっているところではあるのだが。その上、日に何度か行っている同様の試みも今のところ成功したという話は聞こえてこないので、少女達に対する印象が残念な方向に傾いただけという結果に終わっていた。なんとも報われない話である。
 すっかり恭也に毒された少女達を見て、彼女達の将来を案じているヴォルケンズも、自覚の無いまま落ち着きが無かったり気が短くなっていたりと人の事は全く言えていなかった。
 だが、笑い話に出来たのはここまでで、アースラスタッフは恭也のアクの強さ、その中毒性と依存性の高さを実感して背筋を震わせることになった。一方的にからかわれていたはずのクロノやユーノまで日に日に口数が減っていったのだ。
 勿論、クロノ達の変化がその原因を恭也の何かに感染したからと決め付けるには根拠になるものは何も無い。だからといってこれだけ勢力が拡大していく様を見せ付けられれば楽観視する気にはなれなかった。
 初期症状で収まれば良いが、万が一にでも執務官であるクロノの症状が進行して少女達の様に情緒不安定になられては堪らないし、これで更にリンディとエイミィにまで蔓延してはアースラの運行すらままならなくなってしまいかねない。そして、恐ろしい事にその懸念が実現しかねない要素、恭也とリンディ達との日常における接点が存在するのだ。

「家でもずっとあの調子なの?」
「僕もそれほどマンションに居られる訳じゃないんだが、フェイトやアルフに聞く限りではね」
「…そんなんでいいの?大義名分は『保護観察』でしょ?」
「恭也はシグナム達の行為に加担してなかったから、ロストロギアの無作為転移に巻き込まれたただの被害者、それどころか書類上では事件解決の最大功労者だ。
 名目上でも保護であって観察じゃないんだ」

 そう。
 自首と言う形を取っているとは言え立場と書類上の都合と状況から裁判を控えた観察処分扱いの八神家に帰すことは出来ず、精神的に極大な負担が掛かる恐れのある高町家に放り込む事も出来ないとなれば、恭也の居られる場所はハラオウン邸しか残されていない。
 そんな訳で、家主であるリンディとクロノ、家族付き合いをしているエイミィに養子縁組みを進めているフェイトと彼女の使い魔であるアルフ、そして恭也を加えた6人が現在のハラオウン邸の住人である。

「あたしとフェイトが知る限り家の中でもあの通りだよ。
 でも、昨日あたしが後ろから空き缶を投げつけたら振り向きもしないで受け止めてたからボーっとしてるって訳じゃないのかもね」
「…まぁ、恭也だしね。
 警戒は怠ってないって事かな?」
「どうかな?僕はあいつが、それくらいのこと条件反射でやってのけたと言っても疑う気にはなれないぞ」
「それは確かに。
 あ、でも君がフェイトの着替えに乱入するのを止めたって事は、まるっきり上の空って訳でもないんだろうね」
「あれも配慮があったとは言えたもんじゃないから怪しいところだと思うが…」
「あれ?君の事だから悪態吐いてても感謝はしてるかと思ってたんだけど?」
「…まぁ、結果的に惨事を止めてくれた事に変わりはないから、感謝していなくも無いんだが…」
「はっきりしない言い回しだね。事故に託けて覗きたかったの?」
「違う!
 …あいつ、音も無く背後に立って、無言で首筋に刀を突きつけたんだぞ?
 刃の無い峰だったから着替えに踏み込みそうになったのが故意じゃないと分かってたんだろうと思うけど、頚動脈に触れる金属の冷たい感触なんて2度と味わいたくないぞ」
「うわぁ…、容赦ないなぁ」

 情景が容易に想像出来たのか、呟くユーノはやや蒼褪めている。以前になのはと一緒に入浴している事を知られた時に一悶着あったため他人事とは思えなかったのだろう。


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