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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

285小閑者:2017/11/19(日) 12:57:00
 フェイトが早歩きで自販機コーナーに向かう姿を見送ると、なのはは手を引いて恭也をソファーへと誘導する。窓側のソファーは前庭が見られるように窓に向けて、通路側の物は受付が見えるように逆向きに設置されていたので窓側を選ぶことにした。
 恭也が素直にソファーに座ると、ピッタリと寄り添うようになのはもその右隣に腰掛ける。その距離に恭也が何かを言いかけるが、なのはは機先を制するように恭也の体に抱きついた。

「な!?」
「うわぁ、恭也君ほんとに冷たいよ」
「…ひょっとして、暖めようとしているのか?」
「え?
 うん、冷えた体を暖める時はこうするんでしょ?」
「誰に聞いた?」
「アリサちゃんが持ってるマンガに載ってたんだ。確か、すずかちゃんの持ってるのにも載ってたと思う」
「あいつら…。
 せめて分別のつく相手を選んで渡せよ」

 恭也はそう言いつつ溜め息を吐くと、なのはが顔を赤らめている事に気付かないまま軽く嗜めた。

「年齢的にはまだ大丈夫なのかもしれないが、曲がりなりにも男を相手に気安くこういった真似をするのは感心しない。
 国や風習によっては“はしたない行為”と受け取られかねないからな」
「そ、それは分かってるけど今は緊急事態だもん!」
「大袈裟な…
 俺の方が恥ずかしいから勘弁してくれ」
「じゃ、じゃあせめて腕だけでも」
「む、…その辺りが妥協点か」

 あっさりと同意されたことにフェイトと同じ様に複雑な想いを抱きながらも、なのはは言及する事無く恭也の腕を抱きかかえる。
 座った体勢のお陰で体格差が埋められたとは言え、それでもなのはの目の高さは漸く恭也の肩辺りだ。客観的に見て『しがみつく』と言ったところだろうか?もっとも、それ以前になのはの幼い容姿では色気より微笑ましさの方が前面に出ているのだが。

「うわぁ、恭也君の腕、凄く太いね」
「剣を振っていればこの程度にはなる。兄や父の方が太いだろう?」
「そうなのかな?
 意識したことなかったし、最近はあんまり触る機会なんてなかったから良く分かんないよ」
「そうか」

 そこで2人の会話が途切れた。
 恭也は元々積極的に発言する方ではないので、なのはが話しかけなければ沈黙が訪れるのはいつもの事だ。普段であれば、恭也は勿論なのはも無理に言葉を紡ぐ事はせず、その空気を楽しむ事が出来る。
 だが、今のなのはが話しかけないのは緊張によるものだ。その原因は沈黙に対してではなく、これから恭也に話す内容についてだ。
 今の恭也がかなり不安定であることは先程はやての病室で露見している。この話題は負担を増やす事にしかならないかもしれない。
 それでも、先延ばしにする事は出来ないし、何より万が一にも恭也が誤解している様な事があれば、そのまま決心を固めてしまうかもしれない。それだけは避けたかった。

「恭也君。
 もう、決めた?」
「何を?」
「その、…元の世界に戻るか、この世界に残るか」
「…元々、この世界に来たこと自体が管理局側の携わった事件が原因だったんだ。
 体面上の問題もあるから戻る手段さえ見つかれば強制的に帰されるだろう」
「え…?
 あ、まだ聞いてないの?恭也君が居たいならこの世界に残る事も出来るんだよ?」
「…初耳だ」

 危なかった。思っていたより遥かに手前の段階だったとは。

「望むなら…か」
「うん。
 誰も強制はしないと思う。
 だから、先に言っておこうと思って。
 恭也君がこの世界を選んでくれたらはやてちゃん達も喜ぶとは思うけど、私も恭也君と一緒に居られると嬉しいよ。
 多分、フェイトちゃんも」
「…え?」
「あ、あれ?
 どうしてそんなにびっくりしてるの!?」
「いや、意外だったから」
「ええ!?
 なんで!?私もフェイトちゃんも恭也君と一緒に居ると楽しいし、嬉しいよ!?」
「いや、そっちじゃない。
 俺が選択するまで何も言わずに、帰ると言い出してもそのまま黙って見送ると思ったが。
 高町も俺がそう考えるだろうと思っていたからわざわざ言ったんじゃないのか?」
「まぁ、予想通りではあったんだけど…」
「予想ね。
 兄と反応が同じか?」
「え?お兄ちゃん?
 えっと…、そうだね。お兄ちゃんも大事な事を黙って決めちゃう辺りは恭也君と似てるかな?
 ?どうかしたの、恭也君?」
「なんでもない」


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