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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

302小閑者:2017/12/03(日) 12:50:32
「もう、あかんよ恭也さん!
 いっくらなんでも初対面の人に『嬉しそうな仏頂面』とか『楽しそうな仏頂面』なんて見分けられへんのやから。
 ここは愛想笑いの一つも浮かべとかんと」
「…あまり難しい事を要求しないでくれ。ただでさえ噂に聞いていた同じ顔に突然出迎えられて困惑してるんだ」
「困惑?してるの?」
「アリサも暫く付き合ってると見分けがつくようになると思うよ?」
「目元でいろんな感情を表現してるから、分かるようになるとちょっと得した気分になれるんだ」
「テスタロッサ、高町。バニングスに妙なことを吹き込むな。分からんならそれで良いんだから。
 …何故睨む?怒る権利なら俺の方に…あの、マジモンで視線が怖いのですが、私が何かしましたか?」

 妹とその友人の視線の余波を受けただけで恭也の防衛本能が警鐘を鳴らしている。
 彼女達の威圧感が軽く子供を泣かせるレベルを超えているのはどういう訳だろう?末妹はのんびり穏やかに、フェイトちゃんはビデオレターで見た通り内気で恥ずかしがり屋だったはずなのだが。
 彼、八神君には悪いが助け舟を出すことは出来そうにない。というより、状況的に彼が元凶なのでは?うん、きっとそうだ。
 恭也の思考が逃げ腰ながらも正解に辿り着き、クリスマスパーティの平穏のためにも安らかに眠ってくれ、と心の中で冥福を祈っていると、なのは達と同席しているはやてが苦笑を浮かべた。

「しゃあないなぁ。
 恭也さん、名前、名前」
「名前…?
 …え〜、
 …その、
 …ああっと、え!?名前!?それだけなのか!?
 …あのな、フェイト、なのは。
 慣れた呼び名を変えるんだ。もう少し猶予があっても良いんじゃないのか?」
「そりゃ、仕方ないかもしれないけど…大事な事なんだよ?」
「それにヒントを貰ってもすぐに分からない恭也君にもちょっと問題があると思います」
「恭也にとっては大事じゃないの?」
「呼び方なんて、とても大事な事だな、うん」
「弱ッ!?」
「アリサちゃん、それは可哀想だよ」
「せやねぇ、あの視線に晒されたら大概の人は降参するやろ」

 あれだけの視線さえ話題にして談笑を始める妹と友人達。
 いつの間にか兄の知らない顔を持つようになった妹にちょっぴり寂寥感を感じながらも、平静を装いつつ八神君をなのは達のテーブルへ案内する。といっても内輪のパーティの上、立食形式なので案内も形だけなのだが。

「ごゆっくり」
「ありがとうございました」

 抑揚の少ない謝辞と、恭也には平坦にしか見えない眼差し。妹を疑いたくは無いが、あの3人には本当にこの視線から感情が読みとれるのだろうか?

「恭也ー」
「ああ、今行く」

 恭也がカウンターへ移動した恋人の呼び掛けに応じて歩み寄ると、忍と一緒に居た士郎が口を挟んできた。

「どうだった?八神君の第一印象は」
「…驚いた、かな?」
「うわ、シンプル過ぎ。他にもっと無いの?
 なのはちゃんを奪う憎い男に対して、こう『俺の妹はお前などにやらん!』とか。
 あるいは、『顔が似てるのを良い事に美人でスタイル抜群の俺のスイートハニーに近付こうったってそうはいかんぞ!』とか」
「忍、お前は俺をどういう目で見ている?」
「こんな目」
「あとでゆっくり話し合おうか」

 恭也は苦笑を収めると士郎に向き直る事無く、周囲に聞こえないように配慮しながらも何気ない調子で言葉を続けた。

「なのはと歳が変わらないという言葉を信じたくないほど熟練しているな。
 間違いなく剣術。
 間合いからして、小太刀。
 恐らくは、…二刀流」
「それって…」

 思わず口を挟んだ忍を目で制す。
 気持ちは分かるがまずは主観や推論ではなく、現状を確認するための客観的な情報を揃えなくてはならないからだ。


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