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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載
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:
小閑者
:2017/12/03(日) 12:21:10
「どうかしたの?」
「いえ、暫く放置していたせいか故障したようです。
水はかかっていないと思うんですが、気温が原因でしょうか…電源が入りません」
「う〜ん、私もあんまり機械の事は分からないんだけど、ひょっとして電池切れなんじゃないかしら?どのくらい置いておいたの?」
「2週間ほどです。
鉛電池は低温状態だと放電し易いと聞いたことはあったが、これも同じなのか?
…何れにせよこの場ではどうにもならないな。
お待たせしてすみません。行きましょう」
恭也に促された桃子は歩きながら恭也の様子を窺った。
以前翠屋で会った時にはもう少し雰囲気が柔らかかった様に記憶していたのだが、今の彼はほぼ無表情であるため感情の変化が視線からしか読み取れない。
洞察力に自信があり、表情の変化の少ない息子と長く接してきた桃子でもそれで精一杯という事は、大抵の人には読み取れないはずだ。
こんな調子で学校生活は大丈夫なのだろうか?
いやいや、先日は翠屋で女の子に囲まれていたのだから普段はもう少し表情も豊かなのかもしれない。なのは達をからかうくらいのユーモアも持っていると言うし。
『友達の母親』との対面に礼儀正しく接している、という事だろうか?
「どうかしましたか?」
「…え?
あ、ご免なさい、じっと見ちゃって」
「いえ、ご子息と似ているそうですからね。珍しいのは分かりますよ」
「そう言う訳じゃないんだけど、…その、寒くないの?」
咄嗟に誤魔化そうとした桃子は、先程思った疑問を引っ張り出した。
だが、口に出してみると改めて疑問に思う。同じ空間に居るはずなのに自分と八神君で服装が違い過ぎる。
「鍛えてますから」
「その一言で済ますには無理があるくらい寒いと思うんだけど…」
「『心頭滅却すれば』と言うでしょう」
「あれは暑さを忘れるためのお呪いでしょ?」
「は?マジナイ?
…あの、『心頭滅却すれば火もまた涼し』というのは別に神頼みや超常現象ではありませんし、字面のまま炎を涼しく感じるものでもないんですが」
「あはは、冗談よ。
集中すると暑さとか寒さなんかが気にならなくなるってことでしょ?」
「そう解釈している人が多いですが、本来は集中力とかいった精神論とも違うらしいです。
元は中国の故事です。
原文は忘れましたが、要は、無念無想の境地に入れば、猛暑の中でも涼味を感じられるという内容だったようです。
戦国時代のどこかの坊さんが焼き討ちにあって焼死する寸前にこの言葉を残した事で、暑さ寒さではなく、“苦難”そのものを対象にした言葉とされるようになったようですが。
何れにせよ宗教観を含んだものでしょうね」
「そうなんだぁ、知らなかったわ。
あ、じゃあ八神君もその宗教を信仰してるの?」
「いいえ、まったく」
「…あのね」
からかわれたのかと苦笑しながら桃子が顔を向けるが、特に表情を動かす事の無い彼の様子に戸惑ってしまう。真面目な表情のまま嘘を吐いてからかう息子とも違う様に見える。
「思い付くままに言葉を並べたので誤解させてしまいましたか。
済みません」
「あ、大丈夫よ。別にこれくらいで怒ったりしないから気にしないで」
「そうですか。
それから、本当に寒くは無いので気にしないで下さい」
「そう?」
言葉が途切れた。
会話を嫌っているという印象はないが、表情に変化が無いため言葉を続ける事に躊躇してしまう。わざわざ心配して送ってくれている彼に、気に障るような話を振るのは流石に気が引ける。
だが、折角の機会なのだ。娘の友人の事を知るためにも出来るだけ会話をしておきたい。
意を決した桃子は少々踏み込んだ内容を振る事にした。
「…あの、話は変わるんだけど、前にお店に来てくれた時も思ったんだけど、こうして話してると八神君凄く大人びてるわね」
「そうですか?」
「うん、少なくとも私はそう思うわ。
お店の時はもう少し、その、子供っぽさが残ってる様に感じたんだけど、今は下手したらそこらの社会人よりよっぽどしっかりしてそうだわ。
あの時は少しはなのは達に合わせてたのかしら?」
「…そんなことはありませんよ。
ここのところ自分がどうしようもなく子供なんだと思い知らされてばかりいるんですから」
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