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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
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:
小閑者
:2017/12/03(日) 13:13:59
恭也のゆっくりと吐き出した息が震えている事に気付いたが、はやてはグッと下唇を噛んで耐えた。両手に添てくれているなのはとフェイトの手が震えている事に気付いて、指を絡めて握り返す。
止めてはいけない。そんな事をしても何の解決にもならない。
「…その場に居たのは俺だけで、彼女を守るには俺の力では足りなかった。
結果、フィアッセは心を壊して、自室から出られなくなった。
…あの、綺麗な心を宿した歌声は、二度と響く事はなくなったんだ」
「…だから、恭也さんは体を鍛えたの?」
「…そうだ」
「…次に同じ境遇の人に会った時に助けられる様に?」
「…ああ。
他の誰かを助けたところで、フィアッセに起きた事が無かった事になる訳じゃないし、フィアッセの心が戻って来る訳でもない。…そんなことは、分かってる。
だけど、俺が同じ事を繰り返したら、フィアッセがあまりにも報われない。
…フィアッセが誰かを助けるための犠牲だったなんて考えたくないのに、ただ無意味に傷付いただけとも思いたくなかった」
恭也が右手を離しながらドアに頭をつけるようにして俯けていた顔を上げる。天井を仰ぐ様に上げた顔は、涙どころか表情も無い虚ろなものだった。
店内では、他の人が居るところでは辛うじて保っていた無表情すら抜け落ちた空虚な顔。それは『精神状態を隠す』事を身に染込ませている恭也が、ここに居るのがはやて達3人だったからこそ見せた気の緩みなのだろう。
「…なのに、リインフォースも、助ける事が出来なかった」
「それはっ!…」
はやては口を衝いて出ようとした言葉を咄嗟に飲み込んだ。
『恭也さんの所為やない!』
そう言う事は簡単だった。だが、恭也はその言葉を受け入れないだろう。いや、受け入れられないだろう。
恭也のトラウマはフィアッセが精神を患った時、つまりずっと以前に負ったものだ。その傷を今より幼い、精神の未熟な時期に周囲から隠し通せるはずがない。
恭也の家族には父親と妹にしか会っていないが、あの人達が共に生活する人がまったく正反対の人格とは考え難い。恭也の家族が彼の心の傷を放置したままにしていることはないだろう。きっと、あらゆる手を尽くして、それでも癒しきれなかったに違いないのだ。
ならば、今更頭ごなしに言葉を投げかけたとしても効果など無いだろう。
冷静に。
慎重に。
感情に流されずに。
会話を続けて、苦しむ恭也さんを救う手立てを見つける。
出来るかどうかなんて考えるな。
何としてでも遣り遂げなあかんねん!
<はやてちゃん、落ち着いて>
<まずは話を聞こう。恭也の抱えてる苦しみが何か確かめないと>
<っ!
うん、そうやね。それにしても、恭也さんの目の前で密談出来るなんて、念話ってちょっと反則ぎみな能力やね?>
<あは、そうだね>
<うん。でも表情に出したら気付かれちゃうから気を付けてね>
冗談交じりの雑談を交わす事で、無理矢理にでも意気込んで入り過ぎていた肩の力を抜く。
そうだ、自分には味方が、いや、恭也を救いたいと心底から思っている女の子が自分の他に2人もいるんだ。
はやては心の中で『落ち着け』と繰り返し念じながら、静かな声で切り出した。
「恭也さんは、フィアッセさんが傷付いた事やリインフォースが消えてしまった事を、自分の所為やと思ってはるの?」
「…誰の所為かなんて、知らない。
ただ、俺にはその場に居たのに助ける術がなかった。
それが赦せないだけだ」
「リインフォースの時には、恭也よりも魔法に詳しい人がたくさんいたんだよ?
その人達にもどうすることも出来なかった。
魔法初心者の恭也を責める人なんて何処にも居ないよ?」
「他の誰に、何が出来たかなんて、知らない。
誰に責められても、誰に赦されても、関係ない。
俺が、何の力もない俺自身を赦せない。だから、嫌悪してるし、憎悪もしてる」
「…どうすれば、自分の事赦してあげられる?」
「赦す余地なんて、何処にある?」
恭也の言葉に引き込まれそうになるのを繋いだ手に力を篭めて互いを意識する事で踏み止まる。
挫けるな。目を逸らすな。絶望している暇なんて無いんだ。
「…私も、ね?母さんを怒らせる自分の事が嫌いだったんだ。母さんを助けられなかった自分を憎いと、今でも思ってるんだ」
自身の傷を見せようとするフェイトの言葉に、なのはが視線を寄せる。
その気遣いに感謝しながら、小さく微笑む事で応えた。
自分は大丈夫だ。
なのはに、生きていく勇気を分けて貰えたから。
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